アストンマーティン ヴァンテージ F1エディションをストリートで味わう

F1の名を冠した最強のヴァンテージ! アストンマーティンが放つ“冷静なる野獣”を測る

アストンマーティン ヴァンテージ F1エディションの走行シーン
アストンマーティン ヴァンテージ F1エディションの走行シーン。
アストンマーティンのF1復帰を記念したスペシャルモデルがF1エディションだ。エアロパーツにより空力を向上させつつ、最高出力を25ps引き上げた。史上最強となる、ヴァンテージのスペシャルモデルのポテンシャルは如何に。

Aston Martin Vantage F1 Edition

F1のセーフティカーが起源のホットモデル

アストンマーティン ヴァンテージ F1エディションのフロントスタイル
半世紀以上の時を経てF1に復帰したアストンマーティンは、オフィシャル・セーフティカーにヴァンテージを提供。このセーフティカーのレプリカ的な立ち位置にあるヴァンテージ F1エディションをリリースした。

今年のF1グランプリの話題のひとつに、イギリスの古豪アストンマーティンの60年以上の歳月を隔てたF1復帰がある。

しかもF1マシンのボディカラーは伝統のアストン・レーシンググリーンが基調となっているのである。この参戦を記念したトピックがある。ヴァンテージがF1のオフィシャル・セーフティカーという大役を務めることになったのだ。

アクシデントを処理する間サーキット上でF1マシンの隊列をコントロールすることが仕事のペースカー。だが実際にその仕事ぶりをよく見てみると驚かされることがある。タイヤを温めるために蛇行するF1マシンたちを従えたヴァンテージは、滑りそうになるリヤタイヤを抑え込むような限界ギリギリの走りでサーキットを駆けまわっているのだ。

ルーフの上に黄色い回転灯を載せたペースカーのステアリングを握っているのは、DTM等のレースで活躍したベルント・マイランダーなので、速くて当たり前。とはいえ、それにしっかりと応えるヴァンテージの走りもまた見事なのである。

専用の大型スポイラーほかエアロダイナミクス性能を強化

アストンマーティン ヴァンテージ F1エディションのリヤスポイラー
専用の大型リヤスポイラーや21インチホイールがノーマルのヴァンテージとは一線を画すスポーティな雰囲気を醸し出している。

今回テストドライブするヴァンテージは、セーフティカーのレプリカともいうべき1台。ヴァンテージ F1エディションである。そんな成り立ちを聞くと、見た目をそれ風にしただけのモデルを思い浮かべてしまうのだが、どうやら違うらしい。

ヴァンテージ F1エディションは限定車ではないし、プロジェクトの狙いはオンロード性能を損なうことなく、ラップタイムを大幅に短縮することにあるという。車名は派手な限定車のようだが、実際にはヴァンテージのラインナップ中の最速モデルに位置するのである。

最も目立つのは車体の全周に追加されたスポイラーと、オプション設定されている水平グリルの存在だ。アゴの高さは少し低めになるが、元々ヴァンテージは前後のオーバーハングが短いので、普段使いでも問題なさそう。運転席からバックミラーを見ても、リヤの視界はしっかりと確保されていた。

ベースモデルから25ps引き上げられたV8ツインターボを搭載

アストンマーティン ヴァンテージ F1エディションのエンジン
最強のヴァンテージを実現するために、最高出力を25ps高めた4.0リッターV8ツインターボエンジンを搭載する。

よく見るとフロントフェンダーの後ろ、エアアウトレットの後ろ端部分とセンターコンソールにF1エディションのバッジが据えられている。また、サイドシルプレートにもF1エディションのロゴがすっきりと入れられている。控えめだが、ちゃんと主張しているのだ。細かな部分にもアストンらしいアプローチが見て取れる。

パワーユニットが4.0リッターV8ツインターボ+トランスアクスルの8速ATであることは標準のヴァンテージと同様だが、F1エディションの最高出力は510psから535psまで引き上げられている。

山頂に向かって紅葉のグラデーションが見事な箱根ターンパイクに走り出してみた。「あ、いいな」と思ったのはパワーよりもアシの方だった。そんなに硬くなっている感じがしないのに、レスポンスがいい。

ヴァンテージの最速モデルは「究極のFR」と呼ぶに相応しい

アストンマーティン ヴァンテージ F1エディションのインテリア
アルカンターラをインテリアの随所に施し、スポーティかつエレガントな空間を演出。「F1エディション」というスパルタンなネーミングながら思いのほか走行時の快適性が高いのはアストンらしい。

例えばターンパイク頂上のT字路を右折するとはじまる左右の切り返しが連続するワインディングのコーナーの脱出で、フロントタイヤの横Gの収束が早いのだ。以前のアストンなら少し前輪の横荷重が残った状態でスロットルを開け、強力なLSDの蹴りを頼りにオンザレールの軌道に戻していく感じだった。

デビューしたてのヴァンテージでも、ここまで素早くアクションが収束しなかったはず。まるで車体が100kgくらい軽くなったような、もしくはより重量物を車体中央に寄せたような感じだ。

ヴァンテージは先代からギヤボックスをリヤデフと合体させたトランスアクスルを用いて「究極のFR」を名乗れるスペックを持っていた。今回のF1エディションは、生まれ持ったフィジカルを最大限に活かして練り上げられた結果だと思う。

習熟に時間がかからず手足のように操れるスポーツカー

アストンマーティン ヴァンテージ F1エディションのシート
F1エディションには洗練されたストライプとステッチのアクセントカラーが4色(ライムグリーン/オブシディアンブラック/ウルフグレイ/スパイシーレッド)から選択できる。

アシの反応がすこぶるいいので、535psという怪力を特に意識することなく、ちゃんとリミットまで引っ張ることができる。ステアリングパドルで操るシフトも素早いので、恐らく誰にとっても習熟に時間のかからない、すぐに手足のように操れるスポーツカーとして完成している。

走りのバランスがいいと、サーキットに持っていってベルント・マイランダーの走りを真似るのも難しくないと思う。というかたぶん、実際のF1のペースカーとヴァンテージ F1エディションの中身はほぼほぼ同じなのでは? と思えてくるほどだ。もちろんホンモノは、ルーフの上に重たそうな回転灯を載せているので重心がまるで違うし、昨今のアストンのファクトリーにはGT4やGT8Rのようなスペシャルマシンのパーツも転がっているだろうから一概には言えないが・・・。

標準とGT4の中間、どちらかといえば標準寄りに研ぎ澄まされた1台

アストンマーティン ヴァンテージ F1エディションのリヤスタイル
最高速度306km/h、0-100km/h加速3.6秒のハイスペックを誇り、ワインディングでも格段の走行フィールを披露。筆者は「まるで車体が100kgくらい軽くなったような、もしくはより重量物を車体中央に寄せたような感じだ」と評した。

ヴァンテージ F1エディションのボディカラーはグロス(艶あり)とサテン(艶消し)が選べ、車体中央にグレーのレーシンググラフィックが入れられる。さらに存在感のあるスポイラーが付いているので、インパクトは十分なのだが、見た目に少しもひけを取らないポテンシャルの持ち主なので、オーナーが臆する必要はないと言い切れる。

今回はワインディングにおける走りの部分にフォーカスを当てたが、最後に乗り心地の部分まできっちりとカバーされていることを強調しておきたい。

ヴァンテージのプロダクションモデルの最速仕様は、インテリアが簡素だったり、排気音がひと際けたたましいわけでもない。標準モデルとGT4の間にいることは確かだが、どちらかといえば標準寄りの研ぎ澄まされた1台なのである。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/田村 翔(Sho TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2021年 12月号

【SPECIFICATIONS】
アストンマーティン ヴァンテージ F1エディション
ボディサイズ:全長4490 全幅1942 全高1274mm
ホイールベース:2704mm
車両重量:1530kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:393kW(535ps)/6000rpm
最大トルク:685Nm(69.8kgm)/2000-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前225/35ZR21 後295/30ZR21
最高速度:306km/h
0-100km/h加速:3.6秒
車両本体価格(税込):2346万円

【問い合わせ】
アストンマーティン・ジャパン・リミテッド
TEL 03-5797-7281

【関連リンク】
・アストンマーティン 公式サイト
https://www.astonmartin.com/ja

著者プロフィール

吉田拓生 近影

吉田拓生

1972年生まれ。『カー・マガジン』編集部に12年在籍し、2005年からモータリングライターとしての活動をスタ…