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ロータスカップは全4戦に縮小。そのうち第3戦と最終戦に出場予定

去る9月5日(日)に栃木県のツインリンクもてぎにて、JAF(日本自動車連盟)公認レース「LOTUS CUP JAPAN(ロータス カップ ジャパン)」の2021年シーズン第3戦が開催された。僕もエキシージS V6でクラス1に参戦してきた。
今季のロータス カップ ジャパンは、開幕戦が5月9日(日)に静岡県の富士スピードウェイで開催され、第2戦が7月25日(日)に宮城県のスポーツランドSUGO、第3戦が今回のツインリンクもてぎ、第4戦が11月28日(日)に再びツインリンクもてぎ、というスケジュールとなる。また、10月31日(日)には「JAPAN LOTUS DAY in 富士スピードウェイ」内のエキシビションレースとして、特別戦も開催される予定だったが、これは中止となった。ということで、2021年シーズンは11月28日の最終戦と合わせてこの2戦に出場することにした。
ロータスカップの魅力とは

ワンメイクレースは種々あるが、ロータス カップ ジャパンはその中間位に位置しているといえるだろう。そこそこエンジンのパワーがあって速いクルマで楽しめるワンメイクレースとして、ロータス カップ ジャパンはオススメのカテゴリーだと思う。
もっと速度域の高いカテゴリーにはポルシェやフェラーリのワンメイクレースもあるが、年間数千万円規模の莫大なコストがかかる。逆に速度域が低いカテゴリーはロードスターや86/BRZのワンメイクレースもあるが、86/BRZは過熱していて上位を走るつもりならロータス カップ ジャパンよりコスト高となるようだ。
ロータス エキシージは、350psとそこそこパワーもあるミッドシップ・スポーツで、運転していて楽しいクルマだ。でも公道でアクセルを全開にするには速すぎるかな。安全に楽しむなら、やっぱりサーキットしかない。
そんな考えに行きついて、昨年、ロータス カップに出てみようかなと思い、旧知のガレージシマヤのおやっさんに連絡したら「今は息子が社長だから相談してみ」と言われ、島影社長と会って「LOTUS 千葉」チームからロータス カップ ジャパンに出させてもらうこととなった。
昨年と今年の心境の変化

プロレーサーとして現役だったのは20年以上も前、今や僕は還暦を過ぎ、手足に多少の障害もある。でもこの先、スポーツカーでサーキットを走るという行為を堪能し続けたいと考えている。でもひとりでサ-キットを走っても比較するクルマのタイムや人がいないとだんだん楽しくなくなってしまうんだよね。そこで昨年、一緒に走る相手を見つけようと、レースに出てみようと考えたのだった。決して「レースをガンガンやって勝つぞ!」ということではなかった。
しかし、自分と周囲の想いにギャップがあることを、出てみて知ったのだった。
自分の中ではジェントルマンレーサーとしてレースを楽しもうと思っていたのだけど、周囲からは「元プロレーサーが参戦してきたぞ」といった目で見られたようだ。実際にチームのメンバーは他のディーラー関係者から「(太田選手を起用して)そこまでして勝ちたいの?」とプレッシャーをかけられたらしい。
ロータス カップのエントラントの多くはディーラーチームなので、当然ライバル心も生まれるはずだ。それを自分が出場することで煽るようなことがあってはいけない。昨年、そう感じた。
ワンメイクレースのレベルは高いぞ

特定のクルマに長く乗っている人には独自のノウハウやドライビングスキルが備わっている。ベテラン選手たちはもはやアマチュアドライバーのレベルではない。だからどのカテゴリーもそうだけど、現役のプロがポッと乗ってもなかなか勝てないものだ。ロータス カップも同様で、何年も、レース当日以外にも頻繁に練習に通って、ときにはプロにコーチングを頼んだり、同じチーム同士で走行データを共有してドライビング技術を比較して磨いてきた人たちの集まりだ。
だからこそ、そういうロータスを知り抜いた人たちと一緒に走ることで、僕自身ロータスの走らせ方や魅力がすぐにわかるし、ロータスの神髄にも触れられるはずと思ったのだ。
参加者と友達になることが重要

昨年走ってみて、練習走行で他の選手が僕と一緒に走ることを避けているように感じた。後ろにつくと、ピットに入ってしまう。章典外のドライバーでもあるTipo佐藤編集長(仕事してるよりもサーキットを走っている方が多いというツワモノ)に相談してみたところ、「そりゃそうですよ。みんな時間とお金を掛けて得たノウハウを簡単に見せたくないのは人情です」と。
言われてみればそりゃそうだが、それではエンジョイできない。「敵」ではなく一緒に走る「仲間」だと認識してもらうことが必要だと思った。
それで今年は昨年にも増して、他の選手と話してフレンドリーな関係性を築こうと考えている。そもそもが年齢のせいか物忘れが激しく、なかなか人の名前も出てこない弱点がある。そうしたときはそのままにせず、失礼だとは思うけれど「お名前は何でしたっけ?」と聞くようにしている。
常にライバル心を燃やしていた現役時代と、真逆だね

昨年はエンジンが不調だった。それで今シーズンに向けて、島影社長の英断でエンジンを新品に交換することにした。それにともないクルマの修復をしたり、トランスミッションなどのオーバーホールをしたり、外装をリフレッシュさせたりした。予想外にパーツ納入の遅れもあって時間がかかってしまい、シーズン前半からの参戦が困難となった。結局、9月になった今回の第3戦が、僕のシーズン初戦となった。
レースだからシリーズポイントがあるが、2回も出ていないので、チャンピオンやシリーズ上位入賞は難しい。島影社長からは、「今年は(も?)練習のつもりで出ましょう」と言われた。自分自身「そうだ、もう気楽にやろう」と思えた。
昨年までは楽しむのだと思いつつ、心のどこかに「速く走りたい。いいところを周囲にも自分にも見せたい」という思いがあったのだと思う。しかし今年は練習だ。エンジョイしよう。そう開き直って、かえって心が安定した気がする。
昨年とは違うレースへの取り組み

昨年、こんなことがあった。金曜日、土曜日、日曜日の3日間を使って宮城県のスポーツランドSUGOまで行ったのに、決勝レースが悪天候で中止になってしまった。遠方で前泊までを入れたら4日間も会社に行かなかったわけだ。さすがに徒労感があったね。今の僕にとってレースはもはや仕事ではない。あくまでもアマチュアであり、仕事をいちばん大切にしなくてはならないと考えている。だから会社を休むことに強いストレスを感じた。
そのため今年は取り組み方を変えることにした。今回のもてぎ戦も、金曜日、土曜日が練習日、日曜日が予選決勝の3デイ開催だったが、「LOTUS 千葉」が忙しく島影社長からの依頼もあって、金曜日は走行に行かなかった。練習は土曜日一回のみ(20分)の走行で、雨でしかもワイパー不調などもあり、あまり走れなかった。昨年だったら、僕の中にあせりやいらだちが生じたかもしれない。しかし今年は気楽な気分だった。エンジョイすることが目的だ。そこに主眼を置いたからこそ、精神の安定が保てた。そう思えたことがいちばんうれしかったんだ。
モータースポーツを始める人へのアドバイス。心の持ち方を決めよう

エンジョイすることが大切。この考え方は、これからモータースポーツを始めようという人にオススメの言葉だ。どういうスタンスでレースをやるか、ということなんだけど、勝たなくちゃいけないと思うとツラくなるよね。他の選手は百戦錬磨のツワモノだ。そういう人と比較するのではなく、前回の自分と比較して、うまくなったか進歩しているかを気にしたい。自分の目的は少しずつでも成長を遂げることだと思えば、すべてのことが楽しくなるはずなんだ。
次回、ロータス カップ ジャパン第3戦のレース本番レポートへ続く。
TEXT/太田哲也(Tetsuya Ota)
PHOTO/エルシーアイ
COOPERATION:エルシーアイ、ガレージシマヤ、ヨコハマタイヤ、アライヘルメット
【関連リンク】
・太田哲也 オフィシャルサイト「太田哲也の Go Go スポーツカー」
https://otacarlabo.jp/
・エルシーアイ 公式サイト
http://www.lotus-cars.jp/
・ガレージシマヤ 公式サイト
https://garageshimaya.com
・ヨコハマタイヤ 公式サイト
https://www.y-yokohama.com/product/tire/