ランボルギーニ各モデルの特性を徹底的に試せる雪上試乗会とは?

“雪上”だからこそわかったスーパースポーツカー「ランボルギーニ レヴエルト」のAWD性能

本誌でもお馴染みのモータージャーナリスト、大谷達也が冬のモンゴルでレヴエルトを走らせる僥倖を得た。その走りの魅力をレポート。
本誌でもお馴染みのモータージャーナリスト、大谷達也が冬のモンゴルでレヴエルトを走らせる僥倖を得た。その走りの魅力をレポート。
ランボルギーニの顧客向けイベント「Lamborghini Esperienza Neve」がモンゴルで開催された。ウインターシーズンに世界各地の景勝地でドライビングを楽しめる特別なプログラムにジャーナリスト・大谷達也が参加し、レヴエルトの雪上性能を試してきた。(GENROQ 2025年2月号より転載・再構成)

Lamborghini Revuelto Driving on Ice

雪上で見たランボルギーニの真価

最新スーパースポーツのレヴエルトのほか、ウラカン・ステラート、ウルスSEなど多彩なランボルギーニのラインナップが雪上に用意された。
最新スーパースポーツのレヴエルトのほか、ウラカン・ステラート、ウルスSEなど多彩なランボルギーニのラインナップが雪上に用意された。

北京で乗り継ぎ、合計7時間ほどのフライトを経て私が辿り着いたのは、中国内モンゴル自治区のハイラルという街。ただし、目指す最終目的地は、ここからさらにクルマで1時間半ほど離れたヤクシ(牙克石)市の外れにある。冬場はマイナス20度まで冷え込むこの地の氷結した川を舞台にして、ランボルギーニをドライブするプログラムに参加するのが、ロシア国境に近い最果ての地を訪れた最大の理由である。

なぜ、ランボルギーニは氷上イベントを開催するのか? ランボルギーニほど4WDモデルに深く注力しているスーパーカーブランドはほかにない。そしてその実力を確認するのに、氷上ほど相応しいステージがないことも明らか。そこで彼らはランボルギーニ・オーナーを対象とするエスペリエンザ・ネーヴェ(NEVEはイタリア語で雪の意味)というイベントを毎年のように実施しているのだが、その会場が今年はヤクシだったのである。ちなみに、私はこの地で開催されたエスペリエンザ・ネーヴェを2011年にも取材しているので、ご記憶の読者もいらっしゃるだろう。

ランボルギーニの顧客向けウインタードライビングプログラム

ランボルギーニの顧客のために冬のシーズンのみ開催されるドライビングプログラム「Lamborghini Esperienza Neve」。今年はモンゴルでの開催となった。
ランボルギーニの顧客のために冬のシーズンのみ開催されるドライビングプログラム「Lamborghini Esperienza Neve」。今年はモンゴルでの開催となった。

このイベントの最大の魅力は、とにかく走行時間が多いことに尽きる。なにしろ2日間で最大12時間ほども走り込めるのだ。しかも、私たちは3人ひと組で1台の車両に試乗したため、ひと息ついたと思ったら、もう次の順番がやってきたという感じでひっきりなしに乗れたのである。

もうひとつ、これはヤクシという会場の特徴なのだが、とにかくコースが広くて安心してドライブできることにある。しかも路面はフラットで走りやすく、1日を通して気温が低いので安定したコンディションで走り続けられる点も好ましい。ちなみに計10日間の会期中、吹雪いたことは皆無だったようだ。

そして3つめの特徴が、バリエーション豊かなモデルに試乗できること。今回は「レヴエルト」を筆頭に「ウラカン ステラート(!)」「ウラカン テクニカ」「ウルス ペルフォルマンテ」「ウルスS」の5台を用意。しかも、ひとつのプログラムで最低2台、場合によっては3台に乗れるので、各モデルのハンドリングを比較できるほか、ハンドリングの特性にあわせてドライビングスタイルを変えるという体験までできた。

それにしても、後輪駆動と4WDでここまでドライビングスタイルを変える必要があることに、これまで恥ずかしながら気づかなかった。例えば、ウラカン テクニカのような後輪駆動モデルであれば、テールが流れ始めたら素早くカウンターステアをあてるとともに、スロットルペダルをデリケートにコントロールするのが鉄則。

一方で、アンダーステア傾向の強い4WDでは、テールが流れ始めてもしばらくはカウンターステアをあてないことでアンダーステアを抑えるとともに、テールアウトの姿勢をさらに強める必要があるときは大胆にスロットルペダルを踏み込まないとクルマがアウト側に逃げてしまうことが理解できた。もっとも、これらは懇切丁寧なインストラクターに解説してもらって初めてわかったことで、自分ひとりでは到底、見いだせなかったと思われる。

モデルごとの特性が顕著になるのが面白い

ウラカン・ステラートのほか、ウルス・ペルフォルマンテ、ウルスSの雪上ドライビングも体験することができた。
ウラカン・ステラートのほか、ウルス・ペルフォルマンテ、ウルスSの雪上ドライビングも体験することができた。

モデルごとの特性の違いも興味深かった。基本、4WDはかなりドリフトアングルが深くなっても、スロットルペダルを薄く踏んで前輪にトルクを掛けていればスピン状態に陥る恐れは低い。これがレヴエルトとなると、最高出力は1000PS以上もあるので、それこそ細心の注意を払ってスロットルペダルをコントロールしなければクルリとスピンしてしまう。ただし、これにはレヴエルトのステア特性がニュートラルに近い設定となっていることも影響しているはず。一方で、最高出力が600PS台のウルスはそこまで神経質になる必要がなく、思いっきりスロットルペダルを踏み込んでもスピンすることは滅多になかったが、これについては、最高出力の大小だけでなく、フロントエンジンとミッドシップという基本レイアウトの違いも考慮すべきだろう。

とはいえ、頭ではわかっていても身体がいうことをきいてくれないのが私の悲しい性で、リズムに乗れればウラカン ステラートもウルスも思いどおりに操れるのだが、ひとたび躓くとそこから復帰するのに時間を要することが少なくなかった。それでも後輪駆動のウラカン テクニカだけは、いつでもすっとコントロールできたのだから、よほど相性がよかったのだろう。ちなみに「テクニカがいちばん操りやすい」とインストラクターに伝えたところ、彼は「そんなことを言ったのは、アナタが初めてです」といって目を白黒させていた。

個人的なベストはウラカン テクニカ

意外だったのが用意されたモデルの中で唯一の後輪駆動であるウラカン・テクニカが最もコントローラブルだったことだ。ドリフトを思う存分楽しんだ。
意外だったのが用意されたモデルの中で唯一の後輪駆動であるウラカン・テクニカが最もコントローラブルだったことだ。ドリフトを思う存分楽しんだ。

前回、このヤクシでのイベントに参加したときは、食べ物が口にあわなかったうえにホテルのグレードも決して高くなく、「このままではVIPゲストをお招きできないのではないか?」と疑問に思っていたが、この13年間でどちらの問題も完全に解消されていた。こうなると、ヨーロッパに比べて移動時間が短くて済むこと、そして時差がほぼないことの価値が急浮上してくる。

事実、私と一緒に参加した3名のランボルギーニ・オーナーも「ここだったら参加できる。来年もまたきたい」と口々に語っていた。実は、今回のイベントが参加者からあまりに好評だったため、2年連続でヤクシで実施することも検討されているとか。冬の内モンゴルでランボルギーニ、来年はアナタもチャレンジしてはいかがだろうか?

REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/Lamborghini S.p.A.
MAGAZINE/GENROQ 2025年2月号

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ・レヴエルト

ボディサイズ:全長4947 全幅2033 全高1160mm
ホイールベース:2779mm
車両重量:1772kg
エンジン:V型12気筒DOHC
総排気量:6498cc
最高出力:364kW(825PS)/9250rpm
最大トルク:725Nm(74.4kgm)/6750rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/35ZR20 後345/30ZR21
0-100km/h加速:2.5秒
最高速度:350km/h
車両本体価格:6453万2406円

【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889
https://www.lamborghini.com/jp-en

隊列を組んで走行する「ランボルギーニ ウルス S」。

「ランボルギーニ ウルスS」で絶景のフィヨルドと北欧料理を堪能するノルウェーロードトリップが最高すぎる

2024年7月、アウトモビリ・ランボルギーニは、特別なカスタマーと共にロードトリップを行う「ランボルギーニ・エスペリエンツァ・アヴェンチュラ(Lamborghini Esperienza Avventura)」を実施。参加者は「ウルス S」のステアリングを握り、ノルウェーのフィヨルド地帯をたっぷりと堪能した。

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…