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Lamborghini Gallardo & Murcielago
V12とV10の2ラインナップの始まり

1999年にランボルギーニの経営権を握ったアウディは、このカリスマ性豊かなイタリアのスーパーカーブランドを最大限に活かしながらビジネスとして成功させるプランを描いた。まずひとつがフラッグシップV12ミッドシップ後継モデルであり、そしてもうひとつがその下のクラスとなる新たなモデルの開発だった。特にこの下のモデルについては、そのアーキテクチャーをアウディのクルマとも共有することで開発コストを有効活用することを狙ったのである。
結果的にこのプランは大成功となり、ランボルギーニの業績は右肩上がりとなったことは既にお伝えした通りだ。つまり、「ムルシエラゴ」と「ガヤルド」から“今”のランボルギーニが始まったというわけである。
自由自在に操れるガヤルド



その歴史的転換期となった2つのモデルに、久しぶりに試乗する機会を得た。まずガヤルドは「LP570-4スパイダー・ペルフォルマンテ」。eギアと呼ばれる2ペダル仕様だ。ガヤルドは初期モデルには乗った経験があるが、ほぼモデル末期に発売されたLP570-4ペルフォルマンテに乗るのは初めてだ。
記憶の中のガヤルドを思い出しながら走り出すと、その素晴らしさに感嘆した。まずクルマとの一体感が素晴らしい。今の基準から見るとコンパクトなボディはレスポンスのいいステアリングフィールと相まって自由自在に振り回せる。スパイダーボディで生産から10年以上経っているのに、ボディは堅牢そのもので足もしっかりと地面を捉える。何より素晴らしいのはV10エンジンだ。一般道での試乗だが先導車が飛ばすのでついスロットルを強く踏むと、心地良いサウンドと共に狙い通りのパワーがついてくる。eギアはデュアルクラッと比べるとシフトアップの息継ぎはあるが、それが逆にMT車を操っているかのような盛り上がり感で実に楽しい。これに比べるとDCTはATみたいでつまらないな、と思ってしまった程だ。
微妙な緩さが心地いいムルシエラゴ



そしてホワイトのボディが美しいムルシエラゴは、2006年に発表されたヴェルサーチとのコラボモデルで、20台のみ生産されたという貴重な個体。こちらもガヤルドと同様、今のモデルよりは小さなボディで運転しやすいのが好印象だ。ただアヴェンタドールから採用されたカーボンモノコックのボディと比べると、全体的に緩い印象は否めない。それが却って戦闘的な気分を和らげ、オシャレに乗りこなすことができそうだが。
ランボルギーニ自身が所有する個体なのでコンディションが非常に良いという部分はあるが(どちらもオドメーターは4000km台)、乗り終わった後の正直な感想は「これで十分じゃないか」というものだ。スーパースポーツカーに限らずだが、新しいモデルは常に前のモデルを上回る性能を求められる。結果、代を重ねるごとに性能はどんどん上がり、それに付随してさまざまな機構が加えられる。でも、それが本当に乗る者にとって楽しいことなのか。10年以上前のランボルギーニに、大事なことを教えられた気がする。
REPORT/永田元輔(Gensuke NAGATA)
PHOTO/LAMBORGHINI S.p.A.
MAGAZINE/GENROQ 2025年2月号