FFとは思えない走りを披露した「BMW M135」の実力を試乗でチェック

「Cセグメントハッチの新しいリーダー?」新型「BMW M135 xドライブ」に試乗でポテンシャルを確認

新型1シリーズのトップモデルに君臨するM135。新型1シリーズの出来はいかに?
新型1シリーズのトップモデルに君臨するM135。新型1シリーズの出来はいかに?
日本でも人気の高い1シリーズがついに4代目へと生まれ変わった。トップグレードに君臨するのは300PS/400Nmを発生する4気筒ターボを積むM135だ。刷新されたCセグホットハッチの走りを詳細にレポートする。(GENROQ 2025年2月号より転載・再構成)

BMW M135 xDrive

Cセグメントの白眉

Cセグメントで最速級の1台でありながら、洗練された走りのポテンシャルを備えるM135 xドライブ。
Cセグメントで最速級の1台でありながら、洗練された走りのポテンシャルを備えるM135 xドライブ。

「1シリーズ」といえば、初代と2代目はFRのハッチバックという、BMWらしい希少なCセグメントコンパクトだった。続く3代目=先代では、ついに競合他車と真っ向勝負するエンジン横置きのFFレイアウトに脱皮した。それから5年ぶりの刷新となる新型も、まあ当然のごとくFFレイアウトを受け継ぐ。

いまだに2のクーペだけは頑固にFRを守るところはBMWらしいが、その他の2シリーズ系やX1/X2など、各セグメントのエントリーBMWは、今やことごとくFFレイアウトとなった。聞けば、これらのFF系BMWに対して、駆動方式をうんぬんする声はほとんどなく、新しい顧客の取り込みにも成功しているという。また、その主要コンポーネンツを、グループ内のMINIと共有できるのも、経営や開発の効率化という意味ではメリット大である。

……と、エントリーBMWのFF化は基本的に成功とされており、この新型1シリーズも先代改良型のプラットフォームを含めて、基本コンセプトは正常進化といっていい。最近のBMWは同じボディに電気自動車も用意するのがお約束となりつつあるが、今回はひとまず全車に48Vマイルドハイブリッドを搭載しつつも、従来どおりエンジン車だけのラインナップでスタートした。

ただ、先代のデザインには賛否のうちの否の意見も少なくなかったようで、新型1シリーズでは「キドニーグリルをヘッドライトより低く配置する」という、BMWとしてはなかなか歴史的なデザイン手法を取り入れた。FFレイアウトはノーズが短く見えがちで、そこが伝統的BMWのスポーティ表現とは相反する。先代もAピラー形状の工夫などでノーズを長く見せる努力をしていたが、今回のキドニーの位置変更は、さらにロングノーズに見せるのが狙いだ。

Mらしさに溢れたスポーティな内装

インテリアデザインも、まさに様変わりしているが、これは昨今のBMWに共通する、お馴染みのものだ。カーブドディスプレイやツマミ式シフトはお約束だが、それに加えて空調吹き立しの口を隠しデザインとなり、周辺にはきらびやかなアンビエントライトが仕込まれている。

今回連れ出した取材車は最速スポーツグレードとなるM135。2.0リッターターボ+4WDの組み合わせも先代同様だが、変速機がトルコン式の8速ATから、より効率的な7速DCTになったのは新しい。

それよりも、このクルマの商品名の末尾に「i」がつかないのは、ちょっとした歴史的事件といっていい。これに続いて上陸予定の新型X3でも、ガソリン車の末尾にiはつかないのだ。そのiはもともと、1970年代後半、当時のハイテクの代名詞だった燃料噴射装置つきをアピールするために使われはじめた。そして燃料噴射装置が常識になって以降は、今度はガソリン車であることを示す記号になったが、最近のBMWは電気自動車の頭文字にもiを使うようになった。最終的には、こうしてガソリンが電気にiをゆずったというわけだ。これも時代である。

ドライバビリティに優れた4気筒エンジン

閑話休題。高度なシャシーや4WDによって、300PS、400Nmという大台の最高出力、最大トルクを完全支配下に置くのは、先代も新型も変わらぬ美点だ。ただ、今回はその乗り味が、驚くほど洗練された。

新しいM135はなにより乗り心地が圧倒的に良くなった。前記のとおりプラットフォームは先代改良型だが、サスペンション部分はほぼ新開発という。さらに、2シリーズツアラーやX1/X2などの同世代のFF系BMW同様に、1シリーズの上位機種に標準装備される「Mアダプティブサスペンション」も、なんともいい仕事している感じなのだ。

ちなみに、この可変ダンパーはFR系で使われている電子制御連続可変タイプとは異なり、ストロークスピードによって減衰力を切り替えるメカニカル式で、国産車では「周波数感応型」などと呼ばれるタイプ。実は2024年7月号の本誌の(M135と主要メカを共有する)X1 M35iの試乗記で、同車のダンパーを電子制御と説明してしまったのだが、それは間違い。X1のMアダプティブサスペンションも、今回と同じ周波数感応型である。ここに謹んで、お詫びと訂正をさせていただく。

ただ、あえて弁解させていただくと、このMアダプティブサスペンションは、電子制御と錯覚させるくらいデキがいいのだ。それを備えるM135にしても、Cセグメントとしては最速級の1台でありながら、この洗練された操安性は素直にステキ。ターンインではしなやかに荷重移動しながら、そこからGが高まっても決してアゴを出させないコシのあるフットワークだ。操舵力が軽く、しかも一定したステアリングフィールも、先代以上にFFらしからぬ(厳密には4WDだが)滑らかさである。

アシの良さは衝撃級だ

周波数感応型のMアダプティブサスペンションを採用する。この足まわりのできが非常に素晴らしい!
周波数感応型のMアダプティブサスペンションを採用する。この足まわりのできが非常に素晴らしい!

同じ基本骨格を使いながら、強固に水平姿勢を保つゴーカートフィールを標榜するMINIとは、それはいい意味で対照的な味わいだ。それでいて、FFベース4WDならではの徹頭徹尾安定したスタビリティや、デジタル技術で迫力というより耳ざわりが良くなったエンジンサウンドなど、M135は伝統的BMWにはない新しい魅力も主張する。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/佐藤亮太(Ryota SATO)
MAGAZINE/GENROQ 2025年2月号

SPECIFICATIONS

BMW M135 xドライブ

ボディサイズ:全長4370 全幅1800 全高1450mm
ホイールベース:2670mm
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1998cc
最高出力:221kW(300PS)/5750rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後225/45R18
燃料消費率:12.5km/L
車両本体価格:698万円

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp

社内コードネームF70と呼ばれる4代目へと進化を遂げたBMWの主力モデル1シリーズ。今回はM135 xドライブをメインに試乗を行った。

「マイナーチェンジと間違わないで」“大幅刷新”に思わず唸る出来栄えの新型「BMW 1シリーズ」に試乗

BMWのCセグメントハッチ、1シリーズが4代目へと進化を遂げた。FFながらもBMWらしいスポーティな走りとモダンなデザインを兼ね備えた新型はCセグメントに新たな新風を吹き込む可能性のある1台に仕上がっていた。(GENROQ 2024年12月号より転載・再構成)

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