目次
病みつきになる装着感

アップルのAirPods 4は、「AirPods Proの下位版」と見られがちだ。しかし、この製品が発売されて以来、僕はAirPods ProよりもAirPods 4の方を頻繁に使っている。どちらか片方選べと言われれば、おそらくAirPods 4を選ぶだろう。なぜなら、この製品が提案する価値観はまったく新しいものだからだ。
AirPods Proには耳道を密閉するイヤーピースが装着されているため、強力なアクティブノイズキャンセリング(ANC)によって外部音をほぼシャットアウトする。静寂を求めて音楽に没頭したい時や、周囲の騒音から完全に切り離されたリスニング環境を欲するユーザーにとっては、Proモデルが理想的な選択肢だろう。
しかし、一歩引いて考えてみると、日常的にイヤホンを使う場面では、完璧な静寂よりも優先すべきことがあることをこの製品は教えてくれている。通勤や通学で街中を移動する時、オフィスや自宅で軽く作業しながら音楽を楽しむ時など、生活と音が重なり合うシチュエーションでは、周囲の環境を適度に感じながら、長時間使っても快適性を失わず、心地よく使い続けられる。それこそがAirPods 4の価値だ。「耳を塞がない」というAirPods本来の設計コンセプトは、没入感を得るためにはマイナスかもしれないが、日常の生活環境と馴染む上ではとても大きな意味を持つ。
最新のH2チップを採用


とは言え、従来のAirPodsにはいくつかの弱点があった。ひとつはイヤーピースを使わないことによるフィット感。形状が合わない人にとっては、位置がずれたり、ランニング中に耳から外れたりといった問題が起きる。しかし、第4世代モデルでは、そうした問題を、より多くのユーザの耳の形状を解析することで解決している。第4世代は軽快な装着感はそのままに耳の中で極めて安定しているのだ。
さらにAirPods 4には、新たにANCを搭載するモデルが用意された。AirPods Proのように「静寂」を提供するものではなく「ノイズを緩和」する程度と考えればいい。ANCを適応モードにすれば、ユーザーの状況に合わせて効き目を調整してくれる機能もある。もちろん、耳穴に詰め込まない構造ゆえの軽い装着感は、数時間着けっぱなしでも苦にならず、外す理由をわざわざ探す必要がないほどだ。
音質面についても、H2チップの採用をはじめとした技術の改良で、AirPods 4は一段とバランスの良いサウンドを実現した。もちろん、密閉型のProほど低音の量感はないものの、日常の音楽リスニングにおいては十分以上の心地よさを提供する。
あらゆるシチュエーションに対応

iPhoneとの緊密な連携も見逃せないポイントだ。AirPods 4は、iPhoneに届く通知を自動で読み上げたり、Dolby Atmos対応による空間オーディオを再生したりと、上位モデルに劣らぬ「スマートな音の拡張機能」をしっかりと装備している。「Proの下位互換」ではない独自の地位を確立したAirPods 4は、iPhoneとイヤホンの関係に新たな基準を設定した。それゆえに、iPhoneを中心としたライフスタイルには、他に変えがたい価値をもたらす。
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2025年 2月号
PRICE
2万9800円
評価
AirPods史上、最も軽量な製品だ。複数のマイクを用いたノイズキャンセリングマイクも魅力。風が強い屋外や、騒々しい環境でも相手に的確な音声が届くよう設計されている。
コストパフォーマンス:4
音質:4
バッテリー:3
機能:5
ノイズキャンセリング:3
【問い合わせ】
Apple Storeコールセンター
TEL 0120-993-993
https://www.apple.com/jp/