クルマに関しては保守派が選ぶ2024年の隠れた名車

リベラルだけど車選びは保守的なゲンロクWeb編集長が選ぶ今年の名車3選【2024年個人的に感動した名車】

ランボルギーニ ウラカン テクニカ
ランボルギーニ ウラカン テクニカ
仕事柄、多種多様なニューモデルに触れてきたモータージャーナリストたち。2024年に試乗した中で隠れた名車を選ぶ本コーナー。リベラルだけど車選びは保守というゲンロクWeb編集長・吉岡がセレクトしたのは……。

人間力を磨いてくれるGTS

『ゲンロクWeb』担当になってからというもの、試乗の機会はめっきり減ったものの、それでも今年は70台以上に乗りました。その中から、世間的にはあまり注目されなかったものの、改めて見直したい3台を紹介します。

1台目は「マクラーレン GTS」です。マクラーレンはスーパーシリーズの「765LT」も、スポーツシリーズの「600LT」も、そのソリッドな乗り味が大好きで、最新PHEVの「アルトゥーラ」も、サーキットで試してはいないものの、きっと満足させてくれるはず!と夢想していました。一方、亜流(失礼)の「GT」は、荷物が積めるスーパースポーツという位置づけがどこか中途半端で、マクラーレンのラインナップの中であまり好感を持てませんでした。

ところが、先日マイナーチェンジを経た「GTS」に乗る機会があり、その出来栄えに驚きました。GTSは最高出力635PSを発揮する4.0リッターV8ツインターボを搭載し、性能的には十分。まだサーキットでは試していませんが、意外とイケるのでは?と感じました。他の強力なラインナップに埋もれがちですが、元々の性能が十分高いのは言うまでもありません。

さらに、フロントフードに150L、リヤラゲッジに420Lの荷物が積める実用性も魅力的。しかし、それ以上に心惹かれたのは、その原始的な在り方です。ハイブリッド化されておらず、一部油圧のパワステによるステアフィールや、巨大なタッチパネルを採用していない点など、現代のクルマにはないシンプルさが新鮮でした。こうしたクルマに乗ることで、野生の勘や人間力が磨かれる期待も高まります。

オーセンティックな佇まいで最先端

次はステーションワゴンの王道、S214型「メルセデス・ベンツ E300 ステーションワゴン」です。自動車メディアでは新型登場時に極端なものが注目されがちで、EクラスもAMGや廉価グレードが話題に上りました。しかし、自分としては実際に買う時に検討する中間グレードの魅力に惹かれます。

自動車メディアの一員となった二十数年前、先輩のおじさんたちの「あがり車」としてEクラスを目にし、自分も50歳になったら買う、と心に決めていました。しかし、今回の試乗車は本体価格1139万円(オプション込みで1253万円!)。「失われた30年」により購入の夢は遠のきましたが、やはりスリーポインテッドスターのボンネットマスコットは魅力的。オーセンティックな佇まいは、当時憧れたEクラスそのものです。

また、乗り味もあの頃の思い出を程よくモダナイズしたような感じで期待通り。スロー目のステアリングや重厚で柔らかな乗り心地が「いいクルマ感」を醸します。一方でインテリアは12.3インチのメーターディスプレイとセンターディスプレイが並ぶ最先端のMBUXを採用。ADASの充実も魅力で、原始的な装備のマクラーレン GTSと対照的に、良いバランスを感じました。

ハレの日のクルマ

最後は、「GENROQ」らしい1台、モデル末期の「ランボルギーニ ウラカン テクニカ」です。後継モデル「テメラリオ」が発表される直前、富士スピードウェイでの試乗が実現しました。

特筆すべきは5.2リッターV10自然吸気エンジン。現代では稀少な大排気量多気筒エンジンは感動的です。本当はAWDと後輪操舵(RWS)を連動して制御させるランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ(LDVI)を装備するEVO AWDの方が好みで、あの独特の運転感覚は、俊敏さよりもむしろ重厚感を感じました。RWSのない「ウラカン RWD」よりも鈍重という意味ではなく、緻密な機構を詰め込んだゴツい腕時計を思わせます。その点RWDベースのテクニカはもっとカジュアルに640PSの高出力を味わわせてくれる1台と言えます。

多少渋滞した東名高速でも8.0km/Lの燃費を記録。日常使いする車ではない「ハレの日のクルマ」と考えると、むしろ好燃費と言えるでしょう。「週末のためのクルマ」をテーマとするゲンロクWebにふさわしい1台で、2024年にその価値を刻みたいと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。良いお年をお迎えください!

60km/h以下であれば走行中でも開閉可能な電動ソフトトップを装備。開閉に要する時間は約20秒。

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さて、2023年はアウディR8を推した編集部・石川ですが、2024年に伝承したいクルマはもう少しお買い得な、コスパに優れたモデルをチョイス。でもその走りは、通好みそのものなんです。

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著者プロフィール

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka) 近影

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka)

Takuro Yoshioka。大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わり…