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Boxster / S / Spider(Type 987)
ボディパネルはすべて刷新



兄貴分である「911」が996型から997型へ進化を遂げたのに続き、「ボクスター」も2004年に986型から第2世代となる987型へと進化を遂げた。997と同様、987も986の正常進化版というべきモデルで、997と共有しているパーツも多いが、ボディパネルはすべて刷新。シャシーもホイールベースこそ同一ながら、前後トレッドは24〜35mmと僅かに拡大された。またフロアパネルとサイドシルをスポット溶接と接着剤で接合するなど製造工程を含めた見直しが図られた結果、捩り剛性が9%、曲げ剛性が14%高くなっている。
ボディ自体は全長が21mmほど長くなっているが、前後リッドをアルミ化し、スペアタイヤを廃止、さらに各部にアルミや複合材の使用頻度を高めたことで、重量増は40kgほどに止まった。そのほかアンダーフロアの70%がカバーされるなど、空力面の改良により、前面投影面積が増加したにも関わらずCd値は「ボクスターS」で0.31から0.29へと向上。前後のリフト量も25%以上低減されている。
一方インテリアはデザインが全面的に刷新され、質感が向上。シートの軽量化、形状の改良、電動ソフトトップの開閉機構に改良が施されたほか、ステアリングにチルト機構を装着。加えて合計6個のエアバッグ、高さを増した高強度ステンレススチールのロールオーバーバーが装着されるなど、安全装備の充実が図られたのも大きな特徴といえる。
2007年モデルでバリオカムプラスを採用

エンジンは基本的に先代のキャリーオーバーだが、吸排気系の効率を向上することで、2.7リッターのボクスターの最高出力が240PS、最大トルクが270Nmに、3.2リッターのボクスターSの最高出力が280ps、最大トルクが320Nmへとそれぞれアップしている。
そこに組み合わされるギヤボックスはボクスターが5速MTもしくは5速ティプトロニック(AT)、ボクスターSが6速MTもしくは5速ATと従来通りのラインナップになっているが、パワー&トルクアップに合わせて改良が施されているだけでなく、ボクスターSの6速MTは容量を拡大したゲトラク製の新型に変更されている。
サスペンションは前後ともストラット式だが、フロントにクロスバーを追加し、前後共に中空のハブキャリアの採用など新規設計となり、軽量化と剛性アップを実現。あわせてトラクション&スタビリティコントロールのPSMを標準装備としたほか、可変ダンパーのPASMがオプション設定されるようになった。
その後2007年モデルでボクスター、ボクスターSのエンジンに可変バルブシステムと可変バルブリフトシステムを一体化したバリオカムプラスを採用。それにあわせてボクスターSの排気量が3.2リッターから3.4リッターに引き上げられ、最高出力も295PSへと向上した。
ハイパフォーマンス仕様のボクスター・スパイダー登場



2008年発表の2009年モデルでビッグマイチェンを実施。HID化されたヘッドライト、LED化されたテールライトをはじめ、バンパーやホイールなどの形状を変更。ボクスターSでは997に続いて3.4リッターエンジンが直噴化され、最大出力が310PSへと向上している。一方ボクスターのエンジンは直噴化されなかったものの排気量を2.9リッターへと拡大。最高出力も255PSとなった。もうひとつ、このマイチェンのトピックはボクスター、ボクスターSともに2ペダル仕様のギヤボックスが、ティプトロニックからデュアルクラッチ2ペダルMTのPDKへと変更されたことで、シフトスピードだけでなく燃費性能も向上した。
また2010年には初のバリエーションとしてアルミ製のドアをはじめ、スポーツバケットシート、インナードアベルト、簡易的なソフトトップ、そしてオプション設定となったエアコンなどにより80kgもの軽量化を施したうえ、320PSにチューンナップした3.4リッター直噴ユニット、ローダウンサスペンションを組み合わせた、ハイパフォーマンス仕様のボクスター・スパイダーを設定。ボクスターの新たな可能性を提示してみせた。