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Cayman / Cayman S / Cayman R(Type 987C)
待望のファストバッククーペモデル



初代986型「ボクスター」がデビューした当初から、“ボクスター・クーペ”の存在は噂されていたが、予想以上のヒットを記録したことで生産が手一杯となり、ついに実現することはなかった。そして987型ボクスターの登場から1年が過ぎた2005年のフランクフルト・ショーでケイマンと名付けられた、待望のファストバッククーペモデルが登場する。
987Cというコードナンバーからもお分かりのとおり、ベースとなったのは987ボクスターでAピラーから前の部分とドア(これは997とも共通)以外は、ケイマン専用のデザインとなっている。フロアパンも基本的にボクスターと共通だが、クーペボディの採用により、リヤに大きなテールゲートを備えているにもかかわらず、捻り剛性はボクスターの2.5倍となる3万1500Nm/deg(997とほぼ同値)、曲げ剛性は2倍の1万6500Nm/mmを記録している。
エアロダイナミクスも風洞を用いて徹底的に見直された結果、120km/hで起動するポップアップ式のリヤスポイラーの採用などにより、前後のリフト量をボクスターよりも50%低減。Cd値もボクスターSと同じ0.29へ抑えられている。またインテリアにはアルカンターラのルーフライニングが奢られ、ボクスターよりも入念に遮音材が盛り込まれているが、様々な軽量化の努力により、車両重量はボクスターより5kg軽く仕上げられている。
マイナーチェンジで排気量拡大


エンジンはボクスター用を基本に、997用のシリンダーヘッドやクランクケース、バリオカムプラスを組み合わせた水冷フラット6で、ボクスターよりも上というポジショニングもあって、295PSを発生する3.4リッターユニットを搭載した「ケイマンS」からリリース。その後2006年に最高出力245PSを発生するスタンダード版の「ケイマン」が追加された。ギヤボックスはどちらも6速MTもしくは、5速ティプトロニック(AT)の設定となっている。
そして2008年には世界700台限定ながら、303PSにチューンされた3.4リッターユニットとPASMを標準装備した「ケイマンSスポーツ」を発売している。
続く2009年モデルでボクスター同様、マイナーチェンジを敢行。フロントおよびリヤのライト周りがリファインされただけでなく、ボクスターSは排気量が50cc拡大され3436ccになるとともに直噴システムが組み合わされ320PSへとパワーアップ。スタンダードのケイマンも排気量が2.9リッターへと拡大され、非直噴ながら265PSを発生するようになった。また両エンジンともにトラブルの多いインターミディエイトシャフトが廃止されたこと、両グレードに5速ティプトロニックに代わって7速PDKが用意されるようになったのも特徴といえる。
911とボクスターの間に位置する本格スポーツカー


2010年にはハイパフォーマンスバージョンの「ケイマンR」をラインナップする。330PSへとパワーアップを果たした3.4リッターユニットを搭載し、アルミドアやCFRPシートの採用、50kgの軽量化を達成エアコンやオーディオなどのオプション化により15kgの軽量化を達成。さらに20mmのローダウンサスペンション、専用のリヤスポイラー、LSDなどを装備した。
ちなみにケイマンRの0-100km/h加速は5秒で、7速PDK仕様は4.9秒、スポーツクロノ仕様にいたっては4.7秒を記録。PDKを備えたケイマンSの5.1秒(6速MTは5.2秒)を大きく上回るパフォーマンスを発揮し話題を呼んだ。
こうしてケイマンは911とボクスターの間に位置する本格的スポーツカーとしての地位を確立した。それとともに2シーターミドシップスポーツのベンチマークとして、各国の自動車メーカーに大きな影響を与える存在となったのである。