「これは見逃せない超貴重なインプレッション」超レアなV12気筒フェラーリ3台の競演が実現

夢か幻か!ついに実現した“究極の12気筒フェラーリ”3台試乗「デイトナSP3」「812コンペティツィオーネA」「プロサングエ」

見よ、この光景を。究極のハイパーカーに貴重な限定モデル、最新フェラーリ、二度と集められないこの邂逅をお楽しみあれ。
見よ、この光景を。究極のハイパーカーに貴重な限定モデル、最新フェラーリ、二度と集められないこの邂逅をお楽しみあれ。
これは夢か、それとも幻か? まるで現実とは思えぬほど豪華なフェラーリ12気筒モデル3台を比較する僥倖に恵まれた。限定生産のハイパーカー、「デイトナSP3」に、こちらも限定モデル「812コンペティツィオーネA」、そして今をときめく「プロサングエ」の3台である。究極のV12ユニットを積む3台の走りの魅力と全貌をお伝えしよう!(GENROQ 2025年3月号より転載・再構成)

Ferrari Daytona SP3
Ferrari 812 Competizione A
Ferrari Purosangue

F140型ユニットの官能的なサウンドに酔いしれる

これは夢か、それとも幻か? まるで現実とは思えぬほど豪華なフェラーリ12気筒モデル3台を比較する僥倖に恵まれた。限定生産のハイパーカー、「デイトナSP3」に、こちらも限定モデル「812コンペティツィオーネA」、そして今をときめく「プロサングエ」の3台である。究極のV12ユニットを積む3台の走りの魅力と全貌をお伝えしよう!
今回の車両はすべてオーナー車両である。貴重なデイトナSP3や限定生産の812コンペティツィオーネA、そして最新作のプロサングエ。これだけのフェラーリ12気筒のメンツが集まる機会はもうないだろう。

「エンツォ・フェラーリ」への搭載を起源とするV12自然吸気の名機F140。ロードカー用としてはBシリーズ(エンツォ)に始まり、アルファベット順に今やHシリーズ(812コンペティツィオーネ、デイトナSP3、12チリンドリ)、そしてIシリーズ(プロサングエ)と8世代を数えるまでに至った(ただしDシリーズはFXX用。詳しくは別項を参照)。Hシリーズこそ、猛々しくも官能的なV12の最高峰であるという見解は明らかだ。

12チリンドリの日本上陸を前にマラネッロ産65度V12を積んだ3台の最新モデル、デビュー順に812コンペティツィオーネA(アペルタ)、デイトナSP3、プロサングエ、が一堂に介し、同じタイミングでテストできるという僥倖に預かった。フェラーリ史上、最も搭載台数の多いV12エンジンF140の到達点を知るには最高の“三役揃い踏み”であろう。ちなみにすべてオーナー車両であり、今回初の“オーナー公認”メディア露出となる。

それにしてもこの3台の跳ね馬は別格だ。いずれもテーラーメイド仕立てであることはマニアが見れば一目瞭然、しかもモデルごとに後述する“芸の細かさ”を見るにつけ、担当するデザインチームとの個人的な親密ささえ伺える。幾度かチェントロスティーレの広い専用ルームでテーラーメイドのコンフィグレーションに帯同した経験もあるけれど、これほど微に入り細を穿ったオーダーには立ち会ったことがない。チームとの信頼関係はもちろんのこと、オーナーの“妥協なき跳ね馬愛”が伺える貴重なサンプルだ。

超プレミアム仕様のデイトナSP3

「さぁ、どれからでもお好きなように」。ひとしきり誌面用の撮影を終えると、オーナーがそう切り出した。もちろんそのためにやってきたので、乗りたくてウズウズもしていたのだが、そうシンプルに言われて不覚にも怯んでしまった。「まずは“おとなしい”のからいきますわ……」。なんと贅沢な話だろう!

ネロのオパコ(マット)ギャラクシー(フレーク入り)にゴールドのセンターラインというモダン&クラシックなプロサングエにまずは乗り込んだ。すでに2000km以上の試乗経験があるプロサングエとはいえ、ドラポジを決めてベルトを締め考え抜かれた形状のステアリングホイールを握ると自然と心の“やる気スイッチ”が入った。着座位置が高くドアが多いだけの、これはやはりマラネッロ産スポーツカーなのだ。

もっともIシリーズのF140は高回転域での力強さを少し絞ったかわりに、その分を低回転域でのトルクアップに充てている。マラネッロはプロサングエのことをSUVとは決して呼ばないが、2tを超える車両重量とSUVのような使い方(例えばヒッチメンバーを付け250LMを載せた台車を引くなど)をするオーナーのため、実用域重視のセッティングとしたのだ。エンジンフィールは軽く滑らかで、サウンドも主張はあるが控えめ。けれども右足裏には心地よい振動が常に伝わって、エンジンがダイレクトに繋がっているかのような感覚がスイッチの入った気分をいっそう盛り上げてくれる。

もう死んでもいいと思わせる官能的すぎる812コンペティツィオーネA

ステアリング操作が必要な場面に差し掛かると、今度は腰と尻がシートを通じて後輪と一体となり、望む位置へと前輪を置けるという両腕の感覚と相まって、人馬一体感が極まる。ロードカーラインナップでは最もGT寄りに位置付けられるプロサングエだが、ひとたびカントリーロードに繰り出せば、当世随一のスポーツカーへと変身するのだった。

レッドメタからブラックギャラクシーへのグラデーションも鮮やかな世界599台の812コンペティツィオーネAに乗り換える。この個体もまた“鬼テーラーメード”というべき仕様で、リヤトランク裏のスペックプレートを見ればこれまで見たことのない数の文字が並んでいた。小さすぎでほとんど読めないから写メして拡大したほど。多くの項目に“名称”がなくただエクストラレンジ(範囲外)とだけ記されている。ちなみにメインのボディカラー名も特別で“ロッソノブ”とあった。ゼッケン23はもちろん67年のデイトナ24時間チャンピオンナンバー(330P4)だ。カーボンファイバー製ルーフパネルはあらかじめ外されていた。トップはコンパートメントに収納される。オープン状態で乗るのはこれが初めて、どころか812コンペ自体ベルリネッタを3年前に雨のフィオラーノで試して以来である。

ルーフを外したこともあって、エンジンサウンドを筆頭にさまざまなノイズが容赦なく室内へと降り注いだ。プロサングエから乗り換えれば、タイヤのひと転がし目からその“軽さ”に感動する。そしてもちろん前脚の自由度がすこぶる高いにも関わらず、しっかりと地に足をつけている感がある。雨のフィオラーノでシャシー制御のたくみさに感動したことを思い出しつつ右足に力を込めた。

なんというエンジンだ! 4000rpmからの底抜けにシャープな回転フィールといい、頂点を目指し一気呵成に協調するサウンドといい、歴代ロードカー最高クラスのマラネッロ・エンジンシンフォニーだろう。高回転域の甘美なスクリーミングはもちろん、低回転域での“さえずり”さえ耳に心地よい。先走って書いておくと、F140の官能性を最も体感できるモデルがこの812コンペティツィオーネAだと思う。

極上の乗り心地を提供するプロサングエ

ハイパーカーにも関わらず非常に運転しやすいSP3,、超刺激的なサウンドを奏でる812コンペティツィオーネA、圧巻のスーパースポーツであるプロサングエ。その個性の違いは見事だ。
ハイパーカーにも関わらず非常に運転しやすいSP3,、超刺激的なサウンドを奏でる812コンペティツィオーネA、圧巻のスーパースポーツであるプロサングエ。その個性の違いは見事だ。

最後にお待ちかね、こちらも日本で試すのは初となるデイトナSP3だ。この個体のテーラーメイド具合がまた頭抜けてすごかった。濃い赤のビジュアルカーボンからルーフに向けてブラックへグラデーションするボディカラー(グロッシーレッドカーボン)やエンブレムの幅に合わせておそらくはこれまでで最も細く描かれたトリコローレストライプ、さらにはデイトナ2位フィニッシュのゼッケン24など、特別仕立てが目白押し。なかにはチェントロスティーレのボス、フラヴィオ・マンゾーニの決裁を仰いだ部位もあるというから畏れ入る。

ルーフパネルをもちろん外してもらった。収納スペースがないので、プロサングエに一時避難させる。1950〜1960年代のスポーツレーサーのような鮮青のシート生地に心躍らせつつ乗り込んだ。フロントエンジンの2台とはまるで異なる着座位置と緊張からくるタイト感にエンジンをかける前から“手に汗握る”。“やる気スイッチ”が入った、どころかスイッチが押し込められてもう二度とオフには戻らないかと心配になるほど胸が高鳴ってくる。

フロントミッドゆえ十二分に自由な前脚を有していた前の2台との比較でも比べものにならぬほど前輪には自由感覚がある。軽く、節度があって、安心感も凄まじい。そしてもちろん正確かつシャープに動く。“思い通り”とはこのことで、加えてリヤに積まれたパワートレインが後輪とセットで背中&腰と一体になる感覚があるから、ほとんど自分自身が走っているように動き出すことができる。よくできたリヤミドシップカーではボディサイズなど関係なくなってしまうのだ。エンジンフィールそのものは当然、最も過激だ。車体の軽さと相まって力強さも圧巻で、高回転域を楽しんでいる余裕などまるでない。

驚いたことに乗り心地は812コンペAより良いと思った。一体感があって軽いから扱いやすく思えるのだ。加えてサウンドは最もラウドではあるものの伸びは抑え気味で余韻がより太く短い。エンジンの官能性という点ではやはりフロントミッドというレイアウトに利があったのだ。

REPORT/西川 淳(Jun NISHIKAWA)
PHOTO/西野キヨシ(Kiyoshi NISHINO)
MAGAZINE/GENROQ 2025年3月号

SPECIFICATIONS

フェラーリ・デイトナSP3

ボディサイズ:全長4686 全幅2050 全高1142mm
ホイールベース:2651mm
乾燥重量:1485kg
エンジンタイプ:V型12気筒DOHC
総排気量:6496cc
最高出力:618kW(840PS)/9250rpm
最大トルク:697Nm(71.1kgm)/7250rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/30ZR20 後345/30ZR21
最高速度:340km/h以上
0-100km/h加速:2.85秒
車両本体価格:──

フェラーリ812 コンペティツィオーネA

ボディサイズ:全長4696 全幅1971 全高1276mm
ホイールベース:2720mm
乾燥重量:1487kg
エンジンタイプ:V型12気筒DOHC
総排気量:6496cc
最高出力:610kW(830PS)/9500rpm
最大トルク:692Nm(70.6kgm)/7000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前275/35ZR20 後315/35ZR20
最高速度:340km/h以上
0-100km/h加速:2.85秒
車両本体価格:──

フェラーリ・プロサングエ

ボディサイズ:全長4973 全幅2028 全高1589mm
ホイールベース:3018mm
乾燥重量:2033kg
エンジンタイプ:V型12気筒DOHC
総排気量:6496cc
最高出力:533kW(725PS)/7750rpm
最大トルク:716Nm(73.0kgm)/6250rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/35ZR22 後315/30R23
最高速度:310km/h以上
0-100km/h加速:3.3秒
車両本体価格:4766万円

IMSA開幕戦「デイトナ24時間レース」のGTDクラスにフェラーリは、6チームから8台の296 GT3がエントリーする。

まもなく開幕するIMSA「デイトナ24時間レース」でクラス連覇を狙う「フェラーリ 296 GT3」が8台参戦

2025年シーズンのIMSA・ウェザーテック・スポーツカー選手権開幕戦「ロレックス・デイトナ24時間レース」に、フェラーリは6チームから8台の296 GT3がエントリー。現地アメリカ・フロリダ時間の1月25日午後1時40分(日本時間1月26日午前3時40分)にスタートする決勝レースにおいて、フェラーリはGTDプロクラスにおける連覇を狙う。

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西川 淳