最強EV「タイカン ターボ GT」に導入された「900Aテクノロジー」

1100PSを超えるパワーを実現した「ポルシェ タイカン ターボ GT」に施された様々なアップデートとは?

最強のフル電動パフォーマンスカーとして完成した「ポルシェ タイカン ターボ GT」。その開発には、新たな試みが数多く導入されている。
最強のフル電動パフォーマンスカーとして完成した「ポルシェ タイカン ターボ GT」。その開発には、新たな試みが数多く導入されている。
フル電動パフォーマンスカー「ポルシェ タイカン ターボ GT」は、市販ポルシェで最もパワフルなモデルに君臨する。パフォーマンスに注力したこのスポーツセダンは、ライバルたちを遥かに凌駕する走行性能を発揮。ローンチコントロール使用時の最高出力は760kW(1034PS)、オーバーブーストを使うことで2秒間最大815kW(1108PS)にも達する。

Porsche Taycan Turbo GT

「タイカン S」を超えるパフォーマンス仕様

ポルシェは、多くのオーナーがタイカンのパフォーマンスアップ仕様を求めていることを受けて、「タイカン ターボ GT」の開発を決定した。タイカン ターボ GTは「オーバーブースト」を使うことで、そのパワーは1108PSにも達する。
ポルシェは、多くのオーナーがタイカンのパフォーマンスアップ仕様を求めていることを受けて、「タイカン ターボ GT」の開発を決定した。タイカン ターボ GTは「オーバーブースト」を使うことで、そのパワーは1108PSにも達する。

それまでのトップモデル「タイカン S」を大きく上まわるスペックが与えられた「タイカン ターボ GT」。その誕生には、タイカンに、より高いパフォーマンスを求めるユーザーの存在があったと、タイカンのテクニカル・プロジェクトマネージャーを務めるクリスチャン・ミュラーは振り返った。

「タイカンに関するフィードバックを調査するなかで、私たちのカスタマー中には、さらに高いポジションのトップモデルを求めている人が存在することが分かってきました。もちろんパワーの向上は、高いパフォーマンスを目指して開発されたモデルにおいて大切要素のひとつです。だからこそ、私たちは開発の非常に早い段階からこの点に着目していたのです」

「タイカン S」を超えるパワーを実現するのはどうすればいいのか? 伝統的な6気筒ボクサーのようなガソリンエンジンであれば、より大きな排気量、より高い回転数、より低い摩擦損失、大型ターボチャージャーなどによって実現することができるだろう。しかし、電気モーターの場合はまったく状況が異なってくる。

900アンペアの新型「パルスインバータ」を搭載

タイカン ターボ GTは、従来の600Aから900Aの電力で動作する新型パルスインバータを搭載。より多くの電気エネルギーを利用できるようにになった。
タイカン ターボ GTは、従来の600アンペアから900アンペアの電力で動作する新型パルスインバータを搭載。より多くの電気エネルギーを利用できるようにになった。

ミュラーが率いる開発チームは、まずリヤアクスルのフル電動駆動システムのパルスインバータに注目した。パルスインバータは、105kWh高電圧バッテリーの直流電圧を交流電圧へと変換し、電気モーターを制御するコンポーネント。タイカン ターボSでは 600アンペアのパルスインバータが搭載されていた。

タイカン ターボ GTに導入された新しいパルスインバータは、最大900アンペアの電流で作動するため、より強力なポンプのように、多くの電気エネルギーをモーターへと向けて押し出すことができる。同時に従来のシリコンの代わりに炭化ケイ素をインバーターの半導体材料として使用することで、スイッチング損失が低減し、パルス周波数も向上したと謳う。この結果、効率性が大幅に改善され、パフォーマンスの安定性も手にしているという。

「これが、現時点で最も重要な開発になりました」と、ミュラーは強調。これらの対策は単純に聞こえるかもしれないが、実施するのはそれほど簡単ではない。

「新しいパルスインバータは以前よりサイズが大きいので、コンポーネントに収めるためボディシェルを改良する必要がありました」と、ミュラーは明かす。これを受けてトランクのホイールアーチ間に“パワードーム” のような膨らみが存在することになった。ポルシェはあえてここを魅力的な要素へと変換し、「Turbo GT」のレタリングで強調している。

トランスミッションの強化を実施

1100PSを超えるパワーに対応するため、駆動系も大幅な強化を実施。サイズを大型化することなく強化されている。また、専用の固定式リヤウイングを含めた、専用のエアロダイナミクスも導入された。
1100PSを超えるパワーに対応するため、駆動系も大幅な強化を実施。サイズを大型化することなく強化されている。また、専用の固定式リヤウイングを含めた、専用のエアロダイナミクスも導入された。

タイカン ターボ GTに搭載される永久同期モーターと、新型パルスインバータは、900アンペアという大電流に最適化されており、高速走行時でも驚異的なパワーを発揮。ポルシェらしいパフォーマンスを実現する。さらに、開発エンジニアたちはリヤアクスルの2速トランスミッションの改良にも、多大な時間を費やした。

「入力トルクが大きくなると、そのストレスも格段に強くなります。それを受けて、トランスミッションのコンポーネントをより頑丈なものに変更しました。例えば、ギヤの表面を特殊処理したり、ベアリングを適合させたり、クラッチを強化したりもしています」と、ミュラー。

エンジニアたちは、既存のトランスミッションハウジングの設置スペース内で、すべての変更を行うことができたという。「ギヤレシオがロング化され、フロントアクスルのドライブトレインにも改良を施したことで、最高時速305kmというはるかに高いトラックスピードを達成できるようになりました」と、ミュラーは付け加えた。

エクステリアには、新形状のアンダーボディ、フロント&リヤスポイラーを含む新たなエアロダイナミクスパケージを導入。軽量セラミックブレーキ、専用の21インチ鍛造ホイールに装着された特別な高性能サマータイヤ、さらにコンポーネント全体におよぶインテリジェントな軽量化も実施された。

サーキット走行に特化した「ヴァイザッハ・パッケージ」では、リヤシートを含め、サーキットでの走行に不必要な装備がすべて取り払われた。この結果、ヴァイザッハ・パッケージを装備したタイカン ターボ GTは、通常モデルより70kgも軽量化されている。

2019年に登場して以来、ハイパフォーマンスEVの先駆者となったタイカンがビッグマイナーチェンジ。新型タイカンは航続距離の伸長はもちろん、充電速度、システム出力などあらゆる面が大幅にアップデートされた。最強グレード「タイカンターボGTウィズ・ヴァイザッハパッケージ」の試乗記を中心に、新型タイカンの魅力をお伝えする。

「ポルシェ タイカン」の最強グレード「タイカン ターボGT ヴァイザッハパッケージ」をサーキットで試す

2019年に登場して以来、ハイパフォーマンスEVの先駆者となったタイカンがビッグマイナーチェンジ。 新型タイカンは航続距離の伸長はもちろん、充電速度、システム出力などあらゆる面が大幅にアップデートされた。 最強グレード「タイカンターボGTウィズ・ヴァイザッハパッケージ」の試乗記を中心に、新型タイカンの魅力をお伝えする。(GENROQ 2024年6月号より転載・再構成)

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著者プロフィール

ゲンロクWeb編集部 近影

ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…