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Porsche Taycan Turbo GT
「タイカン S」を超えるパフォーマンス仕様

それまでのトップモデル「タイカン S」を大きく上まわるスペックが与えられた「タイカン ターボ GT」。その誕生には、タイカンに、より高いパフォーマンスを求めるユーザーの存在があったと、タイカンのテクニカル・プロジェクトマネージャーを務めるクリスチャン・ミュラーは振り返った。
「タイカンに関するフィードバックを調査するなかで、私たちのカスタマー中には、さらに高いポジションのトップモデルを求めている人が存在することが分かってきました。もちろんパワーの向上は、高いパフォーマンスを目指して開発されたモデルにおいて大切要素のひとつです。だからこそ、私たちは開発の非常に早い段階からこの点に着目していたのです」
「タイカン S」を超えるパワーを実現するのはどうすればいいのか? 伝統的な6気筒ボクサーのようなガソリンエンジンであれば、より大きな排気量、より高い回転数、より低い摩擦損失、大型ターボチャージャーなどによって実現することができるだろう。しかし、電気モーターの場合はまったく状況が異なってくる。
900アンペアの新型「パルスインバータ」を搭載

ミュラーが率いる開発チームは、まずリヤアクスルのフル電動駆動システムのパルスインバータに注目した。パルスインバータは、105kWh高電圧バッテリーの直流電圧を交流電圧へと変換し、電気モーターを制御するコンポーネント。タイカン ターボSでは 600アンペアのパルスインバータが搭載されていた。
タイカン ターボ GTに導入された新しいパルスインバータは、最大900アンペアの電流で作動するため、より強力なポンプのように、多くの電気エネルギーをモーターへと向けて押し出すことができる。同時に従来のシリコンの代わりに炭化ケイ素をインバーターの半導体材料として使用することで、スイッチング損失が低減し、パルス周波数も向上したと謳う。この結果、効率性が大幅に改善され、パフォーマンスの安定性も手にしているという。
「これが、現時点で最も重要な開発になりました」と、ミュラーは強調。これらの対策は単純に聞こえるかもしれないが、実施するのはそれほど簡単ではない。
「新しいパルスインバータは以前よりサイズが大きいので、コンポーネントに収めるためボディシェルを改良する必要がありました」と、ミュラーは明かす。これを受けてトランクのホイールアーチ間に“パワードーム” のような膨らみが存在することになった。ポルシェはあえてここを魅力的な要素へと変換し、「Turbo GT」のレタリングで強調している。
トランスミッションの強化を実施

タイカン ターボ GTに搭載される永久同期モーターと、新型パルスインバータは、900アンペアという大電流に最適化されており、高速走行時でも驚異的なパワーを発揮。ポルシェらしいパフォーマンスを実現する。さらに、開発エンジニアたちはリヤアクスルの2速トランスミッションの改良にも、多大な時間を費やした。
「入力トルクが大きくなると、そのストレスも格段に強くなります。それを受けて、トランスミッションのコンポーネントをより頑丈なものに変更しました。例えば、ギヤの表面を特殊処理したり、ベアリングを適合させたり、クラッチを強化したりもしています」と、ミュラー。
エンジニアたちは、既存のトランスミッションハウジングの設置スペース内で、すべての変更を行うことができたという。「ギヤレシオがロング化され、フロントアクスルのドライブトレインにも改良を施したことで、最高時速305kmというはるかに高いトラックスピードを達成できるようになりました」と、ミュラーは付け加えた。
エクステリアには、新形状のアンダーボディ、フロント&リヤスポイラーを含む新たなエアロダイナミクスパケージを導入。軽量セラミックブレーキ、専用の21インチ鍛造ホイールに装着された特別な高性能サマータイヤ、さらにコンポーネント全体におよぶインテリジェントな軽量化も実施された。
サーキット走行に特化した「ヴァイザッハ・パッケージ」では、リヤシートを含め、サーキットでの走行に不必要な装備がすべて取り払われた。この結果、ヴァイザッハ・パッケージを装備したタイカン ターボ GTは、通常モデルより70kgも軽量化されている。