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NOKIAN TYRES
ノキアンタイヤの哲学と強みとは


意外だと思われるかもしれないが、日本は青森や北海道など世界有数の降雪地域が多数存在する、冬の道への備えが重要な国である。その日本で注目を集めるタイヤメーカーがノキアンタイヤだ。
2017年の日本導入以降、欧米での高い評価とともに徐々に認知度を高めている北欧フィンランド発のノキアンタイヤは、特に欧州カーメーカーとの相性が優れていると玄人筋からの評価が高い。その秘密はどこにあるのだろうか? グローバルプロダクトマネジャーであるヤルノ・アーベンラッミ氏の来日に際して、その哲学と強みについて訊いた。
「ノキアンタイヤは90年以上も前に世界初のウインタータイヤを作りました。それ以来プレミアムかつ安全を最も重視しているタイヤブランドで、開発においては安全性と予測可能な運転に重点を置いています」
この哲学は、氷雪上の性能が非常に優れている一方で、突出した特性だけに頼らないバランスの良さからも実感できる。同氏も「予測可能な挙動を実現することは安全につながります」と強調し、例えばアイスバーンでのグリップ性能が高くとも、加減速やコーナリングで一貫した感覚が得られなければ安心感は生まれないと説明する。
多くのカーメーカーが認定冬用タイヤとして採用



その一方でグリーントレースコンパウンドを採用することで、転がり抵抗を低減し、燃費性能が優れていることも冬用タイヤとしては意外な才能である。この総合性能の高さもノキアンタイヤの魅力である。
また近年の電動車市場の成長を受け、BEV専用タイヤの開発にも注力している。「BEVは静粛性が高いため、タイヤのノイズがドライバーに不快感を与える可能性があります。そこでアコースティックフォームと呼ぶスポンジ層をタイヤ裏に使用してノイズを吸収することで、静粛性を向上させています」とヤルノ氏。これにより、静粛性と燃費性能を両立し、快適で効率的なドライブを可能にしているという。
フラッグシップのハッカペリッタR5ファミリーは現在ここ日本でもランドローバー、BMW、ボルボ、テスラ、メルセデス・ベンツの正規ディーラーで販売されている。これは時代に即したサイズバリエーションの開発や、新型車の登場から早期に迅速な製造と供給を実現しているためである。「新型車向けサイズの早期生産が可能なのは、比較的小さな規模のお陰で、フレキシブルな開発が実現できているためです。もちろん自動車メーカーとの良好な関係性もあります」とヤルノ氏は語る。冬用タイヤの主力ハッカペリッタシリーズは、フィンランド・ノキア市の工場で生産されるが、今夏ルーマニアに新設されるカーボンニュートラル工場をはじめ、サステナビリティにも力を入れている。
見せかけだけではない安全性能


会社規模は小さいが、フィンランド北極圏イヴァロに、世界最大の冬季試験場、ホワイトヘルを所有していることも注目だ。広大なだけでなく、林間コースやスキー場のような斜面、完全屋内施設など多様な環境を備えたこの試験場がノキアンタイヤの迅速な開発を支えている。長い冬を通して厳しい条件でテストできることが、製品の信頼性を支えているのだ。また、「施設を常にアップデートし、安定した結果を得るための環境を維持することが非常に重要です」とヤルノ氏が述べるように、メンテナンススタッフが多数配置されている点も特徴だ。スペインにも試験場を所有しており、カーメーカーの求めに応じて冬用タイヤでありながら夏用タイヤに求められる性能も兼ね備えた製品を提供している。
冒頭ヤルノ氏が述べたように、その信念は「安全第一」である。この考えは、熟練ドライバーほど高い評価をしている。バランスの良いウインター性能に加え、環境への配慮も徹底されるノキアンタイヤ。北欧という厳しい冬で鍛えられたタイヤだからこそ、見せかけだけではない安全性能への信頼があるのだ。
REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)、NOKIAN TYRES
MAGAZINE/GENROQ 2025年3月号
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阿部商会
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