航続距離の長いフル電動SUV「メルセデス・ベンツ EQB」と「テスラ モデルY」を比較

“伝統”か“革新”かフル電動SUV「メルセデス・ベンツ EQB 350」と「テスラ モデルY ロングレンジ」を比較

2025年1月にEVの雄である改良新型「テスラ モデルY」の注文受付が開始された。今回は2024年6月の改良で航続距離を大幅に向上させた「メルセデス・ベンツ EQB」と比較してみよう。比較する仕様は、ともにAWDを搭載した長航続距離グレードの「メルセデス・ベンツ EQB 350 4MATIC」と「テスラ モデルY ロングレンジAWD」である。

MERCEDES-BENZ EQB
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TESLA MODEL Y

7人乗りのEQBと広々5人乗りのモデルY

「メルセデス・ベンツ EQB 350」と「テスラ モデルY ロングレンジ」を比較する。EQBは「メルセデス・ベンツ GLB」をベースに電動化されたSUVだ。フロントフェイスに備わったEQシリーズ共通のブラックパネルグリルがEVらしさを強調し、力強いスクエアフォルムが加わることによってアーバンSUVらしい雰囲気にまとめられている。

一方、モデルYのエクステリアはクーペSUVのように滑らかなボディラインとシンプルなディテールで徹底されており、フロントグリルレスのクリーンな造形が一際目立つ。

インテリアに関しては、メルセデス・ベンツらしい高級感を前面に押し出すEQBに対し、モデルYは限界までボタン類を排除したミニマルデザインと最新のデジタル技術が特徴だ。

EQBはEVならではの特別感が希薄であるものの、他のメルセデス・ベンツからの乗り換えでも迷うことなく使える車内設計になっている。そして、最大7人の乗車を可能とする3列シートがEQBのもっとも大きな特徴となる。

モデルYのインテリアはすべての操作が15インチのタッチスクリーンに集約され、後席中央にも8インチタッチスクリーンが備わる。7人乗りも想定された車内は広々としており開放感も高い。ただし、7人乗りが設定されるのは一部地域のみで、日本では5人乗り仕様のみのデリバリーとなる。

ボディサイズ=全長4685mm×全幅1835mm×全高1705mm
ホイールベース=2830mm
車両重量=2170kg
タイヤサイズ=235/55R18

ボディサイズ=全長4760mm×全幅1925mm×全高1625mm
ホイールベース=2890mm
車両重量=1980kg
タイヤサイズ=255/45R19

同じAWD+大容量バッテリー仕様でも性能はモデルYが上

EQB 250+の上位グレードにあたるEQB 350 4MATICは、後輪にもモーターを追加したAWDの採用によりシステム最高出力は292PS、最大トルクが520Nmに引き上げられている。WLTCモードにおける最大航続距離は250+よりも60kmほど短い490kmとなるが、後輪の駆動を積極的に使った上質な乗り味が350 4MATICの持ち味だ。

対するモデルYのロングレンジAWDは、詳細なモータースペックが公表されていないが、圧倒的な加速性能を誇る点は変わらない。高出力化されたモーターとAWDシステムにより、モデルYの0-100km/h加速タイムは4.3秒に短縮。EQB 350 4MATICの0-100km/h加速タイムは6.2秒となっているため、モデルYとの動力性能差は非常に大きいことが分かる。

さらにモデルYの航続距離は、テスラの独自測定で635kmとなっており単純比較ではEQBを大きく上回る。パワートレインのスペックはモデルYが圧倒的に上だ。

そもそもEQBは、SUVとしての実用性とEVならではの静粛性を両立させたモデルとなる。対するモデルYは、俊敏なハンドリングとEVならではの高い加速力を前面に出した走りが特徴だ。

駆動用バッテリーの種類=リチウムイオン電池
定格出力=215kW
最高出力=292PS
最大トルク=520Nm
トランスミッション=1速固定
駆動方式=AWD

駆動用バッテリーの種類=リチウムイオン電池
最高出力=前215PS、後299PS
最大トルク=前240Nm、後350Nm
トランスミッション=1速固定
駆動方式=AWD

伝統的なプレミアムEVと前衛的なミニマルEV

新型においてもモデルYのコストパフォーマンスの高さは健在だ。価格は内装の質感や装備の充実度が高いEQBの方が250万円以上高くなる。老舗プレミアムカーブランドらしい快適性や安全性を備えるEQBは、ファミリーユースを想定した3列シートの実用性や、4MATICによる安定した走行性能を求めるユーザーに適した選択肢となるだろう。

対するモデルYは、航続距離の長さや先進的なテクノロジー、ダイレクトな加速性能などEVとしての性能と機能に特化しており、実用性と高いパフォーマンスを両立させたいユーザーに向く。「OTA(Over the Air)」による遠隔ソフトウェアアップデートや独自の充電システム「スーパーチャージャー」など幅広いサービス価値が提供される点もモデルYを含むテスラの特徴だ。

モデルYは前衛的なテスラの最新車となる。それに比べればEQBは保守的といわざるを得ない。しかし、それもメルセデス・ベンツとEQBの美点である。両車はどちらもAWDと大容量バッテリーを搭載した長航続距離仕様のEVだが、実に対極的な2台といえるだろう。

車両本体価格

※2025.5.1 一部スペックについて追記

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