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立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」の衝撃

ホームシアターを構築する製品は、この数年で驚くほど手軽になった。薄く大型化するテレビはスタイリッシュだが、音質的には物足りない。画面が大型になるほど本格的で広い音場でなければバランスが取れなくなる。
一方で、スタイリッシュでスリムなデザインになるほど、高音質を実現することは難しくなる。そんなわけで、昔ならテレビのスピーカーをほんの少し強化する程度だった“サウンドバー”というジャンルに、フルセットで50万円に届くような高級モデルが生まれ、手軽かつデザイン面でも納得感のあるサウンドシステムが提案されるようになった。
中でもソニー「HT-A9M2」は、驚きをもたらしてくれる製品だ。スタイリッシュなワイヤレスの薄型スピーカーを4体、厳密な位置の制約なく部屋の四隅に配置すれば、広大なドルビーATMOSによる音響空間が、自分の部屋に生まれる。そんな体験を実現しているのが「360 Spatial Sound Mapping」という技術だ。
この技術は“波面合成”という技術を用い、実際に接続されているスピーカーより多くのスピーカーが、本当に存在しているかのように感じさせてくれる。いわゆる仮想サラウンド技術だが、多くの仮想サラウンド技術には技術的な限界がある。ところが4本のスピーカーで仮想スピーカーを作り出す本機は、本当にスピーカーが存在するかのように聴かせ、ドルビーATMOS 7.1.4(サラウンド7チャンネル、サブウーファーひとつ、天井スピーカー4チャンネル)の構成を仮想的に再現する。同様の技術は、実はソニー製のさまざまな製品に盛り込まれているが、その中でもTH-A9M2の作り出す音場は格別だ。
迫力ある音の秘密は独自の3WAY構造


この技術、以前は特別なイベントなどでプロジェクションマッピングなどとともにインスタレーションなどに応用されていた。しかし技術の進歩で、小さな製品の中にみ組み込めるようになった。しかもワイヤレスで安定した接続が得られ、セッティングも自動的。簡単かつ効果的に豊かな音場を実現できる。アクション映画を観れば、映像演出と共に変化する音場表現にワクワクが止まらないだろうし、静かなドラマ系の映像でさえ、緊張感を演出する場面で納得感のある空気を演出してくれる。
映像作品やコンサート映像でドルビーATMOSの音声を楽しむ以上にきっと驚くのが、配信されている音楽がいつの間にか“空間オーディオ”だらけになっていること。実はApple Musicなどで配信されている空間オーディオ(ドルビーATMOSなどで作られた立体編集の音楽)は、2万5000曲を越えようとしており、さらにその数が増している。そんな新しい形の音楽も、本システムは素晴らしい音質でバランスよく再生できる。
専用アプリで操作もラクラク

たった2万5000曲?と思うかもしれないが、どんどん追加されている上、ステレオ音源専用をドルビーATMOSの構成で楽しく聴かせるアップミックス機能も備えている。もはやHT-A9M2さえあればあれこれ迷うことなく納得感のあるオーディオ環境を自宅に構築できる。これがゴールと思えば、実は安い投資じゃないかな?
REPORT/本田雅一(Masakazu HONDA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2025年4月号
PRICE
オープン価格
評価
このモデルは第2世代。第1世代モデルでは通常デザインのスピーカーだったが、薄くインテリアに馴染むデザインになった上、音質的にも磨きがかかり、より製品としての完成度が高まった。
コストパフォーマンス:5
音質:4
立体音響:5
手軽さ:4
設置自由度:5
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