8.5代目「フォルクスワーゲン ゴルフ」のベーシックグレードに試乗

令和の良心的コンパクトカー「フォルクスワーゲン ゴルフ」のベーシックグレード「eTSIアクティブ」に試乗

フォルクスワーゲン ゴルフ eTSIアクティブ
フォルクスワーゲン ゴルフ eTSIアクティブ
8.5世代目に進化した「フォルクスワーゲン ゴルフ」。その中でベーシックグレードに位置する1.5リッター直4ターボ+マイルドハイブリッドモデルの「eTSIアクティブ」に市街地で試乗した。その印象をリポートする。

Volkswagen Golf eTSI Active

外観と内装もブラッシュアップ

2019年に登場した8代目「フォルクスワーゲン ゴルフ」。日本導入はコロナ禍の影響もあり2021年と遅れたが、その改良版となる8.5世代目に該当する最新モデルが発売された。8代目で取り組んだ「電動化」「ADAS強化」「デジタル化」を進化させたという。中身だけではなく、外観と内装もブラッシュアップしており、新インフォテインメントシステムを導入。外観では、フロントグリルのイルミネーションエンブレム、新デザインの前後バンパー、新デザインのLEDリヤコンビネーションランプが新しい。

日本市場には「eTSI」「GTI」「TDI」の3機種がラインナップされ、パワートレインは前述の順に、1.5リッター直4ターボの1.5L eTSI mHEV、2.0リッター直4ターボの2.0L TSI、2.0リッター直4ターボの3機種で、すべて7速DSG(DCT)が組み合わされ、駆動方式はFWDとなる。今回試乗したのは売れ筋となることが見込まれるベースグレードの「eTSIアクティブ」48Vマイルドハイブリッド採用モデルだ。

eTSIは全車1.5リッター直4ターボを搭載するマイルドハイブリッドだが「アクティブ」「スタイル」「Rライン」に分けられたグレードによって最高出力と最大トルクが異なる。最廉価のアクティブのみ116PS/220Nmで、中間グレードのスタイル以上ではややアップした150PS/250Nmとなる。

走りに“いいもの感”がある

ゴルフは15年以上前だが、6代目のコンフォートライン(1.4リッター直4ターボ、122PS/200Nm)に1年間乗っていたことがあり、今も続く模範的なコンパクトカーという立ち位置に日々触れられたことは、とても勉強になったと記憶している。その朧げな記憶を辿りつつ、eTSIアクティブを走らせる。

まず第一印象は、乗り心地がいいということ。ネクセン製エコタイヤ(205/55R16)は市街地を走らせてもソフトなダンパーと相まって上質な乗り味をもたらしてくれる。そして、レザーステアリングのグリップが細く、しっとりとした質感が好ましい。青緑基調の2眼メーターパネルはステアリングスイッチで2種類から表示内容を選択可能だ。

最高出力116PS/5000〜6000rpm、最大トルク220Nm/1500〜3000rpmを発揮する1.5リッター直4ターボエンジンは、音を含めて実用的な範囲に収まる。しかし、印象的だったのは、ベルト駆動の48Vマイルドハイブリッドシステムを備えていることもあり、走りに“いいもの感”がある点だ。ここでいう“いいもの感”とは、予期せぬ変速ショックや非力さがないということ。

水冷式スターターオルタネーターはベルト駆動のため、ISGほどエンジン始動がスムーズではないが、変速時のトルク変動などを緩和してくれる。フルスロットル時、7速DCTは6200rpmで的確にシフトし、現代につながるDCTブームのパイオニア(正確には兄弟車の2代目アウディA3)であることを思い出させた。

アクセルペダルに対する加速感はリニア

市街地を流れに沿って走らせる。VWといえば、アクセル操作に対してスロットルが早めに開く、いわゆる“早開き”の印象があるが、eTSIはアクセルペダルに対する加速感はリニアで、116PSというスペック通りの滑らかな立ち上がりを見せる。ドライビングモードでスポーツを選ぶとアクセルのツキは向上するので、せっかちな人はスポーツモードを選択すると良いだろう。

巡航中にはACT(アクティブシリンダーマネージメント)によって頻繁に気筒休止し、これも“いいもの感”に一役買っているように感じる。従来のACTからACT+に改められ、従来2番・3番ピストンのみ停止していたが今回残る1番・4番ピストンが2気筒に最適化されたカムプロファイルに切り替わることで気筒休止中の性能が向上した。これはACC使用中には気づきにくいが、市街地を巡航中などに有効だろう。

ちなみにアクティブのリヤサスペンションはスタイル以上の4リンクと異なりトレーリングアームとなる。高速走行中のリヤの安定性を確かめることはできなかったが、少なくともロードノイズは気にならなかった。ブレーキは初期のタッチに過敏さはなく、ストロークに応じて制動力が発揮される。個人的には、もう少し初期から制動力が立ち上がると安心感が増すと感じた。

ファミリーカーの新たなる基準車

ベーシックなファミリーカーだが室内に安っぽい印象はない。新世代デジタルインターフェイスを採用した内装は、ダッシュボード中央に配置される新世代インフォテイメント「MIB4」を備えた12.9インチセンターディスプレイや、10.25インチメーターパネルが新しい。ステアリングスイッチは物理スイッチで操作しやすく、ステアリングヒーターだけでなく前席にはシートヒーターも標準装備される。また、エアコン温度やオーディオ音量を調整するタッチスイッチにはバックライトが追加されて視認性が向上したという。

なお、試乗時の燃費は15.5km/Lだったが、ストップアンドゴーや加速テストもあったため、ポテンシャルはもう少し高いはずだ。実際カタログ燃費は18.8km/L(WLTC)で高速モード燃費は21.2km/Lなので、47Lタンクであれば1000km走行も可能かもしれない。

今回試乗したeTSIアクティブの価格は379万9000円。冒頭ベースグレードと書いたが、真の最廉価グレードは「eTSI アクティブ ベーシック」で349万9000円となる。ただし、こちらはオプションが一切装備できない特殊グレードとなる。全車ACCなどADAS完備、使い勝手のいいインフォテイメントシステムを搭載、良心的なファミリーカーの新たなる基準車と言える新型ゴルフは、円安の令和にあって、絶妙な価格設定なので大いに悩んで決断していただきたい。

REPORT&PHOTO/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)

SPECIFICATIONS

フォルクスワーゲン ゴルフ eTSI アクティブ

ボディサイズ:全長4295 全幅1790 全高1475mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1320kg
エンジン:直列4気筒ターボ
総排気量:1497cc
エンジン最高出力:85kW(116PS)/5000〜6000rpm
エンジン最大トルク:220Nm/1500〜3000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後トレーリングアーム
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:205/55R16
車両本体価格:379万9000円

フォルクスワーゲン ゴルフ TDI

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著者プロフィール

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka) 近影

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka)

Takuro Yoshioka。大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わり…