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M635CSi
M6
M1用に開発された3.5リッター直6DOHCを搭載するも

BMWモータースポーツ社初の専用モデルとして1978年に鳴物入りで登場した「M1」であったが、様々な外的要因も重なり商業的には成功を収めることができなかった。その一方でBMWは、既存の車種にBMWモータースポーツ社が手を加えたスペシャルモデルを製造することで、同社のスポーツイメージ、ブランドイメージを高める戦略を採用。その手始めとして、1979年にE12型「5シリーズ」をベースとした「M535i」を発売する。
これはBMWの生産ラインから引き抜いた5シリーズに「635CSi」用の3.5リッター直6SOHCユニットを搭載したもので、ミュンヘン近郊ガルヒンクのBMWモータースポーツ社においてフロントとリヤのバルクヘッドを補強、ドッグレッグパターンのゲトラグ製クロスレシオ5速MT、LSD、4輪ベンチレーテッドディスクブレーキ、BBS製14インチアロイホイール、フロントエアダム、リヤスポイラーといった専用装備が装着されていた。
そして1983年、BMWはE24型「6シリーズ」をベースとした「M635CSi」を発表する。1976年にBMWのフラッグシップクーペとして登場した6シリーズはそのノーズの中に直6SOHCユニットを収めてきたが、M635 CSiにはM1用に開発された3.5リッター直6DOHC16バルブのM88ユニットをベースとしながらも、燃料噴射装置をクーゲルフィッシャーからボッシュ・モトロニックに変更。加えてウエットサンプ化するなど、実用面を考慮してM88の480PSから290PSへと大幅にデチューンされた3.5リッターのM88/3ユニットが搭載された。
1983年からグループA仕様のM635CSiを投入


そのほか車体側では10mmローダウンしたスポーツサスペンション、4ポットキャリパー付き大径フロントディスクブレーキ、BBS製RSホイール、フロントエアダム、リヤスポイラーを装備。その0-97km/h(60マイル/h)加速は5.8秒とアナウンスされていた。
しかしながら排ガス規制の関係で、M635CSiはヨーロッパ市場のみの販売となり、北米市場と日本市場向けには燃料供給を電子制御インジェクションとし、260PSを発生する3.5リッター直6DOHCのS38B35型ユニットを搭載したモデルが「M6」として1987年から発売されている。
一方、1982年からスタートしたグループA既定に伴いBMWモータースポーツ社は1983年から635CSiを投入しているが1年間に5000台以上を生産した車両という既定に伴い、直6DOHCではなく、3.5リッター直6SOHCのM30型ユニットを搭載。車体、サスペンションなどの製造、開発はBMWモータースポーツ社が担当するが、エンジン開発と製作はハルトゲ、レースカーへのアッセンブリーとレース運営はACシュニッツァーが行うという体制がとられた。
1985年からは全日本ツーリングカー選手権にも

そしてヨーロッパ・ツーリングカー選手権(ETCC)に出場した635CSiは、ジャガー XJS、ローバー ビテスといった強豪を相手に1983年にシリーズタイトル、1984年にシリーズ2位に入るなど活躍。そのほかスパ・フランコルシャン24時間では3勝、ニュルブルクリンク24時間では2勝、RACツーリスト・トロフィーで2勝を記録するなど、世界の長距離レースでも輝かしい成功を収めている。
ちなみに1985年から日本で始まったグループA既定の全日本ツーリングカー選手権にも、オートビューレック・モータースポーツからワークス仕立てのハルトゲ635CSiが出場。通算2勝を挙げ、長坂尚樹/茂木和男組が初代シリーズチャンピオンに輝いている。