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AUDI S5 SEDAN
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BMW 4-SERIES GRAN COUPE
伸びやかなプロポーションと実用性を両立したパッケージング




ともに実用的な4ドアスポーツモデル、「アウディ S5」と「BMW 4シリーズ グランクーペ」を比較する。S5のボディサイズは全長4835mm×全幅1860mm×全高1435mmで、対するM440iのボディサイズは全長4785mm×全幅1850mm×全高1450mmで、S5より50mm短く、10mm狭く、15mm高いがその差はわずかだ。
新型A5は旧A4とA5を統合したニューモデルだ。セダンと4ドアクーペの中間を狙ったプロポーションに改められ、その高性能版となるS5は各部にスポーティなディテールが加えられている。外観では、さらに洗練されたデザインとなったLEDヘッドライトと、リヤの張り出しが強調されたワイドな造形が目を引く。4シリーズはグランクーペという車名どおりルーフラインが、クーペらしい流麗な仕上がりだ。車両重量は1830kgと、S5よりもやや軽量に設計されている点も高性能モデルとして見逃せない。
A5のキャビンはスタイルを引き継ぎ、適度にタイトにまとめつつもA4ゆずりの実用空間となっており、後席の足元空間もこのクラスとしては十分に確保されている印象だ。全体的には、S5が端正なスポーツセダンといった印象であるのに対し、M440iは実用性も視野に入れた万能型グランツーリスモという性格が強そうだ。
アウディS5 セダン
ボディサイズ=全長4835mm×全幅1860mm×全高1435mm
ホイールベース=2895mm
車両重量=1980kg
タイヤサイズ=245/40R19(前後)
BMW 4シリーズ M440i xDrive グランクーペ
ボディサイズ=全長4785mm×全幅1850mm×全高1450mm
ホイールベース=2855mm
車両重量=1830kg
タイヤサイズ=245/40R19(前)255/40R19(後)
どちらも3.0リッターターボだが直6とV6の違いも


S5は、3.0リッターV型6気筒ターボエンジンを搭載しており、最高出力は367PS、最大トルクは550Nmを発揮する。駆動方式はAWDで、トランスミッションには8速ティプトロニックATを採用。縦置きエンジンのFWDをベースとしたAWDは、長年アウディが磨き上げてきた定番のレイアウトであり、左右の重量配分に優れ、高速走行時の直進安定性確保と雪道などの悪路での安心感を両立している。M440iの駆動方式もS5と同じくAWDだが、AWDの仕立てにはアウディが一日の長があると言えるだろう。
多くのV6エンジンがそうであるように、S5のエンジンは厚いトルクが魅力で、低中回転域からの伸びと滑らかな加速フィールが印象的だ。さらにマイルドハイブリッドシステムが駆動をアシストする。一方のM440iは最高出力は387PS、最大トルクは500Nmの3.0リッター直列6気筒ターボエンジンを搭載し、低速から高回転まで直6ならではのスムーズな回転上昇を味わえる点が最大の魅力といえるだろう。
エンジンの最高出力はM440iが高く、最大トルクはS5が優れる。両車ともに0-100km/h加速は5秒前後の俊足であり、絶対的な動力性能では拮抗している。ただし、S5がトルキーなエンジンを活かす大人びた走りを得意とするのに対し、M440iはドライバーとの一体感とエンジンの高揚感で応えるキャラクターといえるだろう。
アウディS5 セダン
エンジン形式=V型6気筒ガソリンターボエンジン+モーター
排気量=2994cc
最高出力=367PS/5500〜6300rpm
最大トルク=550Nm/1700~4000rpm
トランスミッション=7速AT
駆動方式=AWD
BMW 4シリーズ M440i xDrive グランクーペ
エンジン形式=直列6気筒ガソリンターボエンジン
排気量=2997cc
最高出力=387PS/5800rpm
最大トルク=500Nm/1800〜5000rpm
トランスミッション=8速AT
駆動方式=AWD
拮抗する実力のスポーツセダンとラグジュアリークーペ


価格はS5が1035万円、M440iは1012万円となっており、スペックや装備が近いこともあって両車の価格差は極めて小さい。それでも、両車には“似たクルマ”の一言でまとめられない個性があり、その個性とはパッケージングと設計思想の違いに起因するものだ。
S4の実質後継と言えるS5は、セダンでありながらエレガンスとパフォーマンスを両立したモデルであり、シャープな外観とバランスの良い走行性能に惹かれるユーザーに向いている。落ち着いた印象のなかに確かな走りの良さを求める、いわば“控えめなスポーツ志向”を持つ層にフィットする1台といえるだろう。
一方で、M440iはグランクーペという形態によって実用性を確保しており、日常性と非日常性の間を行き来できるバランスが魅力だ。直6ターボとxDriveの組み合わせは高い運動性能を持ちつつも、優雅な余裕も備えており、走りの愉しさに加えてプレミアムな空間に価値を見出すユーザーに応えている。
いずれも魅力あふれるモデルであることに違いはない。自身がどのような走りを、どのようなスタイルで楽しみたいかによって最適な1台が決まってくるだろう。