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圧倒的な加速を “crush” で表現

今回は、前回に続き1989年まで生産された第1世代の「ポルシェ 911 ターボ(タイプ930)」と1995年に登場した「タイプ 993」、および先代の991型「911 ターボ S」の比較試乗記を紹介する(独「Auto Zeitung(アウト ツァイトゥング)」などに寄稿するマルセル・キューラー氏が執筆)。
この記事では、加速についても面白い表現を見つけた。試乗車の993にはエンジンに純正のオプションパッケージが装着されており、大型ターボチャージャーとコントロールユニットの変更、追加オイルクーラーによってオリジナルの408PSから450PSにパワーアップされていたそうだ。0–100km/h加速は4.1秒と俊足で、“The Indian red Turbo crushes the 100 km/h mark after just 4.1 seconds.” と表現している。
“crush” は「押しつぶす」とか「粉砕する」といった意味に用いられることが多いが、このケースでは比喩的な表現として使われている。「圧倒的な力強さ」や「軽々とクリアする」といったニュアンスが込められており、993型ポルシェ911ターボが驚異的な力強さとスムーズさで加速する様子を表現するために使われていると言ってよいだろう。日本語にすると、「インディアン・レッドのターボは、100 km/hをわずか4.1秒で軽々と突破する」という感じだろう。
ハンドリングは「メスのような切れ味」

また、操縦性の正確さにも特筆すべき進化が感じられたようだ。「993ターボはステアリング操作に対して “scalpel-like sharpness” で反応する」としている。「スカルペル」は手術に使われるメスのことだ。993の操舵感が非常に研ぎ澄まされた鋭く切れ味の良いものであることを物語っている。
現行911 ターボSの圧倒的な加速力


最後に試乗した先代モデルのタイプ991「911 ターボS」については、その加速力がさらに印象的だったようだ。「極端にレスポンスの良い580PSのボクサーエンジンが、1600kgのクーペを前方に “catapults” する」と表現している。カタパルトは昔のヨーロッパで戦争に使われた投石器や、戦闘機の射出装置などに由来する動詞で「勢いよく弾き飛ばす」ニュアンスが込められている。ポルシェの圧倒的な加速感が伝わるよう、ダイナミックな表現を用いたものと思われる。
993型では4.1秒だった0 – 100km/h加速が、タイプ991では2.9秒と大幅に向上している。この印象が、“The 911 Turbo S storms to 100 km/h in 2.9 s and on to a maximum speed of 330 km/h.” と書かれている。“storms” は、「嵐のように突進する」「猛然と突き進む」といったニュアンスを持つ動詞として使われている。catapults同様に、加速のすさまじさを強調した表現と言える。日本語にすれば、「タイプ991のターボSは、2.9秒で100 km/hまで一気に加速し、そのまま最高速度330km/hへと突進する」といった感じになるだろう。
今後もゲンロクwebでは、本誌『GENROQ』の海外ジャーナリストによる記事から面白い英語表現をピックアップ。様々なクルマの世界観を紹介していく予定だ。