【BMW Mの軌跡】異形の2シータースポーツカー「Mロードスター」「Mクーペ」

今や希少なコレクターカーとなった2シータースポーツ「Mロードスター」「Mクーペ」を振り返る【BMW Mの軌跡】

BMW Mクーペ
BMW Mクーペ
鮮烈な印象を与えるBMWのスポーツイメージ。その源流はモータースポーツ、ひいては現在の「BMW M社」にある。本連載では、BMWとM社が築き上げてきた歴史を振り返り、象徴的なモデルとともにその軌跡を辿る。今回紹介するのはかなりのレア車「Mロードスター」「Mクーペ」だ。

M Coupe / Roadster

Z3のハイフォーマンスモデルとして

BMW Mロードスター
BMW Mロードスター

ユーノス・ロードスターの世界的な成功によって、様々なメーカーが2シーターオープンスポーツをリリースする中、BMWも「Z3」を1996年に発表する。これはE36/5型「3シリーズコンパクト」をベースとしたものだが、その中身はE30型「3シリーズ」と同様で、サスペンションはフロントストラット、リヤトレーリングアームを採用していた。

このZ3のハイフォーマンスモデルとして1997年に発表されたのが、「Mロードスター」(E36/7)である。エンジンはE36型「M3」と同じダブルVANOS(ダブル・バリアブル・カムシャフト・コントロール)が付いた3.2リッター直6DOHC24バルブ“S50”型ユニットで、最高出力321PS、最大トルク350Nm(北米仕様は最大出力243PS、最大トルク305Nm)を発生。ギヤボックスは6速ではなく5速MTのみの設定で、LSDが標準装備された。シャシーは前後共に10mmほどトレッドを拡大すると共に、28mmほどローダウン。あわせて径の太いアンチロールバーの採用や、サブフレームの強化といったモディファイが施されている。

またタイヤサイズをフロント225/45R17、リヤ245/40R17に変更したほか、ブレーキもE36型M3と同じものを装着。それらにあわせ、ボディもワイドフェンダーをもつマッシブなスタイルとなった。

マッスルカーの如き迫力のブリスターフェンダー

BMW Mクーペ
BMW Mクーペ

さらに1998年にはMロードスターをベースとした「Mクーペ」(E36/8)も登場する。Z3のクーペモデルは当初、スペシャルモデルシリーズのディレクターを務めていたブルクハルト・ゲッシェルらの課外活動的なプロジェクトとして進められてきたものだが、クーペ化によって大幅にボディ剛性がアップすることが証明され、生産に移されることとなった。

MクーペはZ3クーペに3.2リッター直6DOHC24バルブ“S50”ユニットを搭載したもので、基本的な内容はMロードスターと同じ。ブリスターフェンダーを備えた専用ボディは、マッスルカーと呼ぶに相応しい迫力のあるもので、Mロードスターとともに0-100km/h加速は5.4秒と、E36型M3を上回るパフォーマンスを発揮した。

そして2001年にMロードスター、MクーペともにエンジンをE46型M3に搭載された低摩擦型ロッカー・アーム、エレクトロニック・スロットル・バタフライ・コントロール、ダブルVANOSをもつ3.25リッター直6DOHC24バルブ“S54”型ユニットに変更。しかしながらE46型M3との競合を防ぐためにデチューンされ、最高出力325PS、最大トルク350Nmに抑えられていた。またギヤボックスも6速MTや6速SMGではなく、従来通りの5速MTのみの設定となっている。

その結果、0-100km/h加速は5.3秒とわずかに短縮(最高速度は紳士協定により前後期型ともに250km/h)された。

現在はコレクターズアイテムとして珍重

BMW Mロードスターのインテリア
BMW Mロードスターのインテリア

Mロードスターは前後期型あわせて1万5322台を製造。一方Mクーペは2シータークーペという特殊性もあってか、前後期あわせて6291台しか製造されておらず、現在ではコレクターズアイテムとして珍重されている。

ちなみにBMW M社ではMロードスターにE38型「7シリーズ」用5.4リッターV12SOHCユニットと6速MTを搭載したプロトタイプを1999年に1台のみ製作。その最大出力は実に326PSを誇ったが、前後重量配分7:3と超フロントヘビー状態となったこともあり、そのパフォーマンスは0-100km/h加速5.5秒、最高速度263km/hに止まり生産化には移されなかった。

E36型「BMW M3」

2代目「M3」の大いなる方針転換「ホモロゲモデルから上級スポーツモデルへ」【BMW Mの軌跡】

鮮烈な印象を与えるBMWのスポーツイメージ。その源流はモータースポーツ、ひいては現在の「BMW M社」にある。本連載では、BMWとM社が築き上げてきた歴史を振り返り、象徴的なモデルとともにその軌跡を辿る。今回は大成功を収めた2代目「M3」を紹介する。

キーワードで検索する

著者プロフィール

藤原よしお 近影

藤原よしお

クルマに関しては、ヒストリックカー、海外プレミアム・ブランド、そしてモータースポーツ(特に戦後から1…