売れ筋ミドルサイズSUV比較試乗「BMW X3 M50」対「メルセデスAMG GLC 43」

人気ミドサイズSUV「BMW X3 M50 xドライブ」「メルセデスAMG GLC 43 4マティック」を比較試乗

日本でも引く手あまたなのがドイツが誇るミドルサイズSUVのBMW X3とメルセデス・ベンツGLCだ。今回はそのトップグレード同士を比較してみた。
日本でも引く手あまたなのがドイツが誇るミドルサイズSUVのBMW X3とメルセデス・ベンツGLCだ。今回はそのトップグレード同士を比較してみた。
BMWの売れ筋モデル「X3」が待望のフルモデルチェンジを果たした。その頂点に君臨するのが気持ちの良いストレート6を積む「X3 M50」だ。今回はその最大のライバルたる「メルセデスAMG GLC 43」を連れ出し、比較試乗を試みた。(GENROQ 2025年6月号より転載・再構成)

BMW X3 M50 xDrive
X
Mercedes-AMG GLC 43 4Matic

極めて軽快なフィーリングのX3 M50 xドライブ

新型へと生まれ変わったBMWの売れ筋ミドルサイズSUV、X3。そのトップグレードに君臨するのがM50 xドライブだ。
新型へと生まれ変わったBMWの売れ筋ミドルサイズSUV、X3。そのトップグレードに君臨するのがM50 xドライブだ。

主となる流れがセダンからSUVに変わった今日でも、Dセグメントがその中心となっている事実は変わらない。中でもその中心に限りなく近い位置にいるのが今回の2台、「BMW X3」と「メルセデス・ベンツ GLC」だろう。試乗車のチョイスは本誌らしく、「BMW X3 M50 xドライブ」と「メルセデスAMG GLC 43 4マティック」ということになる。

この2台はスペックにも似通った部分が多い。全長は5mm差だし、全幅は一緒、全高も20mmの差しかない。車重に至っては車検証上でもともに2000kgジャストだった。まるで車両規定でもあるかの如く、といった感じなのである。

その一方で対照的な部分も存在する。それはエンジン形式で、メルセデスは2.0リッターの直列4気筒ターボで、そのターボチャージャーが48V駆動の電動タイプとなっている。BMWも48V駆動のMHEVだが、こちらは3.0リッターの直列6気筒ターボとなる。

気持ちの良いサウンドを奏でるX3の直6ツインターボ

381PS/540Nmのアウトプットを誇る直列6気筒ツインターボエンジンに8速ATを組み合わせる。気持ちの良い吹け上がりを楽しめる。
381PS/540Nmのアウトプットを誇る直列6気筒ツインターボエンジンに8速ATを組み合わせる。気持ちの良い吹け上がりを楽しめる。

X3 M50に関しては本誌4月号に筆者が試乗レポートを寄稿しており、その最後は「ベンチマークになりそうな予感」と締めくくられている。実際にデビューしたばかりの新型X3が秘めている、時代に先んじた動的質感に心を打たれたのである。だから今回はX3を物差しにしつつ、GLCの出来をはかるという構図になるのかもしれない。

撮影しながら、その合間で試乗もしつつというプロセスの中で2台を頻繁に乗り換えることになったのだが、第一印象はいつも通りだった。乾いたタッチのBMWに対し、しっとりとした重さを感じさせてくるメルセデス。それは周波数の違いというより、FMとAMのようなそもそもの電波の違いのようなものだろう。

これまでは優劣というより、個性の違いとして認識してきたドイツを代表する2ブランドの動的質感だが、今回は出だしから差が付いた気がした。まず気になったのはGLC 43の乗り心地の部分。タイヤから突き上げるように入る入力を巌のようなボディが必死に受け止めているが、それでも快適とはいえない。

操作系すら軽快なX3 M50 xドライブ

パワフルなV8エンジンを搭載していた時代のC 63にはGLC 43よりも硬いモデルがあったし、こういったセッティングが好きという人が一定以上いることも理解している。だが今回のように相対的な目で見た場合には優れているとは言えない。

しばらくGLC 43を試乗しつつ、ステアリングに付いているダイナミックセレクトのダイヤルを回し、コンフォート、スポーツ、スポーツ+と変えてみた。するとダンパーはちゃんと可変していることがわかり、怪しいのはタイヤでは、という気がしてきた。ちなみに標準装着のタイヤはブリヂストン・ポテンザスポーツで、スクエアなショルダーにより目いっぱい踏ん張ろうとしている。

一方GLC 43のパワートレインは電動ターボの効果で低回転から滑らかに過給がはじまり、高回転まで淀みなくパワーが増幅していくような性格。だがそんなパワー特性に対し、シャシーの側はもっとゆっくりと姿勢を変化させたい感じがして、両者のマナーには少し乖離があるように感じた。AMGブランドとしての刺激を前面に押し出した結果かもしれないが、個人的にはそのアプローチに懐かしさを感じてしまった。

AMGらしいやや硬めの足まわり

X3の最大のライバルとなるのがメルセデスAMG GLC43だ。全幅と車重はX3と同じスペックである。実に興味深い事実だ。
X3の最大のライバルとなるのがメルセデスAMG GLC43だ。全幅と車重はX3と同じスペックである。実に興味深い事実だ。

今回がGLC 43単体の試乗であれば、こんな印象は抱かなかっただろう。それはこれまでもよくあったAMGらしい味付けなのだから。だがX3 M50の新しさに触れてしまうと、ライバルの動的質感が懐かしいものに見えてしまう。

ではいま一度、X3 M50の「新しさ」について考えてみたい。振動の類が極端に少なく、シュンッと回る直6ターボエンジンはもちろんその中核にいる。AMGのそれより低回転で太いトルクを感じさせてくれるだけでなく、今どき珍しくアイコニックサウンドを切っていても6気筒ならではの高音が聞こえてくる。

低速からトルキーなGLC 43の直4ターボ

421PS/500Nmを発生する2.0リッター直列4気筒ツインターボエンジンに9速ATを組み合わせる。低速からトルキーな特性を持つ。
421PS/500Nmを発生する2.0リッター直列4気筒ツインターボエンジンに9速ATを組み合わせる。低速からトルキーな特性を持つ。

またオートマティックトランスミッションはBMWといえば、のZF8HPなのだが、モーターのサポートもあって変速の瞬間に不思議なくらいパワーが途切れないのである。

シャシー側の新しさは「軽さ」と言い換えてもいいかもしれない。同じ車重でもメルセデスは重厚感を感じさせ、対するBMWは軽快さが際立っている。操作系ではステアリングが軽めなのだが、だからといってふらつくようなことはなかった。ステアリングの中立付近がスローな感じもするし、フィードバックが濃いので自然と丁寧なステアリングワークになるということもある。またタイヤもショルダーが丸い感じで路面のタッチが優しく、ワダチを拾うこともないのである。

プレミアム感漂うAMGのインテリア

X3 M50をドライブしていて感じた唯一の弱点は、低速で走っていると、「軽快」な感じが「軽々しく」感じられてしまう部分かもしれない。その点GLC 43はいかなる速度であっても、中身が詰まったような、いかにもメルセデスらしいいいモノ感に溢れているのである。

ちなみに直6対直4と聞くと6気筒エンジンの方が大きく鼻先が重たいという先入観があるはず。ところが車検証を見るとX3 M50の方が前軸重が30kgも軽く仕上がっていたことは特筆すべきだろう。

対照的な個性の2台

軽快さのBMW、重厚感のAMG。乗れば乗るほど、両車のキャラクターの違いは鮮明になっていった。
軽快さのBMW、重厚感のAMG。乗れば乗るほど、両車のキャラクターの違いは鮮明になっていった。

2台を乗り比べたことで、筆者のX3 M50に対する評価は絶対的なものになった。対するGLC 43は1サイズ細くてしなやかなタイヤを履けば「整う」ようにも思うが、それではAMGブランドらしさ、意義がなくなってしまう? 小手先ではどうすることもできない違いが、2つのブランドには存在しているのだ。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/佐藤亮太(Ryota SATO)
MAGAZINE/GENROQ 2025年6月号

SPECIFICATIONS

BMW X3 M50 xドライブ

ボディサイズ:全長4755 全幅1920 全高1660mm
ホイールベース:2865mm
車両重量:2000kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCターボ
総排気量:2997cc
最高出力:280kW(381PS)/5500rpm
最大トルク:540Nm(55.1kgm)/1900-4800rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/45R20 後285/40R20
車両本体価格:998万円

メルセデスAMG GLC 43 4マティック

ボディサイズ:全長4750 全幅1920 全高1640mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:2000kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1991cc
最高出力:310kW(421PS)/6750rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/5000rpmm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/45ZR20 後295/40ZR20
車両本体価格:1170万円

【問い合わせ】

BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

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著者プロフィール

吉田拓生 近影

吉田拓生

1972年生まれ。趣味系自動車雑誌の編集部に12年在籍し、モータリングライターとして独立。戦前のヴィンテ…