デジタル時代の今こそ新鮮!改良新型「モーガン プラスフォー」に乗ってみた

「新車で買えるクラシックカー」マイナーチェンジしたモーガン プラスフォーに試乗

1930年代から変わらない走りとスタイリングが魅力のモーガン。その主力モデルがマイナーチェンジした。
1930年代から変わらない走りとスタイリングが魅力のモーガン。その主力モデルがマイナーチェンジした。
モーガンといえば1930年代から変わらない走りとスタイリングで語られることが多い。だが、昨年マイナーチェンジした「プラスフォー」は、そのエクステリアを大胆にモダナイズ。走りもアップデートさせてきたという。早速その実像に迫ってみよう。(GENROQ 2025年6月号より転載・再構成)

Morgan Plus Four

デザインの小変更はおよそ70年ぶり

マイナーチェンジに際しサイドウインドウの装着性やフィット感を向上。さらにリヤウインドウも大型化して後方視界を拡大させている。
マイナーチェンジに際しサイドウインドウの装着性やフィット感を向上。さらにリヤウインドウも大型化して後方視界を拡大させている。

ドライバーズ・シートに座って上半身が晒されるクルマはいくつか思い浮かぶけど、今どきオプションとはいえ新型車でワイヤーホイールを履いたクルマなんてこれくらいしかないかもしれない。モーガン・プラスフォーに乗って最初に思ったのは、そんなことだった。

確かに独立した前後フェンダー、ウイング状に開くボンネットフード、ラウンドしたラジエーターグリル、フラットなフロントウインドウ、そして足の長いメッキのドアミラーなど、モーガン・プラスフォーの見た目は万人が抱く「クラシックカー」の姿そのものだ。

それもそのはず、プラスフォーのスタイリングは、モーガン・モーター・カンパニーが3輪スポーツカーメーカーからの脱却を目指して1936年に発表した4/4(その名は4輪、4気筒に由来する!)から基本的に変わっていない。より詳しくいうと、4/4のハイパワー版として1950年に発表された初代プラス4の1954年モデル(ここでラジエーターグリルが直立したフラットタイプから今のラウンドタイプに変わる)をほぼそのままの形で踏襲しているのだ。

ただの“生ける化石”じゃない

コクピットは極めてシンプル。ドライバーの目の前には燃料系と水温系、その間の液晶部分には様々な情報が表示される。スピードメーターは中央左、タコメーターは中央右に。6速MTのほか8速ATも用意される。
コクピットは極めてシンプル。ドライバーの目の前には燃料系と水温系、その間の液晶部分には様々な情報が表示される。スピードメーターは中央左、タコメーターは中央右に。6速MTのほか8速ATも用意される。

とはいえ、モーガン・プラスフォーを「生ける化石」と評するのは半分正しく、半分正しくない。

ご存知のとおり、モーガンは2018年モデルをもって、誕生以来守り続けてきたスチール製ラダーフレームシャシーにフロント・スライディングピラー、リヤ・リーフリジッドのサスペンションという基本骨格に別れを告げ、2019年発表のプラス6から「CXジェネレーション・プラットフォーム」と名付けられた接着式のアルミ製バスタブ・モノコックシャシーを採用。それに伴い前後サスペンションもダブルウィッシュボーンに変わっている。

一方のボディは先代に比べ、スペック上では全長で180mm短く、全幅で70mm狭くなっているが、これは前後オーバーライダーの有無など、ディテールの違いによるものでサイズ感はほぼ同じ。しかしながら前後トレッドは1290/1440mmから前後とも1492mmに拡大され、ホイールベースも30mm長い2520mmとなっている。

車検証で確認すると、その車両重量は1060kgと先代よりは若干重くなっているものの、前軸重520kg、後軸重540kgとほぼ50対50の前後重量配分を実現。またCXジェネレーション・プラットフォームの単体重量は97kgで、捻り剛性は2012年登場のプラス8に使われていたモノコックシャシーに比べ100%の向上を果たしているという。

ちなみにオープントップのボディ自体は、従来通りアッシュ材(トネリコ)のフレームにアルミパネルを貼り付けたものだ。「木で出来たフレーム」と聞くと不安に思う方がいるかもしれないが、繊維がクロスするように圧着された合板は加工しやすく、衝撃にも強い強固なコンボジット(複合)素材。しかも新型プラスフォー&シックスから18mm厚みが増したことで、より高い剛性を得ているのだ。

動的質感は十分に現代レベル

エンジンはかつてBMW 330iなどに搭載されていた2.0リッター4気筒ターボの高出力版。そのスペックは258PS/5500rpm、350Nm/1000~5500rpmというものだが、プラスフォーのシャシーはこのパワーをしっかりと受け止める。
エンジンはかつてBMW 330iなどに搭載されていた2.0リッター4気筒ターボの高出力版。そのスペックは258PS/5500rpm、350Nm/1000~5500rpmというもの。

ノーズに収まるエンジンは、3シリーズと同じBMW製の1998cc直列4気筒DOHCターボ。その最高出力は258PSで、最大トルクは試乗した6速MT仕様で350Nm、8速AT仕様で400Nmとなっており、最高速度は240km/h、0-100km/h加速は5.2秒と、見た目にはよらない(失礼)パフォーマンスを誇る。

実際にドライブしてみると、結構な踏力を要するクラッチペダルに少々面食らうが、それ以外で操作に特に気を遣うようなことはない。BMWのエンジンもリミットの6000rpmまで鋭く吹け上がる一方で、1000rpmからピークトルクを発生するフレキシブルなエンジン特性もあって、ワインディングでも3速ホールドで事足りてしまうほど扱いやすい。

もうひとつ驚いたのは、非常にシャシーのスタビリティが高く乗り心地がいいことだった。実はプラスフォーは2024年モデルでマイナーチェンジを受けており、プロジェクター・ヘッドライト、新形状の前後フェンダー、テールライト、バックミラーといった意匠のほかに、スプリングレートやダンパーなどが改良されたサスペンションが奢られているのである。

その効果をまず感じられるのが直進安定性で、高速道路を120km/hで巡航していても、スライディングピラー時代のように目地段差での「横っ飛び」を警戒してステアリングを常に握りしめている必要はない。またエアロダイナミクス的にも洗練されているらしく、フロントが浮き気味になることもなかった。

構えずに楽しめるクラシック

これまで別体だったヘッドライトとウインカーは、統合されてオリジナルデザインとなるひとつのコンビネーションライトに集約。サイドミラーも新デザインで、上部には「MORGAN」のロゴが入る。
2.0リッター4気筒ターボの258PS/350Nmを、プラスフォーのシャシーはしっかりと受け止める。

そんなプラスフォーが真価を発揮するのは、やはりワインディングロードだ。ロック・トゥ・ロック2.8回転と過敏すぎないステアリングレシオと、適度な重みを伴う電動パワステ、程よいグリップ感と抜け感が好ましいエイヴォンZV1タイヤとのバランスもよく、弱アンダーを維持し続けるので、スロットルワークで積極的に曲げていく「クラシック」な操り方が良く似合う。

また2023年モデルから、ABSに加えてついにESCも装備されたので、いざという時のリスクがいくぶんか軽減されているのも朗報といえるだろう。

誤解を恐れずにいえば、モーガン・プラスフォーは「スパルタンさこそ8掛けだけれど、エアコンなどの快適装備と、必要にして十分な耐候性、そして上質さと乗り心地の良さを加味した大人のためのケータハム・セブン」であると思う。

それはまた、プラスフォーがモーガンらしいダイレクト感と手応えを残しつつも、新しいシャシーとパワートレイン、そしてより熟成されたサスペンションを得て、昔とは比較にならないほど洗練されたスポーツカーへと、誕生から75年が経った今も成長を続けている証でもある。

モーガンといえば1930年代から変わらない走りとスタイリングで語られることが多い。だが、昨年マイナーチェンジした「プラスフォー」は、そのエクステリアを大胆にモダナイズ。走りもアップデートさせてきたという。早速その実像に迫ってみよう。
ストップランプとウインカーを一体化、モデルバッジもシンプルなデザインに。リヤビューはよりすっきりとした。

REPORT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
PHOTO/神村 聖(Satoshi KAMIMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2025年6月号

SPECIFICATIONS

モーガン・プラスフォー

ボディサイズ:全長3830 全幅1650 全高1250mm
ホイールベース:2520mm
車両重量:1013kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1998cc
最高出力:190kW(258PS)/5500rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1000-5500rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後205/60R15
最高速度:240km/h
0-100km/h加速:5.2秒
車両本体価格:1668万7000円

【問い合わせ】
モーガン・カーズ・ジャパン エスシーアイ
https//www.morgan-cars.jp

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クルマに関しては、ヒストリックカー、海外プレミアム・ブランド、そしてモータースポーツ(特に戦後から1…