待望のクラウンのラストピース「トヨタ クラウン エステート」試乗記

「クラウン買うならこれ一択?」しっとりとした乗り味と衝撃のラゲッジルーム「トヨタ クラウン エステート」に試乗

クラウンシリーズ、最後のピースを埋める重要なモデル「エステート」がついに登場した。考え抜かれた究極の使いやすさを求めたラゲッジスペースや、クラウンならではの大人の乗り味も魅力の1台に仕上がっていた。
クラウンシリーズ、最後のピースを埋める重要なモデル「エステート」がついに登場した。考え抜かれた究極の使いやすさを求めたラゲッジスペースや、クラウンならではの大人の乗り味も魅力の1台に仕上がっていた。
16代目となる「トヨタ クラウン」の最後のピースとなる「エステート」がついに加わった。クラウン群の4番目のモデルとなるエステートは徹底した荷室の使い勝手やコンフォートな走りに拘っている。仲間や家族と過ごすアクティブライフにうってつけのモデルに仕上がっていた。(GENROQ 2025年6月号より転載・再構成)

Toyota Crown Estate

PHVとハイブリッドをラインナップ

クラウンシリーズ、のラストピースを埋める「エステート」。しなやかな乗り心地や考え抜かれたラゲッジスペース。ヒット作になる予感に満ちている。
クラウンシリーズ、のラストピースを埋める「エステート」。しなやかな乗り心地や考え抜かれたラゲッジスペース。ヒット作になる予感に満ちている。

16代目となる新型「クラウン」が4車種のシリーズになることが発表されたのは2022年7月。同年9月に第1弾となる「クロスオーバー」が登場して、2023年10月には「スポーツ」、同11月に「セダン」が続いて、最後の「エステート」も2023年度内に発売とされていた。ところが、その年度末ギリギリの2024年2月に「さらなる車両のつくり込み」を理由に発売延期を発表……したと思ったら、そこに例の認証不正問題に端を発する認証作業の一時休止も重なってしまった。

で、そのクラウンエステートがついに発売されたのがこの3月。振り返れば、その姿が初公開されてから2年7ヵ月が経過している。実は今回取材したメディア試乗会には、エステート以外のクラウンも集結していて、発売から2年半のクロスオーバーもあった。せっかくなのでクロスオーバーも試乗してみたが、その最新型には一部エステートに準じた改良が施されているそうで、走りは確実に進化していた。

89kmのEV充電走行距離を実現

2.5リッターエンジンにモーターを組み合わせたPHVモデルはEV走行距離89kmを実現。日常生活において十分な走行距離だ。
2.5リッターエンジンにモーターを組み合わせたPHVモデルはEV走行距離89kmを実現。日常生活において十分な走行距離だ。

閑話休題。このページの主題であるクラウンエステートは、同じクラウンのクロスオーバーやスポーツと共通のエンジン横置きのGA-Kプラットフォーム(セダンのみ後輪駆動のGA-Lプラットフォーム)を土台として、2.5リッターハイブリッド車(HEV)と同プラグインハイブリッド車(PHV)を用意する。

ボディはハッチバック形式で、4930mmという全長はクロスオーバーと並んでクラウンで2番目に長く、トヨタでは「レクサス RX」より大きい。1620mmという全高は、上級SUVとしては大きくはないが、クラウンでは最も背が高い。さらに、635万〜810万円という価格帯もクラウンではセダンに次ぐ。つまり、クラウンエステートは、センチュリーSUVや独立フレーム構造のランクル系を別格とすれば、トヨタブランドで国内最大にして最上級のクロスオーバーSUVになるわけだ。

成人男性も縦に寝転べるラゲッジルーム

このクルマの特徴は、エステートという名称どおり、ラゲッジスペースである。大きなボディサイズに加えて、SUVとしては長めのリヤオーバーハングもあって、荷室前後長は5名フル乗車でも1070mm。国産クロスオーバーSUVでは「マツダ CX-80」に次ぐ数字だ。さらに倒したリヤシートとフロントシートバックのすき間を埋める延長ボードを標準装備することで、最大荷室前後長は2m。寝かせれば29インチサイズのマウンテンバイクも放り込めるサイズで、大柄な成人男性もゆうゆうと縦に寝転ぶこともできる。

そんな荷室のポテンシャルを最大限に生かすべく、荷室内部に毛足が細い専用カーペットを張り巡らせるほか、英国の某ハイエンドSUVを思わせるデッキチェアと同テーブルも用意。それをどう思うかは人それぞれだが、いろいろと想像力を掻き立てられることは間違いない。

4車種あるクラウンのうち、セダンを除く3種のSUVモデルは基本ハードウェアやインテリアデザインを共有しながら、それぞれのキャラクターに合わせた独自の乗り味に仕立てられている。エステートはセダンに近い柔らかな肌ざわりを狙っているという。それは中高年がイメージする伝統的クラウンに近い味わい……と言い換えてもいい。

後席の乗り心地にも最大限の配慮

実際に走らせてみると、路面のひび割れやうねりをフワリと吸収する、潤いある路面感覚に思わず笑みがこぼれる。それは特に電子制御可変ダンパーを備えるPHVに顕著だ。

とはいえ、本当の昔のクラウンのように上屋が大げさに動くことはなく、安定したフラット姿勢をキープするのはいかにも最新のクルマらしい。GA-Kならではの低重心に加えて、前出の電子制御連続可変ダンパーや、高速で同位相となる後輪操舵などの最新ダイナミクス技術のおかげだろう。今回の試乗会は箱根を拠点にしながら、あえて高速道路を含めた試乗ルートが設定されていて意外に思ったのだが、走ってみると、これも納得。山道から高速まで、柔らかな肌ざわりとフラット感がうまくキープされるのには感心した。

同じクラウンでも、クラウンスポーツは欧州スポーツカーブランドのSUVを思わせる鋭い走りを身上とする。それはそれで悪くないが、筆者のような中高年にとっては、クラウンという名前に、最もしっくり共感をおぼえるのは、FRレイアウトを受け継ぐセダンに加えて、SUV系ではこのエステートだと思う。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2025年6月号

SPECIFICATIONS

トヨタ クラウンエステートRS


ボディサイズ:全長4930 全幅1880 全高1625mm
ホイールベース:2850mm
エンジン:直列4気筒DOHC
総排気量:2487cc
最高出力:130kW(177PS)/6000rpm
最大トルク:219Nm(22.3kgm)/3600rpm
フロントモーター最高出力:134kW(182PS)
フロントモーター最大トルク:270Nm(27.5kgm)
リヤモーター最高出力:40kW(54PS)
リヤモーター最大トルク:121Nm(12.3kgm)
トランスミッション:電気式無段変速機
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後235/45R21
車両本体価格:810万円

【問い合わせ】
トヨタ自動車お客様相談センター
TEL 0800-700-7700
https://toyota.jp

全長5mを超えるボディは重厚感たっぷりだ。

「シリーズ別格の上質な走り!」新時代高級車の予感「トヨタ クラウン・セダン」【2024年個人的に感動した名車】

『GENROQ』を作っていると、日本車に乗る機会が少ないので、たまに日本車を試乗する機会があると嬉しくてたまりません。そんな数少ない日本車と触れる機会に、いいクルマに出会うとさらに嬉しいのです。そんな1台が「クラウン・セダン」。シリーズの中でも一番人気がないようですが、その中身は素晴らしいです。

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