ポルシェによるワンメイクレース「ポルシェカレラカップ」とは?

「ポルシェ 911」によるワンメイクレース「カレラカップ」の魅力を解説「アマチュアレーサーが憧れる理由」

“世界最速のワンメイクレース”とも呼ばれる「ポルシェカレラカップ」。実は国内A級ライセンスがあればプロアマ問わず参戦が可能だ。憧れの“カレラカップパイロット”を目指してみてはいかがだろう。
2025年は富士スピードウエイや鈴鹿サーキットなどで全11戦が開催される。
“世界最速のワンメイクレース”とも呼ばれる「ポルシェカレラカップ」。実は国内A級ライセンスがあればプロアマ問わず参戦が可能だ。憧れの“カレラカップパイロット”を目指してみてはいかがだろう。(GENROQ 2025年6月号より転載・再構成)

Porsche Carrera Cup

911GT3カップカーによって行われるワンメイクレース

【プロクラス(Pro)】2025 Drivers:7 卜部和久、60 伊東黎明、78 木村偉織、91 佐藤 樹、99 渡会太一
イコールコンディションで争われるカレラカップ

“レースは走る実験室”という言葉がある。自動車メーカーがレースの現場で開発した技術を市販車へとフィードバックしていくことを意味するものだ。そうした中で、顧客に自社のレースカーを販売し、シリーズ戦を運営することでビジネスとして成立させる、いわゆるカスタマーレーシングという仕組みをいちはやく構築したのがポルシェだ。そして、この仕組みをもってプロドライバーではないが、その腕は勝るとも劣らないアマチュアドライバー=ジェントルマンドライバーたちを世に送り出している。ちなみにポルシェはカレラカップに参戦しているチャレンジ精神あるドライバーたちのことを敬意を込めて“カレラカップパイロット”と呼んでいる。

1990年、「ポルシェカレラカップ」はドイツ本国で当時の「ポルシェ 911」(タイプ964)のワンメイクレースとして始まった。マシンは964、993の時代は「カレラ RS」をベースとしたが、エンジンが空冷から水冷へと切り変わった996以降は「GT3」をベースとしたレース専用車両、通称“カップカー”が使用されている。

1993年には欧州で開催されるF1グランプリのサポートレースとして「ポルシェスーパーカップ」がスタート。現在も欧州8ヵ国でF1のサポートレースとして開催されており、ポルシェ911を使ったワンメイクレースは世界的に注目を浴びるようになる。

日本では2001年にスタート

【プロアマクラス(ProAm)】2025 Drivers:9 武井真司、10 MOTOKI、66 BANKCY、77 浜崎 大、88 Tiger Wu、98 IKARI
今年で25周年を迎えるカレラカップジャパン。ステップアップカテゴリーのレースも開催されている。

日本においてカレラカップが始まったのは2001年のこと。タイプ996の時代にポルシェカレラカップジャパン(PCCJ)としてスタート。2006年からタイプ997、2014年からタイプ991、そして2022年からは現行型のタイプ992をベースとしたカップカーでレースは継続されており、今年で25周年を迎えている。また2019年からは、カレラカップへのステップアップカテゴリーとして、型落ちとなったカップカーやケイマンGT4などを使って参戦可能なポルシェスプリントチャレンジジャパンがスタートしている。レース未経験でいきなりカレラカップへの参戦はハードルが高いという人などが、腕を磨くのにも適したカテゴリーだ。

現在のPCCJはスポットエントリーであれば、国内A級ライセンス所持者ならプロアマ問わず国際格式以外の大会に参戦が可能。「プロクラス」、「プロアマクラス」、「アマクラス」の3クラスに区分され、シリーズエントリードライバーはクラス毎の獲得ポイントでシリーズランキングが決定する。プロクラスにはプロドライバーをはじめ、ポルシェジャパンのスカラシッププログラムであるポルシェジャパンジュニアドライバーが参加するなど、毎戦ワンメイクレースならではの実力伯仲の激戦がみられる。これまでシリーズチャンピオンを獲得した選手の中には現在、トヨタからWECに参戦し、ハースF1のリザーブドライバーも務める平川亮選手をはじめ、スーパーGTで活躍しているドライバーもおり、ステップアップへの重要な意味をもつ。またプロアマおよびアマクラスの選手にとっては、プロの選手と混走できる、運転技術やレースでのかけひきを磨くのにこれ以上ない機会といえる。

海外への挑戦もサポート

【2025シーズンはF1日本GPの前座レースとして開幕】今シーズンのPCCJ開幕戦は、4月のF1日本GPのサポートレースとして土曜日に第1戦、日曜に第2戦というダブルヘッダー形式で開催された。第1戦はプロクラスの#7 卜部和久選手が初優勝。第2戦は#78 木村偉織選手が初優勝を遂げた。F1で使用する表彰台に上れるうれしい演出も。
【2025シーズンはF1日本GPの前座レースとして開幕】今シーズンのPCCJ開幕戦は、4月のF1日本GPのサポートレースとして土曜日に第1戦、日曜に第2戦というダブルヘッダー形式で開催された。第1戦はプロクラスの#7 卜部和久選手が初優勝。第2戦は#78 木村偉織選手が初優勝を遂げた。F1で使用する表彰台に上れるうれしい演出も。

カレラカップに参戦しているジェントルマンドライバーの多くは、優秀なビジネスマンだ。ウィークデーは朝から晩まで仕事をこなし、空き時間で練習をし、週末にはレースをする。その情熱、タフネスぶりは並々ならぬものだ。そうした人たちと時間を共有することも、何物にも代えがたい経験となるはずだ。また、もし海外のカレラカップシリーズへの挑戦を望むドライバーには、そのためのバックアップ体制が用意されている。ポルシェカレラカップほど世界規模で行われているワンメイクレースは他になく、名実ともにアマチュアでも戦える最高峰のレースのひとつなのだ。

“世界最速のワンメイクレース”とも呼ばれる「ポルシェカレラカップ」。実は国内A級ライセンスがあればプロアマ問わず参戦が可能だ。憧れの“カレラカップパイロット”を目指してみてはいかがだろう。
“世界最速のワンメイクレース”とも呼ばれる「ポルシェカレラカップ」。実は国内A級ライセンスがあればプロアマ問わず参戦が可能だ。憧れの“カレラカップパイロット”を目指してみてはいかがだろう。
【世界で戦える人材を育成スカラシッププログラム】ポルシェジャパンでは、若手ドライバー育成のため 2009年からスカラシッププログラムを実施。毎年1名のジュニアドライバーを選抜し、プロクラスへの参戦権を与えている。今年は2022年にJAF-F4選手権でシリーズチャンピオンを獲得している佐藤樹選手を選出。その活躍に注目だ。
ポルシェジャパンでは、若手ドライバー育成のため 2009年からスカラシッププログラムを実施。毎年1名のジュニアドライバーを選抜し、プロクラスへの参戦権を与えている。今年は2022年にJAF-F4選手権でシリーズチャンピオンを獲得している佐藤樹選手を選出。その活躍に注目だ。

Entry

プロクラス(Pro)

ゼッケン:白
プロクラスへのエントリーは、プロレーシングドライバーとしての活動経験を有するドライバー、または同等の経歴を有するとPCCJ委員会が判断したドライバー。プロクラスは、プロクラス個別の順位に応じたレース毎の賞典及びシリーズ賞典の設定はない。

プロアマクラス(ProAm)

ゼッケン:イエロー
プロアマクラスへのエントリーは、下記の条件をすべて満たしていなければならない。
(1)現在過去を問わずプロレーシングドライバーとしての活動経歴がない。
(2)PCCJ委員会がプロアマクラスエントリーを認めたまたは当該クラス相当の経歴と判断した。

アマクラス(Am)

ゼッケン:オレンジ
アマクラスへのエントリーは、下記の条件をすべて満たしていなければならない。
(1)現在過去を問わずプロレーシングドライバーとしての活動経歴がない。
(2)PCCJ委員会がアマクラスエントリーを認めたまたは当該クラス相当の経歴(※)と判断した。

(※)アマクラス相当とする主な経歴
(1)2022~2024年のうちPCCJシリーズへの参加経験がある場合:当該の1シーズン中に獲得したオーバーオール(総合順位)ポイントの平均値(合計オーバーオールポイント÷完走レース数)が8ポイント(小数点以下 四捨五入)未満である。2022~2024年までに複数年参戦経験がある場合は、いずれか1シーズンであってもこれを超えていない。
(2)上記(1)以外の場合:2022〜2024年の各シーズン中に参戦したすべてのレースシリーズ及びレース成績が確認できる資料をPCCJ委員会へ提出しなければならない。PCCJ委員会は当該資料や独自の検証によって当該ドライバーのアマクラス登録の可否を決定する権利を有する。

Licence

ドライバー

本年に有効なJAFまたは所属するASN発給の国内競技運転者許可証Aグレード以上および、メディカルサーティフィケートの所持者であり、シリーズエントリーフィーを支払っていなければならない。また、F1日本グランプリサポートレース大会への参加には、国際競技運転者許可証Cグレード以上を所持しなければならない。ポルシェジャパンの従業員およびその関係者の参加は不可とする。

エントラント

本年に有効なJAFまたは所属するASN発給の国内または国際ライセンス所持者であり、参加費用を支払っていなければならない。ただし、F1日本グランプリサポートレース大会への参加には国際ライセンスを所持していなければならない。

年齢規定

18歳以上(本年に有効なJAF国内競技規則 – 競技許可証規定に準拠)

国内以外の参加者のエントリー条件

JAF以外のASNより発給された本年及び本シリーズに有効なライセンスを所持するエントラント及びドライバーは、本シリーズへ参加申請を行う権利を有し、参加した場合は本規則で定められたポイントを獲得する権利を有する。すべての大会において、外国のエントラント/ドライバーは、自身が所属するASNへの申請によって発行された「海外レース出場証明書」を提出しなければならない。

Regulations

参加車両

ポルシェ 911 GT3 Cup(Type992)。PCCJ委員会の認定車両。厳格にイコールコンディションを保つため、エンジン・トランスミッション・ショックアブソーバーは封印され、一切の改造・変更が認められていない。

Annual cost

MY2025 Porsche 911 GT3 Cup (Type 992)
車両本体価格:3702万500円(税込)
2025年シリーズエントリーフィー:495万円(税込)
その他、メンテナンス費+タイヤ代等

2025 Porsche Carrera Cup Calendar

RoundDateCircuitEvent Name
合同テスト3月18日(火)-19日(水)富士スピードウェイ
第1戦-2戦4月4日(金)-6日(日)鈴鹿サーキットF1 Japanese GP
第3戦-5戦5月24日(土)-25日(日)岡山国際サーキットOkayama Challenge Cup
第6戦-7戦7月19日(土)-20日(日)富士スピードウェイSuper Formula
第8戦-9戦8月9日(土)-10日(日)スポーツランド菅生Super Formula
第10戦-11戦9月26日(金)-27日(土)富士スピードウェイWEC世界耐久選手権

REPORT/藤野太一(Taichi FUJINO)
PHOTO/PORSCHE JAPAN
MAGAZINE/GENROQ 2025年6月号

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藤野太一