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Z4 M Roadster/Coupe
スタンダードモデルと変わらない外観



そもそもは「Z3」の上位車種として企画され、2002年のパリ・ショーで実質的な後継車として発表されたE85型「Z4 ロードスター」。ロングノーズ&ショートデッキの個性的なボディデザインを手掛けたのは、BMWのチーフデザイナーを務めていたクリス・バングルである。
その後2006年に「Z4」は初のマイナーチェンジを実施。この際、ボディ剛性の高い2シーターファストバッククーペの「Z4 クーペ」と同時にラインナップに追加されたのが、BMW M社によるハイパフォーマンスバージョンの「Z4 Mロードスター」「Z4 Mクーペ」である。
先代の「Mロードスター」「Mクーペ」はマッチョなブリスターフェンダー、エアダムなど派手なエクステリアを纏っていたが、Z4 Mロードスター/Z4Mクーペのエクステリアは実に控えめ。ボンネットフードのリブ、リヤの4本出しマフラー以外は、ほぼスタンダードモデルと変わっていない。
高いスポーツカーとしてのポテンシャル


一方、ノーズに収まるエンジンは、E46型「M3」の3.2リッター直列6気筒DOHC“S54”ユニットを採用。その最高出力は343PS/7900rpm、最大トルクは365Nm/4500rpmとスペック自体はM3と変わらないが、ロードスターで1450kg、クーペで1465kgとM3に比べて車両重量が100kg近く軽いうえに前面投影面積が小さいことも影響して、0-100km/h加速は4.8秒とM3より0.4秒も向上している(最高速度はリミッターにより250km/hに制限されている)。
それに合わせてシャシーの各部に補強が加えられているほか、フロントトレッドの拡大、フロントサスペンションの改良、ランフラット非対応のワイドタイヤ(フロント225/45、リア255/40)の採用、ステアリングジオメトリーの変更など、さまざまな改良が施されている。
またステアリング・アシストがスタンダードの電動式ではなく、オーソドックスな油圧式とされているほか、ステアリングギヤボックスもロードスターにはM3用、クーペにはよりレシオの高いM3 CS/CSL用を採用。さらにドリルド・ベントレーテッド・ディスクブレーキとリヤアクスルもM3 CS/CSLのものを流用。さらにギヤボックスは2ペダルセミATのSMGではなく6速MTのみの設定となるなど、ドライバビリティを優先した硬派な成り立ちになっているのも特徴といえた。
このように見た目以上の大きな改良が施されていたZ4 Mロードスター/Z4 Mクーペは、スポーツカーとしてのポテンシャルも高く、ポルシェ ケイマンSの強力なライバルとして好評を得た。
世界中のレースで勝利

またBMW M社では、レースモデルとして394PSへとチューンした3.2リッター直6ユニットを搭載した「Z4 Mクーペ モータースポーツ」を開発して販売。
ワークス活動は行わなかったものの、2006年、2007年のシルバーストーン・ブリットカー24時間レースで2連覇を飾ったのをはじめ、2007〜2009年ニュルブルクリンク24時間SP6クラス優勝。日本でも2008年スーパー耐久シリーズでチャンピオンを獲得するなど、世界中のレースで勝利を収めることとなった。
結局、E89型となった新型Z4登場にともない、わずか3年ほどのモデルライフに終わったZ4 Mロードスター/Z4 Mクーペであったが、2008年までにロードスターが5070台、クーペが4275台生産されている。