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M3(E90)
大型化でも軽量化を達成

E46時代にはBMW全体の44%の生産台数を記録するなど、文字通りの基幹車種となった「3シリーズ」がE90型へと進化したのは2005年のこと。永島譲二の手によるボディはホイールベースが30mm延長されるなどひと回り大型化し、居住性の向上が図られていた。そして2007年3月のジュネーブ・ショーでBMW M社は2ドアクーペのE92型をベースとした「M3コンセプト」を発表。4月から「M3」として発売する。
E46型M3と同様に前後ブリスターフェンダー、大型エアインテークを備えたフロントバンパー、ディフューザー付きリヤバンパー、サイドスカート、リヤスポイラーなどで武装したボディは全長4620mm、全幅1805mm、全高1425mmとスタンダードモデルに対してさらに大型化。それにあわせて前後トレッドもそれぞれ1540mmに拡大されている。
その一方でカーボンファイバー製ルーフを採用することで低重心化と軽量化を達成。その車両重量は大型化したにもかかわらず1580kgに抑えられていた。
唯一のV8を搭載したM3


フロントに縦置きされるエンジンはE46型「M3 GTR」譲りの4.0リッターV型8気筒DOHC“S65B40”型ユニット。量産型M3としては現時点で唯一のV8でもあるS65B40のエンジンブロックは、ザウバーBMW F1用V10やM5/M6用のV10と同じランツフートのBMW軽合金鋳物工場で製造されたもので、特殊なアルミシリコン合金製クランクケース、ベッドブレート構造を採用。単体重量202kgと軽量なうえ、高いねじり剛性を実現していた。
加えてダブルVANOS可変バルブタイミングシステム、各気筒独立の8連スロットル、シーメンスMSS60制御システムなどを備え、最高出力420PS/8300rpm、最大トルク400Nm/3900rpmを発生した。
発売当初のギヤボックスは6速MTのみの設定で0-100km/h加速4.8秒を記録。2008年からはBMW初のデュアルクラッチ2ペダルMTとなるゲトラグ製7速M-DCTも用意されるようになり、0-100km/h加速4.6秒を記録した。
4ドアやコンバーチブルも


そして2007年の東京モーターショーではE36型以来となる4ドアセダン(E90型)が登場。その中身は基本的にクーペに準じるが、ルーフパネルはスチールのままとなり、その車両重量は1605kgとなっている。
さらに2008年には2ドアコンバーチブル(E93型)もラインナップに加わった(日本市場には未導入)が、ソフトトップのE46型とは異なり電動ハードトップを採用したため、車両重量は1810kgに増加していた。
また2009年11月には、E92型M3をベースとしたハイパフォーマンス版の「M3 GTS」を発表。これは444PSにチューンされた4.0リッターV8を搭載したうえで、後部座席の撤去、センターコンソール、ドアパネルの変更、ポリカーボネートウインドウの採用、吸音材の撤去などによる136kgの軽量化を実施。さらにリジッドマウントとしたリヤアクスル、専用のローダウンサスペンション、ダンパー、6ポットキャリパー付き大径フロントディスクブレーキ、専用スポイラーなどを備えたもので、135台限定で2010年からデリバリーされた。
レースイメージの復権

モータースポーツにおいてもBMW M社は積極的にM3で活動。2009年にはカスタマー向けに「M3 GT4」を発売したほか、2010年のニュルブルクリンク24時間レースでは、BMWモータースポーツ/シュニッツァー・モータースポーツの「M3 GT2」が優勝。さらに2011年のセブリング12時間レースでも1-2フィニッシュを飾るなど、世界各地のレースで好成績を収めている。
加えて2012年にDTMのレギュレーションが改定され、2ドアモデルの参加が可能になったのに伴い、約20年ぶりにE92型M3で復帰。10戦中5勝を挙げる活躍でドライバーズ、マニュファクチャラーズのWタイトルを獲得し、「レースのM3」の復活を大いに印象付けることとなった。