メルセデス・ベンツGLCに追加されたお買い得グレードGLC220d 4マティック・コア

“メルセデス・ベンツの稼ぎ頭”GLCに追加されたお買い得グレードGLC 220 d 4マティック コアに試乗

メルセデス・ベンツGLC220d 4マティック クーペ コア
メルセデス・ベンツGLC220d 4マティック クーペ コア
メルセデス・ベンツの人気コンパクトSUV「GLC」に新エントリーグレードが導入された。ディーゼルエンジンを搭載するアフォーダブルなニューモデルの実力を試す。

Mercedes-Benz GLC 220 d 4MATIC Coupe Core

メルセデスの戦略的モデル

メルセデス・ベンツGLC220d 4マティック クーペ コア
メルセデス・ベンツGLC220d 4マティック クーペ コア

ここ数年、クルマの値上がりを感じるのは私だけではないだろう。もちろん背景あるのは円安だ。コロナ禍直前の2020年初頭には1ドル=108円前後だった為替は、その後急激に変動し、2024年には一時160円を突破した。世界的なインフレも、日本においては別の世界線だったが、ここにきてグローバル商品の自動車にも大きく影響し、特に輸入車ブランドの価格は完全に右肩上がりだ。

そんな中、メルセデス・ベンツがGLCおよびGLCクーペの新たな“価格対抗策”として打ち出したのが、今回試乗した新グレード「コア」だ。今やメルセデス・ベンツの屋台骨にまで成長した人気SUVのGLC。その人気ディーゼルエンジン搭載モデルをベースに、価格を抑える工夫を凝らしつつ、本質的な装備と価値はそのままに据え置いた新グレードである。

GLCの中核モデルとして誕生

室内は第3世代MBUXを採用し、12.3インチのデジタルコクピットと、縦型11.9インチのメディアディスプレイを装備。
室内は第3世代MBUXを採用し、12.3インチのデジタルコクピットと、縦型11.9インチのメディアディスプレイを装備。

改めて説明すると、GLCはメルセデスのSUVラインナップの中核を成すモデルだ。初代は2015年に登場、2代目となる現行型は2022年にフルモデルチェンジを受け、翌2023年3月に日本導入を果たしている。2024年には国内最量販SUVのひとつであり、輸入車登録台数ランキングでも常に上位を占める人気モデルである。

現在のGLCのグレードラインナップは、2.0リッター直4ディーゼルターボを搭載する「GLC 220d」、2.0リッター直4ガソリンターボにプラグインハイブリッドシステムを組み合わせた「GLC 350e 4マティック スポーツ」、高出力2.0リッター直4ガソリンターボにマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「GLC 43 4マティック」、同じく高出力2.0リッター直4ガソリンターボにプラグインハイブリッドシステムを組み合わせたフラグシップ「GLC 63 S Eパフォーマンス」の4グレードで、それぞれにクーペ仕様が用意される。

今回そこに追加された“コア”はGLC 220dをベースに、装備の選択肢やボディカラーを限定することでコストを抑えた、いわば「本質だけを残した」エントリーグレードである。たとえば、通常8色のボディカラーは白・黒・銀の3色に絞られ、内装もブラックの合成皮革ARTICOのみ(AMGライン選択時は2色)。パノラミックスライディングルーフとAMGラインパッケージ以外のオプション選択は不可とする代わりに、価格はGLCが819万円、クーペが866万円に設定されており、それぞれベースの220dと比べて57万円と50万円安となる。

“コア”の名は、「コアバリューを守った」という意味から命名されたという。円安による値上げ圧力に対する、メルセデスなりの回答とも言えるだろう。

クーペとSUVで違うサイズ感

今回試乗したのはGLCクーペだった。標準的なSUVスタイルのGLCと比べ、GLCクーペは全長が50mm長く、全幅は30mm広く、全高は35mm低い。フロントマスクが似通っているため気づきにくいが、並べてみると違いは明確だ。とくにワイド&ローなプロポーションは、クーペらしいスポーティな雰囲気を強調している。

室内は第3世代MBUXを採用し、12.3インチのデジタルコクピットと、縦型11.9インチのメディアディスプレイを装備。ARナビゲーションやヘッドアップディスプレイも搭載され、情報表示の視認性も申し分ない。

安全装備も最新だ。アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックをはじめとする運転支援機能や、360度カメラ、デジタルライトまでフル装備。オフロードモードも備え、見えない前方を可視化するトランスペアレント・ボンネットまで用意されている。

エンジンも装備も削っていない

ベースグレードのGLC 220dと同じく最高出力197PS、最大トルク440Nmを発揮する2.0リッター直4ディーゼルターボエンジン。
ベースグレードのGLC 220dと同じく最高出力197PS、最大トルク440Nmを発揮する2.0リッター直4ディーゼルターボエンジン。

搭載されるパワートレインは、ベースグレードのGLC 220dと同じく最高出力197PS、最大トルク440Nmを発揮する2.0リッター直4ディーゼルターボエンジンに、48Vのマイルドハイブリッド(ISG)を組み合わせたものだ。モーター単体でも23PS、205Nmを発揮し、スタート直後の滑らかさや低速域での変速ショック低減に大きく寄与している。

“エントリー”を謳うが、試乗してみても走りの質感はしっかりとGLCそのものだとわかる。低速域での加速は非常にスムーズで、約2tの車体をものともせず軽快だ。ディーゼルらしく巡航時のトルク感も頼もしく、エンジン回転数を抑えた静粛なドライビングが楽しめる。

スポーツカー的な俊敏さを求める人には物足りないが、GLCのディーゼルモデルに求められるのはそうした運動性能ではない。日常から長距離移動まで、余裕ある走りをもたらす“上質な実用車”としての役割を、十分に果たしている。

賢い選択肢としての「コア」

GLCと比べ、GLCクーペは全長が50mm長く、全幅は30mm広く、全高は35mm低い。
GLCと比べ、GLCクーペは全長が50mm長く、全幅は30mm広く、全高は35mm低い。

ステアリングのロック・トゥ・ロックは2.2回転とクイックで駐車場での取り回しも優れている。カタログ燃費は18.2km/L(WLTC)と良好で、直接的なライバルとなるだろうBMW X3のディーゼルモデル(20d xDrive=16.3km/L)を上回る。車両重量は2010kgと決して軽くはないが、それを感じさせない滑らかな加速と乗り心地が得られるのは、さすがメルセデスと言える。

価格を抑えながらも、本質を削らず、むしろ選びやすく仕上げられた「コア」。GLCあるいはGLCクーペを検討するなら、この新たな選択肢を候補に入れない理由はない。

PHOTO/平野陽(Akio HIRANO)、メルセデス・ベンツ日本

SPECIFICATIONS

メルセデス・ベンツGLC220d 4マティック クーペ コア

ボディサイズ:全長4770×全幅1920×全高1605mm
ホイールベース:2890mm
車両重量:2010kg
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:1992cc
最高出力:145kW(197PS)/3600rpm
最大トルク:440Nm(44.9kgm)/1800〜2800rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/45R20 後285/40R20
パフォーマンス 0→100km/h加速:8.1秒
最高速度:225km/h
車両本体価格:866万円

価格均衡崩壊!「メルセデス・ベンツ GLC 220d Core」の実質的な値下げに「BMW X3」はどうする?

ライバル関係にある「メルセデス・ベンツ GLC」と「BMW X3」はスペックや価格もよく似ている。しかし2025年3月に登場したGLCの新たなエントリーグレード「Core」の安さはこれまでの価格均衡を崩壊させかねない。同じディーゼルエンジンの「GLC 220d 4MATIC Core」と「X3 20d xDrive」と比較していこう。

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著者プロフィール

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka) 近影

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka)

大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わりたいと、1999年に…