電気で走るコンパクトSUV、EQAは“等身大のEV”

メルセデス・ベンツ EQAはGLAみたいに使える実用EV! 兄弟車のEQB導入直前の今、公道で再評価する

メルセデス・ベンツ EQA 250のフロントビュー
メルセデス・ベンツのピュアEV第2弾、EQAは2021年4月26日に国内販売がスタートした。ラインナップするのは前輪駆動の「EQA 250」のみで、車両価格は640万円。
メルセデス・ベンツ GLAは、普段づかいにちょうどいい等身大のSUVとして鉄板の地位を築き上げた。そのGLAの純電気自動車版がEQA。果たしてピュアEVになっても“ちょうどいい”は健在なのか。兄弟モデルのEQBがデビューを果たした今、あらためてメルセデスのエントリーEVが示す実力を日本の道で探る。

Mercedes-Benz EQA

急ピッチで増えるメルセデス製EV

メルセデス・ベンツ EQA 250のサイドビュー
メルセデス・ベンツ EQAは、GLAゆずりのクーペライクなシルエットをもつ。EQAのCd値は0.28。空力デザインのホイールも採用し、フロントからリヤ、アンダーフロア周りの気流を最適化するなど、空力重視の設計としている。

自動車関連の仕事をしていると、知人からクルマの購入に関する相談を受けることが多い。メーカーから車種、グレード、2列シートか3列シートか、その内容は様々だが、ここ数年でとくに多かったのが「ガソリンとディーゼル、どっちがオススメ?」という質問だった。ところが近年、ガソリンorディーゼルの2択に、新しい選択肢が加わった。電気自動車だ。「ねえ、今買うならICE(内燃機関)とEV、どっちがオススメ?」 こんな問いかけが急増しているのである。

脱炭素社会に向けて、各メーカーはこぞって電動化戦略を推進。この1〜2年の間に、怒涛の勢いで多くのピュアEVが登場している。なかでもメルセデス・ベンツのスピード感は群を抜いており、2019年のEQCを皮切りに、エントリーモデルのEQA、そしてフラッグシップセダンのEQSを発売。2021年9月のIAAでは3列シートコンパクトSUVのEQB、大型バンのEQT、“EV版ゲレンデヴァーゲン”EQG、そしてEセグメントセダンのEQEを発表した。

航続可能距離は410km

メルセデス・ベンツ EQA 250のメーターディスプレイ
メルセデス・ベンツ EQA 250の航続可能距離はWLTCモードで410km。新車購入ユーザーは、全国約2万1000基での充電サービス利用が1年間無料となる。

メルセデス・ベンツのピュアEVファミリー第2弾のエントリーモデル・EQAは、小型SUVのGLAをベースにしたピュアEV。2021年2月に本国で発売、同年4月には国内でも販売をスタートしている。全長4465×全幅1835×全高1625mmというボディディメンションはトヨタ RAV4やホンダ CR-Vに近く、日本の道路事情へ絶妙にフィットする。

本国には4WD仕様も存在するが、現状日本に導入されているのは前輪駆動モデルの「EQA 250」のみ。最高出力190ps/最大トルク370Nmと、ガソリンの「GLA 180」、ディーゼルの「GLA 200d」よりも力強いパワースペックを誇る。原動力は前後アクスル間のフロアに搭載する容量66.5kWhのリチウムイオンバッテリー。航続距離はWLTCモードで410kmが公称値となっており、急速充電なら30分もあれば10〜80%までのチャージが可能だ。

いつもの景色、いつもの流儀

メルセデス・ベンツ EQA 250のフェイシア
EQAのキャビンに広がる景色は、最新メルセデス・ベンツのそれに準ずる。「ハイ、メルセデス」でお馴染みのMBUXをはじめ、横長のタブレットをダッシュボードに据え付けたようなコクピット周りや、ジェットエンジンのファンローターを思わせるエアコンルーバー、タッチパッドを備えたセンタコンソールなど、メルセデスオーナーであれば違和感なく乗り換えができる操作系を整えている。

ひとたびオーナーになってしまえば、どのモデルに乗っても「いつもの景色、いつもの流儀」で運転できるのがメルセデス・ベンツに共通する良識だが、その美点はEQAにも受け継がれている。キーをもちドアを開けドライバーズシートに座れば、そこには「いつもの景色」。見慣れたデザインのスイッチ、コントローラ、ディスプレイ、エアコンルーバーも指定席で乗員を出迎えてくれる。

ステアリング左側にある始動ボタンをポン、と一押しし、ドア側に設置されたシートアジャスターでポジションを合わせ、ドアミラーとルームミラーを調整して走り出すまでの流儀もやはりいつもの通り。走り出すまでは、アイドリングストップ中のGLAの車内にいるのと何ら変わりがないように感じられる。ちなみに同行したスタッフは、EQAの後席で半日も過ごした頃にこんなことを言い出した。「静かですね〜これ排気量いくつなんですか」。それでようやく自分が電気自動車に乗っていることを知ったそうだ。

上級サルーンのような運転感覚

メルセデス・ベンツ EQA 250のフロントビュー
メルセデス・ベンツ EQA 250の乗り味は、すっきりと雑味がなく、しっとりと濃厚。上級サルーンに乗っているような気持ちになる。

しかし、いざ走り出してみると、ドライバーの自分は電気自動車独特のフィーリングに圧倒されてしまった。パワートレイン由来の振動がない静かなキャビン、瞬時に湧き出るトルクでぐいぐいと車体を押し出す頼もしさ、床に敷き詰めたバッテリーがもたらす低重心による腰の据わり。この運転感覚は、内燃機関搭載モデルであればハイエンドのサルーンに近い。それを小型SUVで体験できるのはEQAが純電気自動車であるがゆえだろう。

「EV=静か」は当たり前と思われる方もいるかもしれないけれど、パワートレインが静かだからこそ、車外の騒音や風切り音、モーター由来の振動などがかえって気になりやすいという難しさもある。ところがEQAにはいかにも入念なノイズ対策が施されているようで、高速道路でも一般路でもキャビンは一定の静けさに保たれていた。

“運転が上手”なACC

メルセデス・ベンツ EQA 250のフロントシート
メルセデス・ベンツ EQA はパワートレインの無駄な熱をキャビンの暖房に利用するなど、温度管理も効率化を徹底。乗車前に空調を稼働し、車室内を最適な温度に整えておくこともできる。

さらに印象的だったのが、ACC(アクティブクルーズコントロール)と回生ブレーキの挙動。任意の数値に設定すれば、前走車との距離を尺度に車速を自動的に調整するACCの加減速マナーは、まさに「運転が上手なドライバー」のそれ。ACC制御の巧みさには常々定評のあるメルセデス・ベンツだが、EQAではさらに洗練された印象だった。

回生ブレーキの強度は5段階に設定可能で、ステアリング脇のパドルで+/-を調整するタイプ。最も強いモードにするとかなり強力に減速されるので最初は戸惑うが、何度か試しているうちに交通環境に合わせながらパタパタとパドルを叩いて回生強度を自在に調整できるようになった。

エントリーモデルでも「やっぱりメルセデス」

メルセデス・ベンツ EQA 250のフロントセクション
メルセデス・ベンツ EQAは使い勝手だけでなく、信頼性の高さもメルセデス・ベンツ基準。バッテリーを万一の衝突から保護するためのガード機構を設けるのはもちろん、灼熱下・寒冷地での品質テストも繰り返し実施しており、メルセデス・ベンツならではの耐久性や信頼度、安全性を確保しているという。

EVといえばやはり気になるのは航続距離だが、WLTCモードで410kmという数字は現実の使い勝手にフィットしている。個人的には、航続距離が300kmを切るEVだと、安心して出かけられるのは近所の買い物や通勤など決まった目的地まで。遠出をする場合には充電ステーションを基点にドライブルートを事前にきちんと組んでおかなければどうにも心許ない。かたや400km超走ることのできるEQAなら心の余裕が随分違う。例えば今回、東京・品川〜千葉・富津市の往復約120kmの高速道路、数十kmの山道プラス一般道を取材のために走行したが、“満タン”から一度も充電することなく40%弱のバッテリー残を保ったまま帰宅することができた。

EQAの最高速度は160km/h。高速道路での100km/h巡航ではEクラスもかくや、というゆったりしっとりとした乗り味を提供するうえ、追い越しや合流での加速はどこまでもスムーズで継ぎ目がない。ステアリングに手を添えておけば、重厚な体を路面に吸い付けるようにして、どこまでも滑るようにまっすぐ走る感覚もメルセデスらしい。エントリーモデルのEQAでこれなら、フラッグシップのEQS(航続距離は700km超で最高速度は210km/h)はきっと“新時代のグランドツーリングカー”に仕上がっているのだろうと想像される。

「いかにもEV」にしなかったワケ

メルセデス・ベンツ EQA 250のリヤシート
メルセデス・ベンツ EQA 250のリヤシート。大人5人を飲み込むキャビンや、十分なスペースの荷室など、使い勝手は「いつものSUV」。

透明感のある運転体験を除けば、使い勝手の良さはGLAとほとんど変わりが無い。コンパクトで取り回しやすく、人や建物がひしめく渋谷や銀座の街中をすいすいと縫うように走り抜けることができる。「ハイ、メルセデス」でお馴染みの自然対話型音声認識システムの精度も高くて積極的に使いたくなる。スマートスピーカーが生活の一部になった自分にとってはこれが快適で、目的地の設定や充電ステーションの検索など、運転操作以外はいつのまにかほとんど“声”で指示するようになってしまった。

塞がれたフロントグリルやEQファミリーに共通するライトグラフィックといった違いはあれど、ことさらに未来感を打ち出すデザインを採り入れなかったEQAに「もっと“いかにも電気自動車”っぽくすればよかったのに」と思わぬこともなかった。でも、一緒の時間を過ごしているうちに、日々を共にする相棒としてやはり「ああやっぱりメルセデスだなあ」という安心感があることのほうがよほど重要なのだと気がついた。体に馴染んだスーツやシューズのように、等身大のSUVとして、EQAは生活の一部にぴったりフィットした。

GLBベースのEQBも登場済み

メルセデス・ベンツ EQA 250のリヤビュー
メルセデス・ベンツ EQA 250は「EVへの入り口」にもってこいの一台といえるかもしれない。最強のライバルは、追って導入がスタートするEQBだろう。

デメリットと捉えられがちな充電も、考えようによってはメリットにも思えてくる。充電時間を見込んで設計するドライブにはいつも以上に余裕が生まれるし、出先での30分のチャージタイムは自分の体力の充電も兼ねると思えばちょうどいい気もしてくる。ただし、充電ステーションの数さえ十分に配備されていれば。徐々に増えてきたとはいえ、やはりSAやPAでの充電用スペースは“先約アリ”のことが多くて、今回に限らず充電待ちを何度か経験している。モータリゼーションがガソリンスタンドの拡充と背中合わせで進んだように、EVをもっと広く世の中に浸透させるには充電ステーションの充実度が鍵となる。

欧州ではすでにGLBベースのピュアEV、EQBも登場している。3列シートレイアウトをコンパクトなボディに詰め込んだGLBは日本でも売れに売れている。その電気自動車版となれば、注目度はEQA以上に高いだろう。ガソリンかディーゼルか、はたまた電気かで悩むよりも、これからは「EQAかEQBか」で迷う人が増えてしまうかもしれない。

合わせて読みたい
メルセデス・ベンツ EQB 300 4マティックの正面ビュー
メルセデス・ベンツ GLBのEV版「EQB」はちょうどいい? 最新電動SUVを渡辺慎太郎が海外試乗

REPORT/三代やよい(Yayoi MIYO)
PHOTO/峯 竜也(Tatsuya MINE)

【SPECIFICATIONS】
メルセデス・ベンツ EQA 250(AMGライン装着車)
ボディサイズ:全長4465 全幅1850 全高1625mm
ホイールベース:2730mm
車両重量:2030kg
モーター最高出力:140kW(190ps)
モーター最大トルク:370Nm(37.7kgm)
バッテリー容量:66.5kWh
トランスミッション:1速固定
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後235/55R18
航続距離:410km(WLTCモード)
0-100km/h加速:8.9秒
最高速度:160km/h
車両本体価格(税込):640万円

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610

【関連リンク】
・メルセデス・ベンツ 公式サイト
http://www.mercedes-benz.co.jp/

著者プロフィール

三代やよい 近影

三代やよい

東京生まれ。青山学院女子短期大学英米文学科卒業後、自動車メーカー広報部勤務。編集プロダクション…