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Retro Rides Weekender
条件は2000年以前の生産車



クラシックカー愛好家にとっての聖地「グッドウッド・サーキット」が、5月上旬の暖かな春の週末、いつもとは少し趣を異にする情景で彩られた。「レトロ・ライド・ウィークエンダー」と題された本イベントは、2000年以前に製造されたすべてのクルマを対象とする“何でもアリ”の集いである。
参加資格はただひとつ、2000年以前に生まれたクルマであること。メーカーやモデルは一切問われず、英国製のホットロッドやモッドスポーツ、ローライダー、果てはいわゆる“街道”レーサーまで、あらゆるスタイルの車両がサーキットをデモランした。
通常であれば1966年以前のF1マシンや「フェラーリ 250 GTO」「シェルビー コブラ」が並ぶパドックには、今回は軽自動車(系)や「ミニ」などマイクロカーが鎮座。別のパドックには「シトロエン 2CV」から「プジョー 106 ラリー」に至るまでのフランス車が整然と並び、まさに多国籍・多様性に満ちた空間が広がっていた。
一風変わった珍車まで




このイベントの真の主役は、一般来場者が自走で持ち込んだ1000台を超える個性派カーたちである。パドックはもちろん、駐車場やバンク、そして観客エリアのあらゆるスペースに至るまで、隙間なくレトロマシンが並んだその光景は、まさに圧巻であった。
レトロ・ライドは、2000年代初頭にイギリス国内で立ち上げられたオンラインフォーラムを起源とし、JDM(Japanese domestic market)、ラットロッド、ホットロッド、カスタムカー、あるいは一風変わった珍車まで、多様な車種のモディファイを楽しむ人々の集いとして発展してきた。
やがて実車のミーティングも開催されるようになり、近年ではこのグッドウッドが“本拠地”として定着。年を追うごとに来場者数と参加台数を増やしている。
ユーモア溢れる車両展示

このイベントにヒエラルキーは存在しない。全員が歓迎され、会場全体にリラックスした空気が漂う。各車両の展示にもユーモアが溢れ、スーパーチャージャーを搭載した「ミニ・モーク」や、「KIA プライド」のボディを「マツダ MX-5(ロードスター)」のシャシーに載せた奇抜な1台など、来場者の目を楽しませる工夫が至るところに散見された。
歴史的なサーキットに溢れる遊び心と自由な発想。クラシカルで品位に溢れるグッドウッドが、カジュアルに楽しめる“クルマの遊園地”となった週末であった。
PHOTO/Simon FOX