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BBS FL
4本目の柱として



あらゆる個性は、盤石な王道がいなければ成り立たない。いかに時代が流れトレンドがうつり変わろうとも、その王道に居続けるホイールメーカーがBBSだと思う。発祥はドイツながら、日本の秀でた金型鍛造技術を駆使したBBSジャパンへと発展した。そこで生まれるBBSジャパン製鍛造ホイールは、いまや世界中の誰もが認める王道にして、最高峰として知られる。
しかし、そこに胡座をかかないのが王道の源泉であり、BBSジャパンらしさなのだろう。彼らはクロススポークと呼ばれる造形や、また自社の金型鍛造製法などを大切に守りつつ、常に技術革新を絶やさない。あの手この手で新技術に、そしてクロススポークを軸に置きながらも新たな意匠に挑戦している。
2025年の東京オートサロンで発表・発売となったFLは、その意思を示す象徴的な事例だ。BBSジャパンはこれまで、アルミ鍛造、超超ジュラルミン鍛造、マグネシウム鍛造と3本柱で製品展開をしてきたが、新たに4本目としてフォルテガを立て、第一弾として結実させたのがFLだ。「アルミ合金を使った鍛造製法」の一種でありながら、その合金の配合率や、鍛造工程に工夫を加えた新技術だという。従来品に比べて剛性確保をしやすく、設計次第では軽量化の促進にもつながる。
プレミアムカーに似合う美しく高級感のある仕上げ


そうしたストロングポイントを確信したBBSジャパンは、それを普及の著しいBEVやSUVに活かす。これらはハイパワーかつ高重量であり、ホイールにかかる負担が尋常ではないほど大きい。それらをきっちり受け止める耐荷重性能を約束しながら、走りの魅力を底上げする高い剛性と、軽量性能を満足させる。プレミアムカーに似合う美しく高級感のある仕上げも必要となる。
現在、カタログモデルはポルシェ・タイカン4S用の21インチだ。「やるからには最高峰から攻める」というのもBBSらしさだろう。ポルシェ製BEVの初陣とFLとは、電動化時代を支えるという意味でベクトルが一致する。今後はカイエンにも発展させる予定だという。
さらに忘れてはならないのが、長らく開発車両を担ったBMW iX3だ。開発段階において社内のあらゆるスタッフがステアリングを握って評価を下し、外部を対象とした試乗会も催してきた。これらの結果、FLのストロングポイントが実像となって浮かび上がる。サイズはF:9.0J、R:10.0Jの21インチ。純正ホイール(Mスポーツ)に比べると1インチアップとなるが、軽やかな乗り味なのが印象的だ。走り出しから段差を乗り越えるとき、ジワリと荷重をかけて曲がるとき、足もとに“軽さ”を感じ、タイヤのグリップ力も感じ取りやすい。ステアリング操作に対する応答がより俊敏にもなったようで、大柄なSUVがまるでホットハッチのように収縮したかのようだ。軽く流してもバタつく感触とは無縁で、心地よかったのも印象的だった。実際、インチアップしたにも関わらず、1本あたり6kg弱も軽くなったという。
FLに宿る“高性能”は数多くのプロドライバーを唸らせる。試乗会を含めて数多くのテストを経験した藤波清斗選手がこう評価する。
「コーナリングで荷重をかけていっても、明らかにヨレの少なさを感じ、タイヤを巧く使うことができます。また高速域での安定感も増したと思います。同じクルマなのにホイールが違うと、ここまでフィーリングが変わることに驚きました」
レーシングドライバーも認める高性能ホイール


同じく何度もテストを経験した柳田真孝選手も、その意見に賛同していた。そのうえで彼は、FLに限らずBBSジャパン製ホイール全体に対して全幅の信頼を置く。フェアレディZ専門店であるセントラル20を展開しているからでもある。
「自社のデモカーには率先してBBS製ホイールを装着し、お客さまにお勧めすることも多いです。性能が間違いないことは、レースからストリートまですべてのシーンで体感しているし、個人的な好みでいうならデザインも抜群にいい。もちろん確固たるブランド力もある。三拍子揃ったホイールだと思います」
FLを筆頭とするBBS製鍛造ホイールは、コンマ1秒を削ることに命をかけるレーシングドライバーが認めた高性能ホイールだ。なお、FLでは単純な動的性能を追い求めただけでなく、静粛性を含めた快適性の向上をも狙ったという。対象となる車種(サイズ)はこれから徐々に拡がっていく予定だ。「フォルテガの物語は、まだ始まったばかり。これからどう進化させていくか、楽しみで仕方がない」と、かつてエンジニアが宣言していた。ともすれば市場のニーズや、とあるユーザーからのラブコールこそが、対象車種を拡大させていくのかもしれない。
REPORT/中三川大地(Daichi NAKAMIGAWA)
PHOTO/中島仁菜(Nina NAKAJIMA)
MAGAZINE/GENROQ 2025年7月号
PRICE LIST
21×9.5J:47万8500円
21×11.5J:49万5000円
【問い合わせ】
BBSジャパン
TEL 03-6402-4090
https://bbs-japan.co.jp