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M6(F12)
4ドアのグランクーペ登場とともに

BMWのフラッグシップクーペである「6シリーズ」は、2011年1月に2ドアコンバーチブル(F12)、続いて4月に2ドアクーペ(F13)の順番で発表された。一見、先代E63型のビッグマイチェンのように見えるほどエクステリアデザインはキープコンセプトとなっているが、プラットフォームはF10型「5シリーズ」やF01型「7シリーズ」と同世代のものへ進化。ボディサイズも全長4820mm、全幅1855mm、全高1374mmとひと回り大きくなったほか、ホイールベースも2780mmから2855mmへと延長されている。
そんなF12系6シリーズ最大の特徴は2012年にF10型5シリーズと同じ2970mmのホイールベースをもちながら、5シリーズより長く、6シリーズクーペより低いボディをもつ4ドアのグランクーペがラインナップに追加されたことだ。
そしてこのグランクーペの登場とともに、満を持して発表されたのが「M6クーペ」「M6コンバーチブル」「M6グランクーペ」である。
最高出力・最大トルクとも向上



3モデルともにエンジンは「X5 M」「X6 M」に搭載されていた4.4リッターV型8気筒DOHC32バルブツインスクロールツインターボをベースに圧縮比を10:1に上げ、ブースト圧も1.5barにアップした「M5」と同じ“S63B44TU”ユニットを搭載。最高出力560PS/6000〜7000rpm、最大トルク680Nm/1500〜5750rpmというスペックもM5と同一で、7速DCT(ゲトラグ7DC1600)を介した0-100km/h加速は、M6クーペが4.2秒、M6コンバーチブルが4.3秒、M6グランクーぺが4.2秒といずれもM5の数値を上回っている。
ちなみに車重はクーペが1850kg、コンバーチブルが2055kg、グランクーペが1950kgとなっており、1980kgのM5と比べ車高が低いことによる空気抵抗の少なさが、パフォーマンス向上につながっていた。
またこの4.4リッターV8ツインターボは、先代のM5/M6の5.0リッターV10ユニットに比べ、出力、トルクともに向上しながらも、オートスタート&ストップ(アイドリングストップ)機構、ブレーキエネルギー回生システムなどエフィシェントダイナミクステクノロジーの採用によって、CO2削減量、燃費ともに約30%改善されているのも特徴といえる。
オプションでカーボンセラミックブレーキも


一方シャシーはスタンダードの6シリーズに対してフロントトレッドを30mm拡大。サスペンションに鍛造アルミパーツを使用するほか、剛性向上のためのリーンフォースプレートの追加、リジッド式リヤサブフレーム、油圧式パワーステアリングを採用。もちろんフロントマクファーソンストラット、リヤマルチリンクのサスペンションも専用にセットアップされているうえ、M5と同様リヤアクスルに可変ロック機構によって左右リヤタイヤに配分されるエンジンパワーを適切に制御し、最大のトラクションを得る専用開発の電子制御式LSDのアクティブMディファレンシャルを標準装備している。
またフロントブレーキに対向6ピストンキャリパー、ドリルドベンチレーテッドディスク、アルミ製ブレーキカバーからなるコンパウンドブレーキシステムを標準で装備するほか、オプションでMカーボンセラミックブレーキも用意されていた。
定番のエアロパーツを装備

ボディには大開口インテークを備えたフロントバンパー、サイドスカート、リヤスポイラー、リヤディフューザーといったMシリーズでは定番のエアロパーツを装備。加えてクーペとグランクーペにCFRP製のダブルバブルルーフを装着するほか、全モデルに熱可塑性プラスチック製フロントフェンダー、アルミ製ボンネットフード&ドア、SMC(シート・モールディング・コンパウンド)製トランクリッド(コンバーチブルはソフトトップ・フェアリング)を採用し軽量化が図られているのも特徴である。
そして2014年には575PS(2015年には600PS)へとチューンしたV8ツインターボを積み、ブッシュ、スプリング、ダンパー、アンチロールバーなどを改良した「M6コンペティション・パッケージ」を各モデルに用意。
さらに2016年からは「Z4 GT3」の後継として「M6 GT3」がレース・デビュー。同年のスパ24時間で優勝、2018年にはスーパーGTのGT300クラスでも年間ランキング2位に食い込むなど、世界中のレースで活躍し、名実ともにBMW M社のフラッグシップモデルとなった。