ル・マン24時間を前にワンオフ仕様「ポルシェ 963 RSP」を公開

“公道走行可”のハイパーカー!?「ポルシェ 963 RSP」が登場「伝説のロッシ伯爵仕様の917を完全再現」【動画】

ポルシェは公道走行可能なル・マン・ハイパーカー「963 RSP」を公開した。
ポルシェは公道走行可能なル・マン・ハイパーカー「963 RSP」を公開した。
ポルシェは公道走行可能なワンオフ車両「963 RSP」を発表した。IMSAウェザーテック選手権や世界耐久選手権(WEC)を戦うプロトタイプレーシングカー「963」をベースに開発された963 RSPは、WEC第4戦ル・マン24時間レースにおいて、一般公開される。

Porsche 963 RSP

ロッシ伯爵の917の登場50周年を記念

1974年4月、ドイツからフランスまで公道を走行したロッシ伯爵の917が、最新レーシングカー「963」をベースに完全再現された。
1974年4月、ドイツからフランスまで公道を走行したロッシ伯爵の917が、最新レーシングカー「963」をベースに完全再現された。

ポルシェは、6月14日から15日に開催されるWEC第4戦ル・マン24時間レースに向けて、963の姉妹車となる公道仕様の「963 RSP」を発表した。ポルシェAG、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ、ポルシェ・カーズ・ノースアメリカが共同開発し、50年前にデビューした公道走行可能な「ポルシェ 917」のデザインを再現。車名の「RSP」は、モータースポーツ界の伝説的ドライバーであるロジャー・ペンスキー(Roger Searle Penske)のイニシャルが採用されている。

1975年4月、当時最新の耐久レーシングカー「917(シャシーナンバー30)」が公道を走行した。ドイツ・ツッフェンハウゼンのファクトリーからパリへと向かった917は、当時匿名オーナーがステアリングを握っていた。マルティニ&ロッシ酒造を受け継いでいたロッシ伯爵は、このクルマに可能な限り変更を加えないよう主張していたという。

ポルシェ・カーズ・ノースアメリカ社長兼CEOのティモ・レッシュは、この特別な917を再現した「963 RSP」について次のように説明を加えた。

「963 RSPは、ペンスキーとポルシェの小さなエンスージアストチームによる情熱的なプロジェクトです。 彼らはロッシ伯爵の917が持つエクステリアとスピリットを、可能な限り忠実に再現しました。伝説の917は公道を走ったとはいえ、隅から隅までレーシングカーそのものでした。963 RSPでも同じアプローチをとっています。最高品質の美しいマテリアルを導入しながらも、その根底はレーシングカーそのものなのです」

公道走行用様々なコンポーネントを変更

公道走行可能なル・マン・ハイパーカー「963 RSP」のエクステリア。
レーシングカーの963をベースに、交通法規への対応に加えて、足まわりなどもよりソフトに変更されている。

963 RSPは、ベースとなった963から公道走行のために大きく変更。カーボンファイバーとケブラーを組み合わせたボディワークはカッティングシートではなく塗装が施された。ロッシ伯爵の917をイメージし、エクステリアカラーはマルティニ・シルバー、コクピットもタン・レザーとアルカンターラが組み合わせられている。

最高出力680PSを発揮するの4.6リッターV型8気筒ツインターボ+ハイブリッドパワートレインを搭載。公道走行のために車高を上げ、ダンパーのセットアップをソフトに変更した。ル・マン近郊の公道(サルト・サーキットの公道セクション)を想定し、専用エレクトロニック・セットアップも導入された。また、交通法規に準じ、ヘッドライトとテールライトのコントロールユニットのプログラムにも調整が加えられている。

ボディワークに関しては、ホイールアーチカバーの形状も変更。ミシュランのウエット・コンパウンド・タイヤを装着し、さらにはホーン機構も搭載された。

タン・レザーとアルカンターラ製コクピット

公道走行可能なル・マン・ハイパーカー「963 RSP」のコクピット。
インテリアもロッシ伯爵の917をイメージし、美しいタン・レザーとアルカンターラで仕上げられた。

963 RSPのコクピットは、ハンドメイドによる完全オーダーメイドだった917のインテリアに倣い、ソフトなタン・レザーとアルカンターラの組み合わせ。レザーで縁取られたシングルピースのカーボンシートのセンター部にはソフトなクッションを配置。カーボンファイバー製バルクヘッドに固定式ヘッドレストも取り付けられている。

シートはレース仕様と同様にエアコンも搭載。レッグクッション、ルーフライニング、ピラーは明るいアルカンターラ製。ステアリングホイールはレーシングカーの機能を残しながら、レザーで仕上げられた。ポルシェ公式トラベルマグが収納できる、取り外し可能な3Dプリント製カップホルダーも追加された。

ドライバーシートの横にはトリムパネルを新設。使用していないときにはペルター製ヘッドセットとステアリングホイールの置き場所となる他、マシンの始動と操作をアシストするラップトップを配置。ここにはペンスキー特注のカーボン製ヘルメットを置くこともできる。

917をイメージし、ボクサー12気筒エンジンの上部ファンを再現した専用のベンチレーションシステムも組み込まれた。ドアはレザーとアルカンターラで仕上げられ、シャシーナンバーと製造日と場所が刻まれた合金プレートも配置されている。

ベルンハルトが初ドライブを担当

1974年4月、ドイツからフランスまで公道を走行したロッシ伯爵の917が、最新レーシングカー「963」をベースに完全再現された。
サルト・サーキットで行われた初の公道ドライブは、ポルシェのレーシングカーのドライブを多数経験しているティモ・ベルンハルトが担当した。

963 RSPは公道を走行するために必要な条件を全て満たし、フランス当局の特別許可を得たナンバープレートを装着。今回、ル・マン24時間レースを運営するACO(フランス西部自動車クラブ )のサポートのもと、サルト・サーキットを含む公道での走行を果たした。

今回、ロッシ伯爵の917とともに、963 RSPの初走行を担当したティモ・ベルンハルトは、「生涯忘れられない経験になった」と、そのインプレッションを語っている。

「ロッシ伯爵の917を横目に公道を走るなんて……本当にこれが現実で起こっていることのか、本当に不思議な気分でした。963 RSPの挙動は完璧でした。ただ、ベースとなった963よりも、フレンドリーで穏やかな感じがしました。レース用のセーフティデバイスがなかったことで、いつもよりも快適でしたし、特別な時間になりました」

963 RSPは、ル・マン24時間レース期間中にサルト・サーキットで一般公開を予定。その後、シュトゥットガルトへと戻り、ポルシェ・ミュージアムでも展示される。2025年7月には、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにおいて、ロッシ伯爵の917とともに展示も計画されている。

「ポルシェ 963 RSP」を動画でチェック!

IMSA開幕戦デイトナ24時間レースにおいて、ポルシェ 963 7号車が総合優勝に輝き、ポルシェにデイトナ通算20勝をもたらすことになった。

ポルシェ通算20勝!「デイトナ24時間レース」最終盤で38分のスプリント戦を制し「ポルシェ 963」が総合優勝【動画】

2025年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権開幕戦「ロレックス・デイトナ24時間レース」が、1月25日から26日にかけて、フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイを舞台に開催された。トップカテゴリーのGTPクラスにおいて、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの「ポルシェ 963」7号車(フェリペ・ナスル、ニック・タンディ、ローレンス・ヴァントール)が優勝を飾った。

キーワードで検索する

著者プロフィール

ゲンロクWeb編集部 近影

ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーカーマガジン月刊『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつ…