究極のヴィンテージカーショー「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステ」体験記(後編)

「ミウラSVなど16台を手放してまで?」ヴィンテージカーショー“ヴィラデステ”に参加して聞いたすごい話

2025年5月23〜25日、イタリアのコモ湖を舞台に開催された「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステ」。その由緒正しいヴィンテージカーショーにエントラント側として参加したのが、ゲンロクWebでもお馴染みの西川淳氏だ。桁違いのセレブたちが集う華やかなショーの舞台裏をリポートする後編。

Concorso d’eleganza Villa d’Este

16台ものコレクションを手放して

パレードの興奮も覚めやらぬうちに、エントラントはクルマをヴィラデステのガレージにいったん仕舞って、およそ1km離れたヴィラエルバへとBMWのシャトルサービスかボートに乗って移動する。ヴィラエルバではハガティによるブロードアロー・オークションが開催されていた。「ホンダ NSX-R(NA2)」が約1.5億円で落札されたと話題になったオークションだ。

この夜はヴィラエルバでイタリアンパーティである。ここでまた新たな出会いがあった。「250 モンツァ」という生産台数1台のコンペティションフェラーリのオーナーで、彼はなんとこのマシンを手に入れるために「ミウラ SV」など16台ものコレクションを手放したらしい。いったいいくらなんだ……?

人生最高クラスのドライブ

パンテーラGr.4でヴィラエルバを目指す。
パンテーラGr.4でヴィラエルバを目指す。

日曜日。この日もまたイベントハイライトのひとつ。エントラントは朝から昨夜のパーティ会場だったヴィラエルバへと“自走”で移動する。実は土曜日にイベントを観覧できる人は限られており、入場料も非常に高価だ。だから多くのクルマ好きは日曜日にヴィラエルバで開催される(ややこしいけれど)ヴィラデステのパブリックデイを目指す。ただしこちらも前売りチケットが完売になるほどの人気なので、来年行きたいという方はお早めに。

いよいよドライバー役の出番ということで、パンテーラ Gr.4を駆り、颯爽と走り出す。爆音ながら湖上を抜けるようなV8ノート。実に気持ち良い。沿道には大勢のスポッターたちが待ち構えている。駆け抜けることが難しいほどだ。中には道の真ん中に出てエントラントを停めてしまう連中も。ヴィラエルバまでたった1kmだったけれど、人生最高クラスのドライブだった。

ヴィラエルバでのパブリックデイ。コモ湖まで一体どうやって来たのだろう、駐車場は十分にあったのだろうか、などと心配するほど大勢の観客がやってくる。パンテーラに興味を持つ人も多く、日本から持って行ったヒストリーブック100冊以上もあっという間に配り終えてしまった。スタッフの皆さんが重い荷物を苦労して運んだ甲斐があったというものだ(本は重い!)。

レッドカーペットの上をパレード

ヴィラエルバでもパレードランが用意されていた。パブリックデイだけあって、こちらは土曜のパレードより大掛かり。大きな庭の中を1台ずつぐるっと回るのだが、途中にレッドカーペットが用意されており、スタンドを埋め尽くす観衆と、その向かいに陣取った審査員たちの前に一旦停止するのだ。ここでもまたサイモン・キッドストンが車両を解説。時折インタビューを交えていて、なんか喋れと言われたらどうしようとドキマギ(というこちらの状況を知ってかサイモンは“サンキュー”だけ言わせてくれた)。

それにしてもサイモンは凄い。スイス在住のイギリス人。英語はもちろん、イタリア語やフランス語にも長けている。そして参加車両の解説を、時折アンチョコを見るだけ、ほぼソラでやってのけた。知識と経験は当代世界一で、近々お宝(33/2らしい)を披露する、らしい。

ヴィラデステのパレードではクラスウィナーが発表される。ここで指名された8台のクラスウィナーはこの後、ヴィラデステに戻って開催されるガラディナーでもう一度表彰され、なかから映えあるベスト・オブ・ショーが発表されるという流れだ。

パンテーラをドライブして再びヴィラデステへ。沿道の観衆は朝より何倍にも膨れ上がっていた。

全てのクルマ好きに感謝

日曜日の夜。ブラックタイのガラディナーだ。庭に集まった紳士淑女たち。オフィシャルシャンパーニュを手にクルマ談義の華が咲く。サイモンがクラスウィナーを紹介すると、1台1台、花道をやってくる。参加者たちから羨望の混じった祝福を受ける。最高の瞬間だろう。

フィーマルなガラディナーを終えると、いよいよベストショーの発表だ。湖畔のパーティ会場には8台のクラスウィナーが勢揃い。圧巻の眺め。まず間違いなく、今この世にある中でトップオブトップと称するに値するクルマたちのうちの8台が揃っているのだから。

それでも1台を決めなければならない。ジャッジたちの苦労に想いをはせたとき、もはやベストなどどのモデルでも良いと思った。そういえば前回もそうだった。ここではあえて一等賞を獲ったのがどのクルマだったかは書かない。どうしても知りたいようであれば検索して探して欲しい。すぐに見つかるはずだ。

車名を聞いた私は、シャンパングラスをそっと掲げて、素晴らしいクルマを見せてくれたオーナーたち、日本から参加した友人とスタッフ、そしてサイモンやジャッジをはじめとするイベントオーガナイザー側の全てのクルマ好きに感謝の意を表した。部屋に戻ると、湖上に花火が舞っているのが見えた。またいつか──、そう願ってブラックタイを外した。

今回、個人的にもっとも興奮したDクラス。その名も「TITANS OF THE TRACK WHEN THE BOSS SAYS “LET'S RACE!”」。洒落てる。

「隣の席はセリアAチームオーナー!?」憧れのヴィンテージカーショー“ヴィラデステ”に参加して見た景色

2025年5月23〜25日、イタリアのコモ湖を舞台に開催された「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステ」。その由緒正しいヴィンテージカーショーにエントラント側として参加したのが、ゲンロクWebでもお馴染みの西川淳氏だ。めくるめく華やかなショーの舞台裏を2回に渡って寄稿する。

様々な希少なヒストリックカーを手がけてきたサイモン・キッドストン。彼が絶対に手放さないと断言しているのが、ポルシェ 911 カレラ RS 2.7だ。

数多くの希少車を手掛けてきたカーディーラーが「この1台は絶対に売らない!」と宣言した「ポルシェ 911 カレラ RS 2.7」の逸話

ヒストリックカー専門ディーラー「キッドストン SA(Kidston SA)」の代表を務め、ジャーナリストとしても活躍するサイモン・キッドストン。彼は、史上最高額を叩き出した個体を含め、世界で最も希少なクラシックカーを発掘し、販売してきた。しかし、彼が決して手放さない1台がある。それこそが、彼が愛してやまない1973年型「ポルシェ 911 カレラ RS 2.7」だ。

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西川 淳