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Aston Martin Valkyrie LM
WECとIMSAを戦うマシンがベース

10台のみが限定製造されるトラックカー「アストンマーティン ヴァルキリー LM」は、モータースポーツへの関与を続けてきたアストンマーティンの歴史において、ひとつのマイルストーンとなる存在として開発された。
アストンマーティンがル・マンに初出場したのは、初開催から5年目の1928年。2014年以降に獲得した数々のクラス優勝を経て、2025年シーズンから「ヴァルキリー」で、ル・マン24時間レースを含む世界耐久選手権(WRC)ハイパーカー・クラスへの参戦をスタートした。
ヴァルキリー LMは、ル・マン・ハイパーカー規定で開発されたヴァルキリーのレーシングカー仕様がベース。レース仕様と同様、最高出力707PSを発揮するコスワース製6.5リッターV型12気筒自然吸気エンジンのリーンバーン仕様を搭載する。アストンマーティンのエイドリアン・ホールマークCEOは、ヴァルキリー LMについて次のようにコメントした。
「ヴァルキリーLMのようなサーキット専用車は地球上に存在しません。今シーズン、ル・マン優勝に挑むヴァルキリーは、唯一のロードカーベースのハイパーカークラス車両として開発されました。ヴァルキリーもヴァルキリー LMも心臓部には強大なパワーを誇る6.5リッターV型12気筒自然吸気エンジンが搭載されます」
「ヴァルキリー LMは、ワークスドライバーでなければ味わうことのできない究極のドライビング体験へと没入できます。長年にわたり、アストンマーティンはレーシングカーで培ったパフォーマンスをオーナーの皆様に堪能して頂けるよう努力してきました。ヴァルキリー LMほど、WECやIMSAを戦う最新鋭レーシングカーに近づける機会はないと断言できます」
アマチュアでもドライブが可能な仕様に

ヴァルキリー LMは、スポーツカーレースの最高峰に君臨するハイパーカークラスにおけるパフォーマンスを直接体験することができる。今回、WECやIMSAを競うレーシングカーとの違いを最小限に抑えながら、アマチュアドライバーでも十分に扱えるよう改良が施された。
レース仕様に搭載されるバラストやFIA規定車両に求められるエレクトロニクスなどを外し、コクピットのインターフェースはトラックデイなどでの使用を想定した仕様に変更。使い勝手の良いオープンループのトルク制御が導入され、ドライブシャフトセンサーとインプットトルクセンサーは装備から外されている。V12エンジンは、一般に入手できる燃料を使用できるよう専用キャリブレーションが導入された。
レース仕様と同様に7速シーケンシャルトランスミッションを介して後輪を駆動。ステアリングに配置されたパドルシフトでギアチェンジを行う。足まわりは前後ダブルウイッシュボーン、プッシュロッド式トーションバースプリング、調整可能なサイドダンパーとセントラルダンパーで構成。F1タイヤサプライヤーのピレリが専用開発したパフォーマンスタイヤを装着する。
コクピットはドライバーの安全、乗り込みやすさ、視認性を考えて最適化。カーボンファイバー製レーシングシートにはショルダーサポートと頭部を囲むヘッドレストパッドを装備する。FIA 8853規格に適合した6点式ハーネスと消火装置も搭載され、ステアリングホイールにはドライバー用のディスプレイとシフトライトが組み込まれた。
アストンマーティンの耐久モータースポーツ責任者のアダム・カーターはヴァルキリー LMについて次のように説明を加えた。
「ヴァルキリー LMは、サーキット専用車として、お客様に最高のドライブ体験を提供し、心から楽しんでいただけるよう、変更点はできる限り少なくしました。現在、WECとIMSAを戦うマシンとほぼ同じ仕様だと強調したいと思います」
ドライバー能力開発プログラムを展開

ヴァルキリー LMのオーナーは自身の車両を自由に使用できるが、アストンマーティンではオーナーの運転技術をサポートするプログラムの導入を決定。専用の能力開発プログラムは、ヴァルキリー LMのパフォーマンスを最大限に引き出し、究極のモータースポーツ体験を提供する。
能力開発プログラムは、個人でサーキット走行に行く煩わしさを取り除き、スペシャリストによるセットアップと準備を提供。ドライバーが自信を持って世界各地中のサーキットで320km/h以上のスピードを経験できるようプログラムが作成された。「フライ&ドライブ」で提供されるため、プロエンジニアのチームがすべてのマネジメントを行い、オーナーは安全、管理された環境下でマシンの能力を試すことに没頭できる。
プログラムには、アストンマーティンにおけるマシンの保管とメンテナンス、会場との往復運搬も含まれる。サーキット走行前には、シミュレーターを使用したコーチングも実施。オーナーは実際の走行を行う前に、アストンマーティンの専任プロドライバーの指導による、トラックウォークや座学セッションが行われる。
走行後もエンジニアリングチームから、ロガーデータやオンボード動画分析を提供。ヘルメット、HANS一式、レーシングスーツ、ブーツ、個人に合わせて成形されたイヤーピース、ドライバー用グローブ、防火下着を含む、充実した車両&ドライバーキットも付属する。
ヴァルキリー LMは、2026年第2四半期から新たに開始されるトラックデイ・プログラムまでに、オーナーへのデリバリーが行われる予定となっている。