目次
Ferrari Roma
フェラーリ ローマとは


2019年11月に誕生した「フェラーリ ローマ」は、3.9リッターV8ツインターボエンジンをフロントミッドに搭載した2+2クーペである。「カリフォルニア」や「ポルトフィーノ」の流れをくむフェラーリのGTモデルとして、ラインナップの中では比較的控えめな価格設定のモデルだ。日常づかいも視野に入れた快適性や使いやすさ、主張し過ぎないエクステリアデザインなどにも配慮されている。
フェラーリは、「LA NUOVA DOLCE VITA(新しい甘い生活)」をこのモデルのコンセプトに掲げている。この言葉は、イタリアの伝説的な映画監督であるフェデリコ・フェリーニが1960年に制作した「La Dolce Vita(甘い生活)」に由来する。劇中に描かれた1950〜60年代におけるローマの自由奔放なライフスタイルを現代的に解釈、具現したのがフェラーリ ローマだという。
オープンカータイプのローマ スパイダー(コンバーチブル仕様)
2023年に追加されたオープン仕様のローマ スパイダーは、フェラーリのフロントエンジン車としては54年ぶりにソフトトップを採用した。ブラック、ブルー、グレーと濃いブラウンの4色から選択できる5層構造のファブリックによって、リトラクタブル ハードトップと同等の快適性が保たれているという。走行中も60km/hまで開閉が可能で、動作は13.5秒で終了する。また、リヤに装備されたウインドディフレクターを使用することで、ドライバー頭部周辺の乱流抑制効果が約30%向上するという。
フェラーリ ローマの外観・内装


フェラーリ ローマの外観は、美しいプロポーションとクリーンな造形が特徴。内装は、ドライバーとパッセンジャーそれぞれの空間によって構成するデュアルコクピットコンセプトを導入した。
外観:シンプルで上品かつエレガントなGT
「250 GTベルリネッタ ルッソ」や「250 GT 2+2」といった、フロントミッドシップGTフェラーリの「スポーティなエレガンス」という伝統を踏襲しつつ、現代的なデザイン言語を採用している。美しいプロポーションとピュアでバランスのとれたボリュームによって、上品で洗練されたスタイルを強調している。
特に、フロントボンネットから後方へと流れるように伸びる長く滑らかなラインによって、引き締まったサイドシルエットと後方に配置されたファストバックキャビンのボリュームを際立たせている。シンプルな造形美を実現するため、不要なディテールを排除しているのも大きな特徴だ。エレガントなエクステリアデザインを損なわないよう、リヤスポイラーは可変タイプが採用されており、速度・加速度に応じて3段階に変化し、250km/h走行時には最大で95kgのダウンフォースを発生する。
内装:直感的な操作ができるトリプルディスプレイを装備
日常での使いやすさにも配慮したローマの開発においては、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)の全面的な再設計が施された。ステアリングホイールは「目は路上に、手はハンドルに」という理念に基づいており、運転中は手を離さずに各種操作が行える。16インチのデジタルインストゥルメントパネルにすべての情報が集約され、中央には縦型8.4インチのセンターディスプレイ、助手席前方にはパッセンジャー用ディスプレイも装備している。
フェラーリ ローマのサイズ

フェラーリ ローマは、サイズにおいても使いやすさが重視されている。取り回しの良さと前席のスペースをバランスさせるとともに、視界の確保や乗り降りのしやすさもトップクラスだ。
ボディサイズ:日常づかいに不自由を感じさせない大きさ
1301mmの全高は、スーパーカーとしては抑え過ぎないサイズと言える。「296 GTB」や「SF90ストラダーレ」などと比べて座面が高く、視界の確保や乗り降りのしやすさなど日常ユースに配慮していることがうかがえる。全長4656mm、全幅1974mmはスポーツカーとしては標準的で、取り回しに大きな問題は生じないだろう。なお、ホイールベースはプラットフォームを共有していたポルトフィーノと共通の2670mmとなる。
室内スペース:前席は十分な空間を確保
フロントエンジンとロングノーズ・ショートデッキ設計により、前席には十分なスペースが確保されている。高身長のドライバーでも問題なく収まるサイズと評価されている。また、デュアルコクピットコンセプトにより左右に包み込むような独立空間が用意されており、視覚的・体感的なパーソナルスペースを確保している。
フェラーリは「+2シーター」と謳うが、後席は基本的に手荷物用のスペース。「ポルシェ 911」や「アストンマーティン DB11」などと同等のレベルで、小柄な成人や子供の短時間乗車に限定されるだろう。
フェラーリ ローマの走行性能・燃費性能

フェラーリ ローマは、現代のスーパーカーらしく走行性能だけでなく燃費性能も念頭に、双方を高次元でバランスさせることを意識して開発された。
走行性能:パワフルで機敏な走りを支えるパワートレインとプラットフォーム
フェラーリ ローマが搭載する90度V型8気筒3855ccツインターボエンジンは、最高出力620PS/5750〜7500rpm、最大トルク760Nm/3000〜5750rpmを発生する。このパワーは8速DCTを介して後輪に伝達され、0-100km/h加速は3.4 秒、最高速度は320km/hを超える。
プラットフォームはポルトフィーノと共有しながらも、コンポーネンツの約70%は新たに開発されている。高剛性化と軽量化を両立させることで、セグメントトップクラスのパワーウェイトレシオ2.37kg/PSを実現。ハンドリングの応答性も向上させている。
燃費性能:新世代の8速DCTを採用
WLTPサイクルで11.2L/100km、つまりガソリン1Lあたり約8.9km走行可能な計算だ。これはトランスミッションの貢献も大きいだろう。カリフォルニアやポルトフィーノに搭載されていた7速DCTに代わり、ローマには「SF90 ストラダーレ」にも搭載された高効率な8速DCTが採用されている。
8速DCTは7速のユニットよりも約6kgの軽量化が図られるとともに、高速巡行時の回転数を抑えることが可能となった。クイックでスムーズなシフトチェンジを実現するとともに、燃料消費量とCO2排出量の低減に寄与している。
フェラーリ ローマの購入価格・維持費

フェラーリ ローマの車両価格は約3000万円で、これにオプションや諸費用が追加される。購入後も、任意保険を中心に維持費は高額になる。
購入価格:新車での購入費用は3000万円超
日本では2020年4月に正式発表されたフェラーリ ローマは、当時2682万円の価格が設定されていた。3年後の2023年5月時点では2870万円に値上げされている。この時に日本市場に導入されたオープン仕様のローマ スパイダーは、クーペボディよりも約400万円高い3280万円と発表されている。オプションや諸費用を入れると、新車でフェラーリ ローマを購入する場合は3500万円ほどになるだろう。
ちなみに、米国市場でのメーカー希望小売価格は、2024年モデルのクーペが約24万3360ドル、スパイダーが27万7970ドルとされている。1ドル140円で計算すると、それぞれ3400万円と3890万円ほどになる。これに、オプションや登録費用、州ごとの税金がかかる。
維持費:高額な任意保険
フェラーリ ローマの場合、エンジンの排気量に応じて課税される自動車税と車体重量によって決まる重量税および自賠責保険料を合わせて年間9万円強。メンテナンスに必要なパーツ代や作業料金などは、クルマの使われ方など様々な要素で変わるため、あくまで目安とした。フェラーリの場合は任意保険の型式別料率クラスで最高ランクに分類されるとともに、車両保険も高額となる。それらを含めると、年間の維持費として200万円程度は必要な可能性がある。以下、概算をまとめた。
区分 | 項目 | 年間費用(円) | 備考 |
税金・保険 | 自動車税 | 6万6500 | 排気量3855cc |
重量税 | 1万6400 | 重量1.6t(2年間で3万2800円) | |
自賠責保険 | 8825 | 2年分1万7650円 | |
任意保険 | 100万 | 3000万円の車両保険に加入した場合の概算 | |
メンテナンス | オイル交換 | 10万 | オイル量13L、銘柄等により変動。年1回交換と想定 |
タイヤ交換 | 10万 | 4年で交換と想定 | |
消耗品交換 | 随時 | ブレーキパッド、ブレーキフルード、バッテリー等の定期交換・整備費用 | |
日常費用 | ガソリン | 7万5000 | 年間3000km走行、燃費約8km/L、ガソリン200円/Lで計算 |
駐車場 | 60万 | 都内マンション併設タワーパーキング想定(5万円/月) | |
合計 | 約200万 | 注)税金・自賠責保険料以外はすべて概算 |
フェラーリ ローマ モデル解説


フェラーリ ローマには、クーペのローマとオープントップ仕様のローマ スパイダー、2つのボディが用意される。
フェラーリ ローマ(クーペ)
シャシーには、F1-トラクションコントロール、電子制御ディファレンシャル 3、フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー(FDE)などから構成する最新のSSC 6.0(サイドスリップコントロール)を搭載。抜群の操舵感と姿勢制御を可能にしている。シャシーとボディシェルを構成するコンポーネンツの70%を新開発し、ねじれ剛性の強化と軽量化を両立した結果、セグメントトップクラスのパワーウェイトレシオ2.37kg/PSを実現するとともに、切れ味のある走りを実現した。
外観はすっきりとしたヘッドライト、フラッシュ式ドアハンドルや格納式リアスポイラーなどによってミニマリズムを志向しつつも、フェンダー周りやリヤエンドには筋肉質な力強さを融合している。内装も上質な革とアルミやカーボンを融合し、洗練された乗り心地とともに視覚的満足感を与えるものになっている。
発表 | 2019年 |
全長/全幅/全高/ホイールベース | 4656/1974/1301/2670mm |
パワートレイン | 3.9リッターV8ツインターボ |
総排気量 | 3855cc |
最高出力 最大トルク | 456kW (620PS)/5750〜7500rpm 760Nm/3000〜5750rpm |
トランスミッション/駆動方式 | 8速DCT、リヤ駆動 |
車両重量 | 1570kg |
0→100km/h加速 | 3.4秒 |
最高速度 | 320km/h超 |
フェラーリ ローマ スパイダー
クーペから3年あまり遅れて登場したスパイダーは、Aピラーやシル部分、ウィンドウフレームなどを専用設計した。また、ソフトトップ構造に合わせてリヤまわりにも手が加えられている。高剛性化を施したオープンボディにもかかわらず、クーペ仕様から増加した重量は84kgにとどまる。
発表 | 2023年 |
全長/全幅/全高/ホイールベース | 4656/1974/1301/2670mm |
パワートレイン | 3.9リッターV8ツインターボ |
総排気量 | 3855cc |
最高出力 最大トルク | 456kW (620PS)/5750〜7500 rpm 760Nm/3000〜5750 rpm |
トランスミッション/駆動方式 | 8速DCT、リヤ駆動 |
車両重量 | 1654kg |
0→100km/h加速 | 3.4秒 |
最高速度 | 320km/h超 |
フェラーリ ローマの新車・中古車価格

フェラーリ ローマの認定中古車を検索すると、最も安いものでも2021年登録で21000km走行した個体で2550万円。オプションも装着されているため単純な比較はできないが、約3000万円の新車価格を考えると、やはり値落ちは少ないと言えるだろう。当然、装備や仕様で価格に幅があり、エクステリアとインテリアに豊富なオプションを装着した258km走行の2022年式は4000万円を超えている。
新車価格 | 中古車価格 | |
フェラーリ ローマ(クーペ) | 2870万円 (2023年当時) | 2550万円~ |
フェラーリ ローマ スパイダー | 3280万円 (同上) | 4140万円~ |
フェラーリ ローマについて多い質問

以下では、フェラーリ ローマについて多い質問・疑問に回答する。
Q1:フェラーリ・ローマは「日常使い」に向いているか?
ローマはフェラーリの中でも比較的穏やかな特性のモデルである。それに加え、2+2の座席構成や適度な車高、快適な乗り心地を備えているため、都市部での普段使いや週末のドライブなどにも使用できる。また、外観もエレガントではあるが派手すぎず、控えめな印象を与えるため日本の街にも違和感なく自然に溶け込めるだろう。
Q2:ローマはポルトフィーノの後継モデルか?
直接の後継とはされていないが、プラットフォームやエンジンなど技術的な共通点は多い。また、フロントミッドシップの2+2クーペという位置づけも、ポルトフィーノやその前のカリフォルニアと同様だ。ローマ スパイダーは、実質的にポルトフィーノMの後継と見なされる。クーペのローマは、よりミニマルで洗練されたスタイルを提案する“新たなフェラーリの入り口”として位置づけられている。
Q3:フェラーリ ローマは故障が多いか?
ローマを含む現在のフェラーリは、従来のイメージとは異なり信頼性は高い。7年間のメンテナンスプログラムも標準で付帯されており、正規ディーラーでの定期点検を受けていればトラブルのリスクは低いと考えられる。ただし、ハイパフォーマンス車であることに変わりはなく、タイヤやブレーキの消耗は早めで、長期間乗らずに放置するとバッテリー上がりや警告灯表示などが起きやすいといった点には注意が必要。
フェラーリ ローマの購入方法

フェラーリは1960年代から輸入をてがけているコーンズ・モータースが輸入総代理店(インポーター)として取り扱っている。新車販売はコーンズ以外の正規ディーラーも行っており、北海道から九州まで大都市圏を中心に全国の29店舗で購入できる。メンテナンス等も考えると、中古車も正規ディーラーから認定中古車を購入するのが安心だろう。
PHOTO/Ferrari S.p.A.