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M3(F80)
ひと回り拡大したボディ


「3シリーズ」は2011年登場の第6世代のF30系から、4ドアサルーン、ツーリングワゴン、そして5ドアハッチバックのグランツーリスモを「3シリーズ」として、2ドアクーペとコンバーチブルを「4シリーズ」と区分されることとなった。
F30型では、フルモデルチェンジにあたりホイールベースを先代の2760mmから2810mmへと大幅に延長。そのおかげでボディも全長4624mm、全幅1800mm、全高1416mmとひと回り拡大されて前後トレッドも広げられているほか、シャシー自体を55kg軽量化するとともに前後重量配分を50:50に最適化することで、ドライビングダイナミクスのさらなる向上が図られていた。
そんなF30型3シリーズをベースとしたF80型「M3」が、2ドアの「M4」とともにデビューしたのは2013年12月のこと。ボディタイプは4ドアサルーンのみの設定で、M3セダンとして初めてルーフをCFRP(炭素繊維強化プラスチック)化。またストラットタワーバー、プロペラシャフト、リヤトランクフードの構造材にもCFRPを使用するほか、ボンネットフードやサイドパネル、フロントマクファーソンストラット、リヤマルチリンクのサスペンションのコントロールアームなどをアルミ化するなど徹底した軽量化の結果、車重は1520kgとM4に比べても23kgの増加に留まっている。
先代のV8から大幅ダウンサイズ



加えてM4と同様に、左右リヤタイヤのロック率を0%から100%まで自在に調整できるアクティブMディファレンシャル、電動パワーステアリングを3段階に調整できるMサーボトロニックを搭載するなども装備。それらを含めたクルマ全体の開発には、ワークスドライバーのブルーノ・スペングラー、ティモ・グロッグも加わり、サーキット走行能力の向上が図られているという。
ノーズにインストールされるエンジンは、こちらもM4と同じ2979cc直列6気筒DOHCインタークーラー付きツインターボ“S55B30”ユニット。先代のV8に対して排気量が1リッターほどダウンサイズされているが、高剛性のクローズドデッキシリンダーブロック、軽量クランクシャフト、強化ピストン&コンロッド、最大ブースト圧1.2barのモノスクロール・ツインターボチャージャー、アクティブエキゾースト、インタークーラーなどの採用により、最高出力431PS/5500〜7300rpm、最大トルク550Nm/1850〜5500rpmと、先代を上回るスペックを手にいれることに成功している。またスロットル・レスポンスの向上、燃費、CO2排出量の改善といった実用面での改良が施されているのも、特筆に値する。
なお標準の6速MTとオプションの7速DCTという組み合わせはM4と同様。ギヤ比の変更など公式なアナウンスはないが、0-100km/h加速は6速MTで4.3秒、7速DCTで4.1秒とM4と同じパフォーマンスを発揮する。
世界限定1200台のCSも

そして2017年モデルでヘキサゴナル・デザインのアダプティブLEDヘッドライト、LEDテールライトが装着されるなどのマイナーチェンジが行われたのに伴い、V8エンジンを450PSへとパワーアップし、アクティブMディファレンシャルとDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)、サスペンションのセットアップ、Mスポーツフロントシート、Mスポーツエキゾーストシステムなどを装着した「M3コンペティション・パッケージ」をラインナップ。
さらに2018年モデルではテールランプの変更と、排ガス規制にあわせてガソリン微粒子収集フィルターを装着するスペースを捻出するためにプロペラシャフトをスチール製に変えるなどのマイナーチェンジを実施。また世界限定1200台(日本限定30台)で、453PS/601Nmにファインチューンされた直6ツインターボユニット、CFRP製ボンネット、フロントスプリッター、薄肉サイドガラスなどを備えた「M3 CS」が発売された。
しかしながら、2018年10月をもって、2019年から施行されるWLTPのフェイズ3への対応を理由にM4よりひと足先に生産が終了している。