ドリフトが楽しめる新型フォルクスワーゲン ゴルフRにPEC東京で試乗

新型フォルクスワーゲン ゴルフRをPEC東京で試乗「簡単にドリフトが楽しめる感動的ゴルフだ!」

新型「フォルクスワーゲン ゴルフR」を、千葉・木更津のポルシェエクスペリエンスセンター東京(PEC東京)で試乗した。通称「ゴルフ8.5」と呼ばれる8代目ゴルフのマイナーチェンジ版をベースに、シリーズの頂点に立つスポーツモデルがこのゴルフRだ。

Volkswagen Golf R

ホットハッチの枠を超える俊足

内外装のブラッシュアップに加え、エンジン出力や電子制御シャシーが強化された本モデルは、「究極のパフォーマンスと実用性という、相反する2要素を高次元で両立する」と謳われ、開発はニュルブルクリンク北コース、通称ノルドシュライフェで徹底的に鍛え上げられたという。

すでに公道試乗記をお届け済みだが、今回はPEC東京というクローズドコース故に、ESCオフやモードの変更といった条件下での挙動変化にフォーカスしてレポートする。まずは基本スペックを確認しよう。

ベース車はコンパクトハッチの代名詞、フォルクスワーゲンゴルフ。その8.5世代となるマイチェン版に、最高出力333PS、最大トルク420Nmを誇る2.0リッター直4ターボエンジンを搭載。トランスミッションは7速DSG、駆動方式は4MOTIONによるAWDだ。5600rpmから最高出力を発生させ、レッドゾーンの始まる6500rpmまでワイドなパワーバンドを持っている。0-100km/h加速は4.6秒と、ホットハッチの枠を超える俊足ぶりを見せる。

もはやFFベースとは思えない挙動

PEC東京は高低差あるハンドリングトラックに加え、散水設備付きのドリフトサークルなど、豊富なバリエーションを誇る施設だ。中でも印象的だったのが、そのドリフトサークルでの定常円旋回で体感した後輪トルクベクタリングの効き味である。

新型ゴルフRに搭載される4MOTIONには、後輪左右のトルク配分を個別に制御できるトルクベクタリング機構が組み合わされている。多板クラッチ式で、従来のハルデックス方式よりもレスポンスに優れ、コーナリング中に外輪の回転を積極的に高めて車体の向きを変えていく。ステアリング舵角やアクセル開度、ヨーレート、車速など複合的な情報をもとに、ドライバーの意図に沿った後輪制御を行う。

その挙動は、もはやFFベースとは思えないほどにFRライクである。アクセル操作に対する後輪の反応がきわめてリニアで、まるで軽量な後輪駆動スポーツカーを操っているかのような愉悦がある。今回はスポーツやレースではなく、カスタムモードを選択した。オートアップシフトが作動しないので、狭いドリフトサークルで1速を維持して自在な車両コントロールが可能だった。

このリヤトルクベクタリングはサーキットでも効果絶大で、ニュルブルクリンクでの先代比ラップタイムは12秒短縮されたという。ちなみにブレーキは18インチ径の2ポットフローティングキャリパーに刷新。これにより、ニュルでの連続走行ラップ数は18から21へと向上。さらに新設計の鍛造ホイールは従来比20%、10kgから8kgへと軽量化され、冷却性能の向上にも貢献している。

スポーツドライビングの醍醐味を堪能

ローンチコントロールも試せた。変速機をスポーツモード、ドライブモードをS、ESCはスポーツまたは完全オフに設定。左足ブレーキを強く踏み、右足でアクセルを全開にすると4000rpm程度で回転が固定され、ブレーキをリリースすればAWDのトラクションを最大限に活かしたロケットスタートが決まる。用途は草レースのスタンディングスタートかジムカーナの発進くらいだろうが、マシンポテンシャルを把握したい向きにはおすすめしたい。

先導車付きだがハンドリングトラックでも試乗できた。ここはニュルブルクリンクやラグナセカなど、世界の名だたるサーキットのコーナーをオマージュしたコーナーが点在する、走って楽しいコースだ。ここでは先導車を運転するインストラクターにコース中央を走るよう指示された。これは苦しいラインを取らせて擬似的にタイトコーナーを作ることで、トルクベクタリングの効果を明確に体感させるためだろう。

ペースは控えめながら、想像以上にクイックで爽快だ。ステアリングの応答も低速域のロックトゥロックが2回転未満とタイトで、アンチラグ制御によるターボレスポンスや勇ましい排気音とあいまって、スポーツドライビングの醍醐味を堪能できた。

1キャラあたり250万円?

ハンドリングトラックでは兄弟車であるゴルフGTIとの比較試乗も行った。GTIはFWDでトルクベクタリングを持たず、出力も265PSと控えめな分、アクセルを踏み込むと素直にアンダーステアが現れる。懐かしのトルクステアも健在で、こちらは“昔ながらのホットハッチ”らしさが際立つ印象で、個体差の可能性もあるが、GTIの方がエンジンサウンドも迫力があった。

とはいえ、Rの持つFR的挙動とAWDの安心感、そして新たな走りの世界は、GTIとは別次元にある。新型ゴルフRは、まさに“別格”ホットハッチである。ドライブモードも街乗りのコンフォートから、ワインディングでのスポーツ、あるいはサーキットで使えるレースなど用意され、明確に異なるキャラクターに変身する。ゴルフらしからぬ700万円台という価格ではあるものの、1キャラあたり250万円と考えれば納得の内容ではなかろうか。

PHOTO/平野陽(HIRANO Akio)、フォルクスワーゲン・ジャパン、Volkswagen AG

SPECIFICATIONS

フォルクスワーゲン・ゴルフR

ボディサイズ:全長4295×全幅1790×全高1460mm
ホイールベース:2620mm
車両重量:1510kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1984cc
最高出力:245kW(333PS)/5600〜6500rpm
最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2100〜5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後225/40R18
パフォーマンス 0→100km/h加速:4.6秒
車両本体価格:704万9000円

問い合わせ/フォルクスワーゲン カスタマーセンター https://www.volkswagen.co.jp/

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著者プロフィール

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka) 近影

吉岡 卓朗(Takuro Yoshioka)

大学卒業後、損害保険会社に就職するも学生時代から好きだったクルマのメディアに関わりたいと、1999年に…