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Lamborghini Huracan STO
太田哲也、富士スピードウェイで640psに「参戦」!

スーパートロフェオという名のウラカンベースのレースカーがある。ランボルギーニ ウラカン STOは、そのスーパートロフェオの公道版とも言うべきクルマだ。車名のSTOは、Super Trofeo Omologata(スーパートロフェオ・オモロガータ)の頭文字をとったもの。オモロガータとはイタリア語でホモロゲーションのことで、オーナーがサーキット走行を楽しむことを前提としたロードカーだ。
ナンバー付きだが、最高出力はなんと640ps! ランボルギーニの広報マンによれば、GTレースやGT3カテゴリーのランボルギーニと比べても、遜色ない走りを披露するそうだ。GT3はエアリストリクター付きなので出力はSTOの方が上回る。そんなウラカン STOの試乗会が富士スピードウェイで開催され、僕も「参戦」してきた。
ナンバー付きだからと侮っていた・・・

実車は徹底的にワイド&ローな本格的レーシングカーのフォルムだ。目の前にした時「タイヤ、付いていないんじゃないの? ホイールだけ?」と言いたくなるほどの超扁平タイヤ。なんと扁平率30だ。いくらナンバー付きとは言え、これでコンビニの駐車場はきついなと思った。
外観で目につくのは、エアダクト類の大きさと多さで、冷却すべき高熱の発生を想像させられる。リヤのエンジンフード上には、最近のレースカーのトレンドであるコーナリング時のスタビリティを向上させるシャークフィンが存在感を放つ。
そうは言ってもナンバー付きだから、普通のクルマの試乗の気分で乗り込んだ。ちなみに僕は免許は裸眼でオーケーだが、サーキットを走る時はいつもメガネをかける。しかし「まあ、いいや、先導車もつくし」と安易な気持ちでメガネをかけずにコースインした。これが失敗だった・・・。
速すぎて、目が付いていかない~

先導車に追い付かないように前のクルマとの間隔をあけてコースインする。最初はゆっくりと、それでストレートでアクセルを強く踏んでみた。そうしたらもの凄く速い! 目がついていかなーい。
前走車に置いて行かれ、気が動転し、本来は4周まで走ることを許されていたのに、間違えて3周でピットインしてしまった。落ち込んだあ。何やってんだオレは! この時点での試乗では、ただ「速い!」ということしか感想が出てこなかった。情けない。
それで次の走行の時はメガネをかけて、気持ちをロードカーの試乗ではなくて、レーシングカーのテストのつもりになって走ってみた。人間の順応力って凄いな、と思ったのだけど、気持ちの整理ができて目が慣れてきたこともあり、よく走れた。さっきはスピードメーターをみる余裕さえなかったが、280km/hが表示されているのが確認できた。
昔とまったく違う乗り物~曲がる曲がる!

昔のレーシングカーと比べて大きな進化だなと思ったことがある。昔のハイパワー・ミッドシップカーはフロントにアクセルオフでしっかりと荷重をかけないとアンダーステアになって曲がらなかった。でも、ウラカン STOは、荷重移動を気にしないでもハンドルを切れば曲がる。コーナーの中でもハンドルを切れば、さらによく曲がってくれる。とにかく、旋回性がいい。
特徴的なフロントノーズの形状により、ラジエーターへの空気流入量を増やしつつ、フロントのダウンフォースを高める役目があるそうだ。さらにフロントフェンダーの上のルーバーは、タイヤハウス内を減圧しリフトを抑える。タイヤやサスペンションの進化とともに、昔はそれほど突き詰められていなかった空力効果が、安定したグリップを生んでいることは想像に難しくない。そもそもトラクション性能が高いので、限界値が高く、電子制御の介入も激しくない。それも好印象だった。
曲がりたくなったらさらに切ればよいのだ。そんな味つけだと分かり、オーバースピード気味でコーナーに入ってみたが、その分、多少はアンダーステアが出るが、すぐに収まり旋回を始めてくれる。むしろ曲がりすぎる印象で、「本当に切って大丈夫かな」と思うくらいに良く曲がる。
サーキット走行の楽しさは絶対スピードではないが・・・

そんな風にドライビングを楽しむ余裕ができて、メガネをかけた4周は楽しく走れた。さらにフリーで走る機会も与えられ、そのときは走りながら、このクルマを所有したら楽しいだろうなと思った。サーキット走行の楽しさは絶対スピードではない。コーナリングとかブレーキングとかテクニック差が出るところが面白い。しかしやっぱりパワーがあって速いこと事態もオモシロイものだとSTOのステアリングを握りながら思ったのだった。
またブレーキの進化も感じた。カーボン製ローターをグループCに最初に導入したのは、1991年の初めてル・マン24時間を制したMAZDA 787Bだと記憶しているが、787Bのカーボンブレーキは、じわっと踏むと効かなかった。どんなときもガツンと踏み始めて、ローター温度を一気に上げることが必要だった。ところがSTOのそれは、低温時から安定して作動してくれるので安心できる。
異次元のスピードを誰でも体験可能!?

さて、ふと気づくと凄いスピードが出ている。昔のレーシングカーやハイパフォーマンスカーは、アンダーステアと格闘したり、リヤの挙動を抑えたり、じゃじゃ馬を乗りこなすのに必死だった。ストレートをフル加速するときは、蛇行しようとするクルマに修正舵を入れ続けることが必要だった。タイムを出す以前に、コース上にとどまっていることだけでも、テクニックと経験、そして度胸と覚悟が必要だった。
しかしSTOなら、ある程度の経験があるドライバーならさほどの恐怖を感じずに異次元のスピードを体験できるはずだ。つまりジェントルマンレーサーがサーキットを最大限に楽しめるように作られているのだ。
現役を離れて20数年が経つ今の自分にとってはこういう「優しさ」と「易しさ」はありがたい。多くのユーザーにとってもそうであろう。
ただし、絶対的な安心感があるものの、出ているスピードは尋常ではないから、気を抜いてはいけないと自分に言い聞かせつつ、あっという間にウラカン STOとの邂逅はフィナーレを迎える。
REPORT/太田哲也(Tetsuya OTA)
PHOTO/ランボルギーニ・ジャパン
【SPECIFICATIONS】
ランボルギーニ ウラカンSTO
ボディサイズ:全長4547 全幅1945 全高1220mm
ホイールベース:2620mm
乾燥重量:1339kg
エンジン:V型10気筒DOHC
総排気量:5204cc
最高出力:470kW(640ps)/8000rpm
最大トルク:565Nm(57.6kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ:前245/30R20 後305/30R20
0-100km/h加速:3.0秒
最高速度:310km/h
車両本体価格(税込):4125万円
【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889
【関連リンク】
・ランボルギーニ 公式サイト
http://www.lamborghini.com/jp