太田哲也、ランボルギーニ ウラカン STOの640psを体感!

ランボルギーニ ウラカン STOインプレッション第3弾! 太田哲也が抱いた「優しさ」と「易しさ」

太田哲也、ランボルギーニ ウラカン STOの640psを体感!
富士スピードウェイでランボルギーニ ウラカン STOの試乗に臨んだ筆者の太田哲也氏。果たしてウラカン STOは筆者にどんな感慨を抱かせたのか?
今もなお、ロータス カップ ジャパンへの参戦などサーキットドライブを積極的に楽しむジェントルマンレーサーであり、モータージャーナリストとしても活躍している太田哲也氏。かつてプロドライバーとして数多くのレースに参戦しモータースポーツの頂点を体験してきた太田哲也氏にとって、現代最高峰のパフォーマンスをもつランボルギーニ ウラカン STOとはどんなクルマに映ったのか? 富士スピードウェイを舞台に行われた試乗会で得た太田哲也氏のインプレッションをお届けする。

Lamborghini Huracan STO

太田哲也、富士スピードウェイで640psに「参戦」! 

太田哲也、ランボルギーニ ウラカン STOの640psを体感!
富士スピードウェイを舞台に開催されたランボルギーニ ウラカン STOの試乗会に参加。先導車ありのテストドライブとはいえ、ストレートでは300km/h近くまで出せるハイスピード・インプレッションになった。

スーパートロフェオという名のウラカンベースのレースカーがある。ランボルギーニ ウラカン STOは、そのスーパートロフェオの公道版とも言うべきクルマだ。車名のSTOは、Super Trofeo Omologata(スーパートロフェオ・オモロガータ)の頭文字をとったもの。オモロガータとはイタリア語でホモロゲーションのことで、オーナーがサーキット走行を楽しむことを前提としたロードカーだ。

ナンバー付きだが、最高出力はなんと640ps! ランボルギーニの広報マンによれば、GTレースやGT3カテゴリーのランボルギーニと比べても、遜色ない走りを披露するそうだ。GT3はエアリストリクター付きなので出力はSTOの方が上回る。そんなウラカン STOの試乗会が富士スピードウェイで開催され、僕も「参戦」してきた。

ナンバー付きだからと侮っていた・・・

太田哲也、ランボルギーニ ウラカン STOの640psを体感!
3段階に調整可能なリヤウイングによって、ダウンフォースを420kg/363kg/324kgと任意に変更可能。車体を覆うアウターパネルのほとんどは軽量かつ剛性の高いカーボン製となる。

実車は徹底的にワイド&ローな本格的レーシングカーのフォルムだ。目の前にした時「タイヤ、付いていないんじゃないの? ホイールだけ?」と言いたくなるほどの超扁平タイヤ。なんと扁平率30だ。いくらナンバー付きとは言え、これでコンビニの駐車場はきついなと思った。

外観で目につくのは、エアダクト類の大きさと多さで、冷却すべき高熱の発生を想像させられる。リヤのエンジンフード上には、最近のレースカーのトレンドであるコーナリング時のスタビリティを向上させるシャークフィンが存在感を放つ。

そうは言ってもナンバー付きだから、普通のクルマの試乗の気分で乗り込んだ。ちなみに僕は免許は裸眼でオーケーだが、サーキットを走る時はいつもメガネをかける。しかし「まあ、いいや、先導車もつくし」と安易な気持ちでメガネをかけずにコースインした。これが失敗だった・・・。

速すぎて、目が付いていかない~

太田哲也、ランボルギーニ ウラカン STOの640psを体感!
5.2リッターV10が絞り出す最高出力は640ps、最大トルクは565Nmに達する。ロードカーではなくレーシングカーのテストのつもりで挑んだ。

先導車に追い付かないように前のクルマとの間隔をあけてコースインする。最初はゆっくりと、それでストレートでアクセルを強く踏んでみた。そうしたらもの凄く速い! 目がついていかなーい。

前走車に置いて行かれ、気が動転し、本来は4周まで走ることを許されていたのに、間違えて3周でピットインしてしまった。落ち込んだあ。何やってんだオレは! この時点での試乗では、ただ「速い!」ということしか感想が出てこなかった。情けない。

それで次の走行の時はメガネをかけて、気持ちをロードカーの試乗ではなくて、レーシングカーのテストのつもりになって走ってみた。人間の順応力って凄いな、と思ったのだけど、気持ちの整理ができて目が慣れてきたこともあり、よく走れた。さっきはスピードメーターをみる余裕さえなかったが、280km/hが表示されているのが確認できた。

昔とまったく違う乗り物~曲がる曲がる!

太田哲也、ランボルギーニ ウラカン STOの640psを体感!
現役当時は400km/hオーバーとも言われる、じゃじゃ馬のグループCカーを振り回していた筆者にとって、ウラカン STOはとてつもなく速いものの、素直に反応するハンドリングや限界が高いトラクション性能などが好印象だったと語る。

昔のレーシングカーと比べて大きな進化だなと思ったことがある。昔のハイパワー・ミッドシップカーはフロントにアクセルオフでしっかりと荷重をかけないとアンダーステアになって曲がらなかった。でも、ウラカン STOは、荷重移動を気にしないでもハンドルを切れば曲がる。コーナーの中でもハンドルを切れば、さらによく曲がってくれる。とにかく、旋回性がいい。

特徴的なフロントノーズの形状により、ラジエーターへの空気流入量を増やしつつ、フロントのダウンフォースを高める役目があるそうだ。さらにフロントフェンダーの上のルーバーは、タイヤハウス内を減圧しリフトを抑える。タイヤやサスペンションの進化とともに、昔はそれほど突き詰められていなかった空力効果が、安定したグリップを生んでいることは想像に難しくない。そもそもトラクション性能が高いので、限界値が高く、電子制御の介入も激しくない。それも好印象だった。

曲がりたくなったらさらに切ればよいのだ。そんな味つけだと分かり、オーバースピード気味でコーナーに入ってみたが、その分、多少はアンダーステアが出るが、すぐに収まり旋回を始めてくれる。むしろ曲がりすぎる印象で、「本当に切って大丈夫かな」と思うくらいに良く曲がる。

サーキット走行の楽しさは絶対スピードではないが・・・

太田哲也、ランボルギーニ ウラカン STOの640psを体感!
かつてのレーシングカーと互角の速さを実現しながら、ドライブ時の安定感やブレーキの効き方などは隔世の感があると実感した筆者。ドライブの楽しさは絶対的なスピードではないが、パワーがあって速いクルマも面白いと語る。

そんな風にドライビングを楽しむ余裕ができて、メガネをかけた4周は楽しく走れた。さらにフリーで走る機会も与えられ、そのときは走りながら、このクルマを所有したら楽しいだろうなと思った。サーキット走行の楽しさは絶対スピードではない。コーナリングとかブレーキングとかテクニック差が出るところが面白い。しかしやっぱりパワーがあって速いこと事態もオモシロイものだとSTOのステアリングを握りながら思ったのだった。

またブレーキの進化も感じた。カーボン製ローターをグループCに最初に導入したのは、1991年の初めてル・マン24時間を制したMAZDA 787Bだと記憶しているが、787Bのカーボンブレーキは、じわっと踏むと効かなかった。どんなときもガツンと踏み始めて、ローター温度を一気に上げることが必要だった。ところがSTOのそれは、低温時から安定して作動してくれるので安心できる。

異次元のスピードを誰でも体験可能!?

太田哲也、ランボルギーニ ウラカン STOの640psを体感!
ウラカン STOの試乗を終えた筆者は「ある程度の経験があるドライバーならさほどの恐怖を感じずに異次元のスピードを体験できるはずだ」と、ジェントルマンレーサーに最適なモデルだと結論付けた。

さて、ふと気づくと凄いスピードが出ている。昔のレーシングカーやハイパフォーマンスカーは、アンダーステアと格闘したり、リヤの挙動を抑えたり、じゃじゃ馬を乗りこなすのに必死だった。ストレートをフル加速するときは、蛇行しようとするクルマに修正舵を入れ続けることが必要だった。タイムを出す以前に、コース上にとどまっていることだけでも、テクニックと経験、そして度胸と覚悟が必要だった。

しかしSTOなら、ある程度の経験があるドライバーならさほどの恐怖を感じずに異次元のスピードを体験できるはずだ。つまりジェントルマンレーサーがサーキットを最大限に楽しめるように作られているのだ。

現役を離れて20数年が経つ今の自分にとってはこういう「優しさ」と「易しさ」はありがたい。多くのユーザーにとってもそうであろう。

ただし、絶対的な安心感があるものの、出ているスピードは尋常ではないから、気を抜いてはいけないと自分に言い聞かせつつ、あっという間にウラカン STOとの邂逅はフィナーレを迎える。

REPORT/太田哲也(Tetsuya OTA)
PHOTO/ランボルギーニ・ジャパン

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【SPECIFICATIONS】
ランボルギーニ ウラカンSTO
ボディサイズ:全長4547 全幅1945 全高1220mm
ホイールベース:2620mm
乾燥重量:1339kg
エンジン:V型10気筒DOHC
総排気量:5204cc
最高出力:470kW(640ps)/8000rpm
最大トルク:565Nm(57.6kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ:前245/30R20 後305/30R20
0-100km/h加速:3.0秒
最高速度:310km/h
車両本体価格(税込):4125万円

【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889

【関連リンク】
・ランボルギーニ 公式サイト
http://www.lamborghini.com/jp

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