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テーマや精神性は多種多様のアートカー
968 L’ART by L’Art de L’Automobile
ポルシェは究極のキャンバスなのか──。ここに登場する多くのアーティスト達にとっては、世界最高レベルの走行性能を持つスポーツカーでもそう見えるのかもしれない。2021年に発表された「968 L’ART」をはじめ多くのアートカーは、そのテーマや精神性は多種多様。これを見れば、自動車を起点にアートを完成させるには、単に奇をてらったペイントを施すだけでは不十分だと分かるかもしれない。
フランス・パリを拠点とするデザインブランド「L’Art De L’Automobile」の創業者、アチュール・カー(Arthur Kar)は、ポルシェ 968をベースに「968 L’ART」を製作。レトロなエクステリアによって、クルマとファッションの結びつきを表現した。968 L’ARTは、968のデビュー30周年を記念して、2021年のパリ・ファッションウィークで公開。さらに、同じ世界観を持つウェアのカプセルコレクションも発表された。
この968 L’ARTは見事なグリーンパールのボディカラーをまとい、見る角度によって3つの色に見えるという神秘的な側面を持つ。コクピットにはRECAROシートを装着し、センターパネルにエクステリアカラーと同じグラフィックレザーを採用した。さらにBOSEがカスタムデザインしたオーディオシステム、ダッシュボードにはTAGホイヤーが製作した特注のクロノグラフを搭載している。
996 Swan by Chris Labrooy
ポルシェは、スコットランド出身のデジタルアーティスト、クリス・ラブロイ(Chris Labrooy)に、彼のデジタルアート作品を初めて現実化するチャンスを提供。その結果、中国におけるポルシェ販売20周年を記念してデザインされた「996 スワン」が誕生している。
中国において白鳥は幸福を象徴しており、ベースとなったのは、911(タイプ996)。タイプ996は20年前に中国で初めて販売されたポルシェ製スポーツカーだ。このアートカーは2021年11月初旬に上海で初公開され、今後、中国の様々な地域で展示される予定となっている。
911 Carrera by Nelson Makamo
南アフリカ出身の世界的なビジュアルアーティスト、ネルソン・マカモ(Nelson Makamo)は、子どもの頃からポルシェのオーナーとなることを夢見ていた。世界的なアーティストとなったマカモは、すぐにジェットブラックメタリックのボディカラーの911 カレラをオーダー。このクルマを動くキャンバスに変えようと決意する。
マカモはリヤバンパー、フロントシート・モールディング、ドアパネル・インサート、ステアリング、ダッシュパネル・インサート、パーキングブレーキコンソール、サイドミラーカバーなどに、彼自身の手でカラフルな“作品”を描いた
左側のドアパネルのインサートには「Mma」という文字が刻まれた。これは彼の母国語であるセペディ語で「母」を意味する言葉。マカモによって「My Life in Motion」と名付けられた911 カレラのアートプロジェクトは、母親をはじめとする女性への感謝、成功への過程で出会ったさまざまな人々への敬意も込められているという。
マカモは、このポルシェ911によって、アフリカの子どもたちの創造性が開花することを願っている。才能、勤勉、諦めない気持ち、そして家族の揺るぎないサポートがあれば、自分の情熱によって成功をつかむことが可能だと、マカモはすべての女の子と男の子に知ってもらいたいのだ。
Taycan Art Car by Richard Phillips
アメリカの著名なアーティスト、リチャード・フィリップス(Richard Phillips)は、ポルシェ初のフル電動スポーツカー「タイカン」をベースに特別なアート作品を制作。 フィリップスが描いた『夜の女王(The Queen of the Night)』は、タイカンのフロントからリヤに向かって描かれた美しい花々がルーフとリヤフェンダーを滑るように移動し、その先で青空と蝶々が現れるようにイメージした
このタイカン アートカーは、2020年12月にスイス・チューリッヒのバーンホフ通りにあるレストラン「リューホフ(Leuehof)」においてライブ制作された。世界的なオークション「RMサザビーズ」に出品され、20万ドル(約2160万円)で落札されている。
アートカーを企画したポルシェ・スイスAGは、換算金額18万5000スイスフランの全額をスイスの非営利団体「スイセカルチャー・ソシエーレ(Suisseculture Sociale)」に寄付。ポルシェとフィリップスは、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により、特に大きな被害を受けたスイスのアーティストを支援することを目指してこの企画を立ち上げたという。
Taycan Artcar by SUMO!
ポルシェセンター・ルースのオープンを記念し、ポルシェ・オブ・ロッシュ・ルクセンブルグ(Porsche of Losch Luxembourg)はルクセンブルクの著名なアーティスト「SUMO!」とコラボレーションし、「未来」をテーマにしたユニークなタイカンのアートカーを制作した。
ポルシェセンターのチームとの密接な協力のもと、まずタイカンを完全に分解。その後、個々のパーツはSUMO!が作業を行う秘密のアトリエへと搬送された。プロジェクトの完成までには5ヵ月以上を要し、インテリア、ドア内張、ホイール、キーまでもがペイントされている。このSUMO!によるアートカーは、今後、世界各地のイベントなどで展示される予定となっている。
Taycan Artcars by Megan Claire Keho and Rei Misiri
ポルシェ・カーズ・カナダは、世界的な芸術コンテスト「アートバトル(Art Battle)」と協力し、2021年9月に「アートバトル・トロント」を開催。世界中から注目を集めるふたりの現代アート作家が、2台のタイカンに独自のカラーリングを施した。
会場とライブ配信で観覧した大勢のオーディエンスの前で、ふたりのアーティストはそれぞれのアプローチで、2時間をかけてタイカンに独自のアートを描いた。ブラックのタイカンにゴージャスな馬を描いたのは、トロントを拠点とする書家で壁画のスペシャリストでもあるレイ・ミシリ(Rei Misiri)。
メーガン・クレア・ケホー(Megan Claire Keho)は、対照的なホワイトのタイカンにピンクを主体とする作品を描いている。完成後行われた投票の結果、ミシリが手掛けたゴージャスなカラーリングのブラック・タイカンが勝利を手にした。