創業者の父親の名を冠したケーニグセグの最新モデル

ケーニグセグ ジェスコ 完全解説! 1600psを誇る最新スーパースポーツを紐解く

ケーニグセグ ジェスコのフロントスタイル
ケーニグセグ ジェスコのフロントスタイル
エンスージアストの想像を遥かに超えるハイパーカーを続々と生み出してきたスウェーデン発祥のケーニグセグ。ジュネーブ・ショーで発表したアゲーラに続く新たなモデル「ジェスコ」とはどのようなモデルなのか? 1600psというとてつもないパワースペックの秘密に迫る。

Koenigsegg Jesko

新作「ジェスコ」は125台の限定

ケーニグセグ ジェスコのフロントスタイル
ワールドプレミアされたケーニグセグ ジェスコのフロントスタイル。

1994年にスウェーデンに誕生したケーニグセグ・オートモーティブ社は、昨年創立25周年を迎え、もはやスーパーカーのファンの間では、その存在を知らない者は皆無に近くなった。ブガッティとの最高速争いや、メガ・カー(1メガワットが1341.02psに相当することから、1メガワットを超える性能をもつエンジンを搭載するモデルをこう呼ぶようになった)の登場、あるいはスマートフォンを操作するだけで、ボディパネルのクロージングを完全自動で行うロボタイズド・システムの実用化、レゲーラでPHEVのシステムを搭載したこと等々、この25年間の間にケーニグセグは、実にさまざまな話題をジュネーブから世界に発信してくれた。

そして、この極北のスーパーカーメーカーとも、孤高のスーパーカーメーカーとも例えられるケーニグセグは、今回のジュネーブ・ショーで自らの25周年を祝するという意味もあったのだろう、これまでのアゲーラに続くニューモデルを披露した。「Jesco(ジェスコ)」とネーミングされたこのモデルは、今後125台が限定生産される見込み。ちなみにネーミングのJescoとは、ケーニグセグ社の代表であるクリスチャン・フォン・ケーニグゼグの父である、ジェスコ・フォン・ケーニグセグの名前に由来するもの。創業時から長年にわたり経営をサポートしてくれた父へのプレゼントだという。

レーシングモデルにも通じるエアロデバイス

ケーニグセグ ジェスコのサイドビュー
ケーニグセグ ジェスコのサイドビュー。大型のリヤウイングをはじめ様々な電子エアロデバイスを搭載している。

ボディデザインは、前作のアゲーラと比較すると、さらに洗練さが増した印象だ。優秀なエアロダイナミクスを得るためにボディを水中生物のシルエットから得るというデザインコンセプトは今回も変わっていない。デザイン面での見どころは、やはり大きく湾曲したフロントウインドウとサイドウインドウとの組み合わせによるウインドウグラフィック、そして大型のリヤウイングといったところだろうか。実際にジェスコの姿を仔細に観察すれば、そこには最新のレーシングモデルにも通じる、さまざまなエアロデバイスが導入されていることがわかる。また、このジェスコではドアやエンジンフードなど、すべてのパネルをスマートフォンや専用リモコンで開閉することが可能となっているのも特徴だ。

インテリアはスカンジナビア・デザインの極み

ケーニグセグ ジェスコのインテリア
ステアリングホイール内に大型のディスプレイを採用。スポーティかつ高級感を漂わせるケーニグセグ ジェスコのインテリア。

インテリアはさらに魅力的なデザインになった。操作系で大きな意味をもつのは、ステアリングと同時に回転するタッチスクリーン・ディスプレイとセンターコンソールの5インチ・スマートクラスター、ステアリングホイールにフィットされるデジタル・インストゥルメント・ディスプレイなど。シートやトリムも洗練されたデザインで、言い尽くされた言葉ではあるが、スカンジナビア・デザインのもつ機能性を改めて感じさせられる。スリーサイズがアゲーラからさらに拡大されたジェスコは、移動空間としてもさらに快適さを増している。トリプレックスダンパーを前後に装備したことで、走行中の乗り心地が大幅に改善されたことも注目したいところだ。

E85を使用すれば1600psを発揮!

ケーニグセグ ジェスコのパワートレイン
5.0リッターV型8気筒DOHCツインターボは燃料にE85を用いれば1600ps(!)という驚くべき数値をたたき出すという。

ジェスコがミッドに搭載するエンジンは、ケーニグセグ自製の5.0リッターV型8気筒DOHCツインターボ。通常のハイオクガソリンを使用した場合、最高出力は1280psに達するということだが、E85バイオエタノール燃料を調達することができる場合には、最高出力を1600psにまで増強することができる。燃焼速度の遅いE85燃料は、それゆえにノッキングの起きにくさなど、さまざまなメリットがあり、高出力を得るには魅力的な燃料。また、ケーニグゼグは20個のカーボン製エアタンクを装備して、エア駆動する小型電動コンプレッサーにリンクすることでターボラグの解消や大幅なブーストアップも可能にしている。

独自開発したトランスミッション「LST」

ケーニグセグ ジェスコのリヤスタイル
自社開発のトランスミッション「LST(ライト・スピード・トランスミッション)」を採用。9速のマルチクラッチというユニークなシステムだ。

このエンジンに組み合わされるトランスミッションも面白い。それはケーニグセグが自社開発したLST=ライト・スピード・トランスミッションと呼ばれるもので、9速のマルチクラッチユニットをもつもの。DCTとは異なり、隣のギア以外でも狙ったギアにそのままシフトできるメリットをもつ。しかもそのウェイトはわずか90kg。ケーニグセグの技術は、確実に進歩を遂げている証しだ。

ケーニグセグの情報によれば、125台のジェスコは、すでにそのすべてがソールドアウトであるという。もはや最近では、このようなインフォメーションにも驚きを感じなくなった。

最高速度482km/hを誇るジェスコ。いつか日本の地で見てみたいものだ。

REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

【SPECIFICATIONS】
ケーニグセグ ジェスコ
ボディサイズ:全長4610 全幅2030 全高1210mm
ホイールベース:2700mm
乾燥重量:1320kg
車両重量:1420kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:5.0リッター
ボア×ストローク:92×95.25mm
圧縮比:8.6
最高出力:955kW(1280ps)/7800rpm
※E85:1195kW(1600ps)
最大トルク:1500Nm/5100rpm
トランスミッション:9速LST
サスペンション:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(リム幅):前265/35-20(9.5J) 後325/30-21(12J)
最高速度:482km/h

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…