ジャガーとボルボが生み出したプラグインハイブリッドモデルを比較インプレッション

PHVを得た2台のCセグメントSUV、ジャガー Eペイスとボルボ XC40。「草食系の好敵手」を徹底検証

ジャガー Eペイス Rダイナミック SE P300eとボルボ XC40 リチャージ プラグインハイブリッド T5 インスクリプションのツーショット
ジャガーブランドとしては初上陸となるPHV採用のEペイス Rダイナミック SE P300e。最新PHVを搭載する欧州製SUVの実力はいかほどか? 直接のライバルとなるボルボ XC40 リチャージ プラグインハイブリッド T5 インスクリプションを連れ立って比較試乗を行う。
ジャガー初となるPHVがMY22のEペイスにラインナップされた。1.5リッター直3ガソリンエンジンにリヤモーターを組み合わせた先進のパワートレインだ。迎え撃つライバルは既にPHVをラインナップしているボルボ XC40。たっぷり乗り比べることで2台の走行性能や個性が顕になった。

Jaguar E-Pace R-Dynamic SE P300e×Volvo XC40 Recharge Plug-in Hybrid T5 Inscription

電動化の急先鋒が導き出したPHVの出来とは?

ジャガーブランドでは日本初のPHVになったEペイス。電動化を想定して開発されたプラットフォーム「PTA」を採用する。

ジャガーとボルボといえば、急速な電動化に突き進む欧州勢でも、野心的な戦略を標榜するブランドの代表格だ。なにせ、ジャガーは2025年までに、そしてボルボは2030年までに全車EV化を宣言している。ジャガーのいう2025年といえば、あと3年である! とはいえ、2022年1月現在、より現実的な選択肢はやはりプラグインハイブリッド(PHV)だろう。

今回取り上げるEペイスは同社としては日本初のPHVである。その動力システムの原理は、ボルボ60系やFFのジープのそれと酷似する。フロントにベルト駆動マイルドハイブリッドを組み合わせたエンジンを置いたうえで、リヤモーターを追加した4WDである。電池残量がある状態でエンジンを停止したEV走行時には、後輪駆動となる。

満充電EV距離が最長55kmから68kmに伸びたEペイス

1.5リッター直3ターボエンジンは最高出力200ps/最大トルク280Nm。車体前後に搭載する2個の電動モーターをあわせたシステム出力&トルクは309ps/540Nmとなる。

EペイスPHVの核となるのは1.5リッター3気筒ターボ。同社インジニウムシリーズとシリンダーレシオを共有するモジュラーエンジンで、単独での最高出力は200ps。そのエンジンに専用8速ATと約54psのスターター兼発電機と約109psのリヤモーターを組み合わせる。システム出力は309psで「P300e」というグレード名はそれに由来する。電池容量は15‌kWhだ。

こうした技術内容は昨年5月に20台限定で受注した「PHVローンチエディション」と共通だが、MY22からカタログモデルに昇格した試乗車では、満充電EV距離が最長55kmから68kmに伸びている。ちなみに、特徴的なブルーのボディカラーにパノラミックルーフと特徴的なパッケージオプションの数々を追加した試乗車は、そのローンチエディションに近い装備内容で、950万円前後の合計価格もローンチエディションのそれと同等だ。

進化した乗り心地と操縦性に驚かされる

というわけで、個人的にはジャガーPHVと初の手合わせとなったのだが、最初に驚いたのは、その3気筒とは思えない洗練されたパワーフィールではなかった。私の記憶にあるEペイスの乗り心地や操縦性から、明らかに1〜2ランクは上質になっていたからだ。

Eペイス本来の俊敏かつ正確な操縦性はそのままに、乗り心地はよりしなやかに、フワピタと路面に吸いつくようになった所作は見事というほかない。実はEペイスはMY21で大幅改良を受けている。知っている人は知っているように、それに合わせてプラットフォームが旧フォード由来の「D8」から電動化を想定した最新「PTA(プレミアムトランスバースアーキテクチャー)」に丸ごと刷新されたのだ。つまり、今のEペイスは内外装デザインは小変更なのに、中身は別物。下手なフルチェンジより大規模なマイナーチェンジといっていい。

完全なシャシーファスターにして、洗練の極みともいえるハンドリング

パワートレインのデキも素晴らしい。耳をすませば確かに3気筒の音がするが、音量自体が大きく抑制されているので、ほぼ気にならない。見た目の電池残量がゼロになっても実際は2割ほどの電力を維持して、リヤモーターを自在に制御する。

とくにダイナミックモードにセットすると、リヤモーターを駆使したフルタイム4WD状態となる。それでも構造上、前後輪どちらかにトルクが偏ることがない。なので、いかにアクセルペダルを乱暴に扱っても、Eペイスは涼しい顔で御し切って、素晴らしく正確で安定した旋回マナーを見せてくれる。完全なシャシーファスターにして、洗練の極みともいえるハンドリングである。

迫力のパワーフィールを見せるボルボ XC40

1.5リッター直3ターボにモーターを組み合わせ、システム最大出力262psを発生するボルボ XC40 リチャージ プラグインハイブリッド T5 インスクリプション。EV航続距離は41kmを計上する。

Eペイスのライバルとして連れ出したXC40のPHVの国内初導入は20年夏。こちらもモジュラー設計(通称「Eドライブ」)による1.5リッターターボが核となるが、約82psのモーターを内蔵する自社製7速DCTによる前輪駆動となる。

262psというシステム出力はEペイスより控えめだが、車重もEペイスより300kg以上も軽いために、実際の動力性能はボルボのほうが活発に感じられるくらいだ。電池容量はEペイスより小さめの10.91‌kWhで、カタログ上の最大EV走行距離は41kmである。Eペイスには電池残量を維持するホールドモードと積極充電するチャージモードが一緒になった「セーブモード」しかないが、XC40にはそれぞれ独立したモードが用意される。

XC40もおとなしく走っているかぎりは、上品なCセグメントSUVである。ただ、3気筒独特のサウンドはEペイスよりはっきりと伝わってくる。また、下から湧き出るような電動特有の強力トルクをフロントタイヤ2本のみで受け止めることもあって、なにをどうしても盤石なEペイスに対して、XC40を山坂道に持ち込むと、良くも悪くもジャジャ馬的にふるまいを見せる。とくにダイナミックモードでのパワーフィールはなかなかの迫力だ。

じゃじゃ馬的なXC40も魅力的だが、機械的な洗練度はEペイスに軍配

筆者をして「ベストEペイス」と言わしめたジャガー Eペイス Rダイナミック SE P300e。一方、ボルボ XC40 リチャージ プラグインハイブリッド T5 インスクリプションはそのコストパフォーマンスを高く評価した。

機械的な洗練度は、はっきりいって後発のEペイスに軍配が上がる。今回のP300eは、CO2排出うんぬんという要素を度外視しても、純粋な乗り味において「ベストEペイス」の最有力だと思う。対して、XC40はそこまでとはいわないまでも、オプション追加不要のフル装備で649万円と安い。さらに、装備を抑えた「エクスプレッション」なら599万円。コストパフォーマンスなら、Eペイスを圧倒する。ボルボ最人気モデルであるXC40のデザインやパッケージレイアウトが気に入れば、経済的にもPHVというチョイスは魅力的である。

ちなみにEペイス、XC40とも、PHVといっても、室内空間や荷室の使い勝手への影響はゼロといっていい。そこは心配不要だ。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2022年 3月号

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【SPECIFICATIONS】
ジャガー Eペイス Rダイナミック SE P300e
ボディサイズ:全長4410 全幅1900 全高1650mm
ホイールベース:2680mm
車両重量:2130kg
エンジンタイプ:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:1498cc
最高出力:147kW(200ps)/5500-6000rpm
最大トルク:280Nm(28.6kgm)/2000-4500rpm
モーター最高出力:前40kW(54ps)/7000-8500rpm 後1580kW(109ps)/10000rpm
モーター最大トルク:63Nm(6.4kgm)/5800rpm
260Nm(26.6kgm)/2500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
燃料消費率:14.2km/L(WLTCモード)
車両本体価格(税込):752万円

ボルボ XC40 リチャージ プラグインハイブリッド T5 インスクリプション
ボディサイズ:全長4425 全幅1875 全高1660mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1810kg
エンジンタイプ:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:1476cc
エンジン最高出力:132kW(180ps)/5800rpm
エンジン最大トルク:265Nm(27.0kgm)/1500-3000rpm
モーター最高出力:60kW(82ps)/4000-11500rpm
モーター最大トルク:160Nm(16.3kgm)/0-3000rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:FWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
燃料消費率:14.0km/L(WLTCモード)
車両本体価格(税込):649万円

【問い合わせ】
ジャガーコール
TEL 0120-050-689

ボルボお客様相談室
TEL 0120-922-662

【関連リンク】
・ジャガー 公式サイト
https://www.jaguar.co.jp/

・ボルボ 公式サイト
https://www.volvocars.com

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佐野弘宗