ポルシェが世界中のオススメドライブルートを紹介【ニュルブルクリンク北コース】

ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェ、その攻略方法をポルシェの開発ドライバーが語る 【動画】

ラップアタック担当ドライバー、ラース・カーンがオススメのドライブルート「ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェ」。
ラップアタック担当ドライバー、ラース・カーンがオススメのドライブルート「ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェ」を語る。
様々な人物がオススメのドライブコースを紹介するポルシェの連続企画「サンデードライブ(Sunday Drives)」シリーズ。今回登場するのは、ポルシェの開発ドライバー/アタック担当ドライバーを務めるラース・カーン(Lars Kern)だ。彼は自らの「仕事場」でもある、ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェについて語る。

一般客も楽しめる世界屈指の難コース

ラップアタック担当ドライバー、ラース・カーンがオススメのドライブルート「ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ」。
ポルシェにおいて開発ドライバーを務めるラース・カーンが選んだ「サンデードライブ」のコースは、一般客も料金を払うとこでドライブを楽しめるニュルブルクリンク・ノルトシュライフェだ。

これまで幾度となくポルシェのステアリングを握ってきたカーンが選んだのは、お馴染み「ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェ」。世界中のレースファン、ポルシェ・ファンにとっては憧れのコースだと言えるだろう。

ニュルブルクリンク、取り分けノルトシュライフェ(北コース)は世界で最も過酷なサーキットとして知られ、その難コースぶりから「グリーンヘル」との異名をもつが、実は一般向け走行日「Touristenfahrten」であれば、走行料金を支払うことで誰もが究極のドライビングコースを楽しむことが可能。つまりサンデードライブの目的地として、全長20.8kmのグリーンヘルを設定することができるというわけだ。

テストエンジニアからアタックドライバーに

ラップアタック担当ドライバー、ラース・カーンがオススメのドライブルート「ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ」。
テストエンジニアとしてポルシェに入社したカーンは、そのドライビングスキルを見込まれ、ニュルブルクリンクのアタックを任されるようになった。

ラース・カーンは10年前、テストエンジニアとしてポルシェに入社。以来、ロードカー開発の最終段階において、様々な仕事をこなしてきた。

「ポルシェ入社後、私に与えられた仕事は、開発車両で0-100km/hや0-200km/h加速のテストをして、目標に達しているかを確認することでした。あとはスラロームのようなドライビングダイナミクスもやっていましたね」

「ポルシェは、プロのレーシングドライバーでなくても、それなりのレベルの運転ができる人を必要としていました。また、プレス向けの広報車両を走らせる前に、様々な品質テストを行うこともありましたね。これも誰かがやらなければならないことです(笑)。それが私のキャリアのスタートでした」

その後、メディアがニュルブルクリンクをパフォーマンステストの場として使用することが多くなった。ある時、カーンはこの伝説のサーキットでポルシェのニューマシンをシェイクダウンし、その実力を確かめるように命じられる。

「初めてニュルブルクリンクに行ったときは、『こんなコースは絶対に覚えられない!』と思いましたね(笑)。 でも、何度も周回を重ねるうちに、いつの間にか悪くないレベルに達して、ポルシェが注目してくれるようになりました。そしてほとんど偶然のようなものですが、ラップレコード更新のために私を抜擢してくれたのです」

ニュルでは潮時を見極めるのが必要

ラップアタック担当ドライバー、ラース・カーンがオススメのドライブルート「ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ」。
これまで幾度となくニュルブルクリンクで記録を更新してきたカーンは、無数にコーナーが連なるこの地では「アタックの潮時を見極めるのが肝心」と指摘する。

1925年から1927年、1年半をかけて建設されたニュルブルクリンク・ノルトシュライフェは、ボンの南48kmにある。アクセスはマンタイ・レーシングの本社があるモイシュパトへと通じる「B258」号線を経由する。

一般向け走行日「Touristenfahrten」は春から夏にかけて決められた日に開催される。走行料金は1回25ユーロ。154のコーナーが待ち構えるサーキットを自身の愛車で駆け抜ければ、誰もがスケールの大きさとそのチャレンジングなコース設定に圧倒されるだろう。

ノルトシュライフェのラップタイムが自動車業界のベンチマークとなっていた2010年。カーンは初代パナメーラで初めてラップアタックを行うことになった。その後、カーンは911 GT2 RSや新型カイエン ターボGTなど、様々な車両で記録更新を果たしてきた。彼は、この仕事に献身と受容が要求されると明かす。

「正直、ニュルブルクリンクでは完璧なラップなんて存在しません。コースが長すぎて、すべてのコーナーをうまくクリアできないし、自分でも『もっとうまく走れたはず・・・』と思ってしまうのです。経験を積んだ人なら、誰もがそれを知っているはずですが、ラップレコードを出すには、潮時を見極める必要があります」

理論よりも本能の赴くままにドライブ

ラップアタック担当ドライバー、ラース・カーンがオススメのドライブルート「ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ」。
20km以上の距離、そして森の中を無数のコーナーが連続するニュルブルクリンクでは、流れの中に身を置いて本能的にドライブすることが求められるという。

カーン自身、ノルトシュライフェでのラップアタックでは、感覚と直感を信じてドライブするという。そして、彼は「ホーヘ・アクト(Hohe Acht)」から、有名なロングストレート「ドッティンガー・へーエ(Döttinger-Höhe)」までの区間を最も得意としている。

「ここはストレートのない長いセクションで、考えている暇はありません。ただ全力でプッシュして、マシンの力を最大限に引き出すだけです。ストレートでは、スピードやブレーキングについて考えることになりますが、コーナー中心のセクションではそれはしないほうがいいでしょう」

「この区間では、流れの中に身を置いて、ポジショニング、コーナーへの進入、そしてクルマをコントロールすることがすべてです。それは理論的というより本能的なもので、私はそれが大好きなんですよ」

911 GT2 RSで記録したラップレコード

ラップアタック担当ドライバー、ラース・カーンがオススメのドライブルート「ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ」。
カーンが最も印象に残っているアタックとして挙げたのが、2017年に911 GT2 RSで6分47秒3を記録した時のことだ。

どんな場所にでも難点はある。ニュルブルクリンクは天候が不安定なため、カーンは何日もサーキットに通い、ドライブする機会がまったくないまま、待ち続けたこともある。

「雨が降りそうな気配がしたら、すぐにアタックを止めます。クルマも人間も調子が悪くなっては元も子もありませんから・・・。あとは、翌日の好天を祈りながら、じっと待つことになります。だから、現地のホテルの部屋はたいてい知り尽くしていますよ(笑)」

それでも、ニュルブルクリンクにおいては、多くの素晴らしい思い出がある。特に忘れられないのが、2017年の晩夏。あの鮮烈な出来事だ。

「ニュルブルクリンクでの一番の思い出は、911 GT2 RSでラップレコードを出したことです。このクルマに関して、私は開発の最後に少し関わっただけでした。それもあって、ポルシェ・モータースポーツはニック・タンディが速い記録を出すと確信して、彼をニュルブルクリンクへと送り込みました」

「ニックと私は3~4回アタックして、私のほうが1秒も速かったのです。ニックは世界で最も偉大なGTドライバーのひとりなので、彼に追いついたことが信じられませんでした。もちろん、全体的なラップタイムも予想より10~12秒は速かったので、みんな大喜びでしたよ。ヴァイザッハから10kmのところで育った普通の男が、こんな大それたことをやってのけたのです。私にとって本当に特別な思い出になりました」

ノルトシュライフェの1周にかかる時間は、トラフィックや車両の性能、ドライバーの能力などの制約から、12~15分程度が妥当と思われている。カーンは初めて7分の壁を突破すると、後輪駆動のロードカーで6分47秒3という、とてつもない記録を叩き出したのだ。

マンタイ仕様で叩き出した6分43秒300

ラップアタック担当ドライバー、ラース・カーンがオススメのドライブルート「ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ」。
2021年にはマンタイ・パフォーマンスキットを装着した911 GT2 RSで、6分43秒300を記録。その様子は、下記の動画でチェックすることができる。

2021年6月、カーンは「マンタイ・パフォーマンスキット」を装着した911 GT2 RSで、公道走行が認められた市販モデルのラップレコードを、6分43秒300にまで縮めて見せた。ポルシェのラップスペシャリストは、多くの自動車ファンにとって魅力的な仕事に思えるが、その分、周囲からの期待も大きい役割である。

「確かにとても楽しい仕事です。ただ、プロジェクトチームからのプレッシャーに押しつぶされそうになるのも確かです。ここでは、私自身のんびりとドライブを楽しむどころではありません(笑)。世界中の自動車関係者が私たちに注目して、ラップタイムを見守っているわけですから・・・」

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