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Bugatti Centodieci
ワンオフでも量産でも開発プロセスは同じ
優に一億円を上回る車両価格を掲げるブガッティ車は、例えワンオフモデルであれ、量産モデル(とはいえ“大量”に生産されないのがブガッティだが)であれ、等しく厳しい開発プログラムが課されることで知られている。300km/h超での走行に耐え得る品質、かつ、顧客が「これぞブガッティ」と納得できるパフォーマンスを実現するには、妥協なきモノ作りが必要不可欠である──というのが彼らの信念だ。
わずか10台のみが作られるチェントディエチの開発現場にも、その姿勢が貫かれている。先ごろは、1週間を通じて「人工気候室」におけるテストが行われたばかりという。車体に使用されているカーボンやチタン製のネジなど、各部のパーツがいかなる気候下でも十分な機能を発揮するかどうかを徹底的に検証するプログラムである。同社で少量生産及びワンオフモデルを担当しているテクニカル・プロジェクトマネージャー、カール・ヘイレンケッターは次のように説明する。
「他のブガッティ車同様、チェントディエチもあらゆる気象条件下で確かな性能を発揮できなければなりません。例え摂氏50度の灼熱でも、マイナス20度の極寒であっても。人工気候室では様々な種類のテストを繰り返し行うことが可能で、結果を正確に見比べることが何度でもできるのです」
ウインドウの開閉機構も自社エンジニアがチェック
例えば寒冷テストでチェックされる項目のひとつに、サイドウインドウの開閉機構がある。ブガッティの社内基準及び法規に則り、確かな耐久性はもちろん、万一の際の挟み込み防止機能に問題がないかどうかが厳しく検証される。サイドウインドウ用モーターにはあらかじめ適切なパラメーターが設定されており、滑らかな開閉動作と共に、乗員を保護するための停止/下降機能が常時稼動するようになっている。
テストでは、ブガッティのテストチームは防寒スーツと帽子、グローブで完全防備した上で、人工気候室の中で何時間もテストを繰り返し行う。サイドウインドウは数百回にわたって開閉動作を繰り返し、その圧を都度計測。正しく動作させるためには、モーターの出力だけでなく、摩擦係数やギヤ、ガラスといったすべての要素が正しく調和していなければならない。「ガラスランの摩擦は気温によって様々に変化するため、そのことを念頭においてモーターを制御するソフトウェアを設計する必要があります」と、 電装品関係の開発を担う同社エンジニア、ジルフ・フィードラーは説明する。
2022年中に10台すべてをデリバリー予定
800万ユーロ(約10億5800万円)という驚愕のプライスタグを掲げるチェントディエチは、伝説的な「EB110」にオマージュを捧げる記念碑的モデルとなる。古典的なフォルムを現代的に再解釈したうえで、先進的なエアロダイナミクスの要件を組み合わせたスタイルを特徴としている。搭載するのは、ブガッティ自慢の1600馬力を発揮する8.0リッターW型16気筒エンジン。300km/h超での走行を目標に掲げるハイパーカーゆえ、厳しい状況下でもバランスの取れたハンドリングを実現するべく、世界各地で広範な走行テストが重ねられてきた。
チェントディエチは、すべてのテストプログラムが完了次第、すぐにフランス・モルスハイムで生産が開始される。販売分の10台は、すべて2022年中にオーナーの元へデリバリーされるという。