目次
ラ ヴォワチュール ノワールの彫刻がNFTアート化
英国王室御用達のラグジュアリーブランド「Asprey(アスプレイ)」が、ブガッティのワンオフモデル「ラ ボワチュール ノワール」の彫刻作品を製作した。同作品はNFT(非代替性トークン)テクノロジーを活用し、稀少なコレクターズアイテムとして展開される。
ラ ヴォワチュール ノワールの彫刻はローズゴールドを使い、ベースからすべて手仕上げで作られている。実物のアート作品はデジタルデータと紐付けられ、“代替が不可能な個別の価値をもつトークン”としてNFT化されるという。
コレクションの全容は2022年3月に公開
ブガッティと同様、アスプレイは先進のテクノロジーと伝統的なクラフトマンシップの両方を駆使して貴重な美術品を作り上げることで知られている。今回はアスプレイのロンドン工房で、社内の銀細工職人がおよそ4ヵ月をかけて彫刻を完成させた。
さらに、サイズの小さなスターリングシルバー製の彫刻も261個製作。こちらも同じくNFTアートとしてコレクターに向けての展開を予定している。購入者は専用のマイクロサイトにログインすることで、アスプレイの熟練によるそれぞれの彫刻の製作プロセスを確認することができる。具体的なコレクションの全容は2022年3月に専用サイトで公開する予定だ。
同じ哲学を共有するブガッティとアスプレイ
ブガッティ インターナショナルのマネージングディレクター、ウィープケ・シュタールは次のように説明している。
「消えたブガッティとして有名なタイプ57 SC アトランティークから現代のラ ヴォワチュール ノワールまで、すべてのブガッティ車は──それがたとえ止まっている時であっても──人の心を震わせる自動車のアート的存在であるようデザインされています。時を超えたデザインというのは、ブガッティとアスプレイ両方の基礎となる哲学なのです。今回の特別なパートナーシップにより、ブガッティの顧客の皆さまや、ブガッティを愛してくださる皆さまに、素晴らしい美術品を通じてブガッティのデザインの価値を新しい観点から楽しんでいただくことができるでしょう」
アスプレイのデジタルスタジオでチーフクリエイティブオフィサーを務めるアリ・ウォーカーもコメントを寄せた。
「今年、アスプレイは創業から241年目を迎えました。そして、アスプレイのデジタルスタジオと新たに拡張したロンドンの工房は、次章に向けての歩みを進めています。象徴的、かつ芸術的なブランドであるブガッティとパートナーシップを結ぶことができたのは、新しい製品や芸術的テクニックを探求するのにこれ以上ない機会といえるでしょう」
ブガッティ最大の謎とされる“消えたタイプ57”
ブガッティは1100万ユーロ(約14億1200万円)のプライスタグを掲げるラ ヴォワチュール ノワールを、2019年のジュネーヴショーで発表した。フランス語で“黒いクルマ”を意味する「ラ ヴォワチュール ノワール(La Voiture Noire)」を名前に冠するワンオフモデルは、かの名車タイプ57と深い繋がりをもつ。
タイプ57シリーズの中でも、わずか4台しか製作されなかったS/SC アトランティーク クーペは、ブガッティ史上で最も美しく、かつ最も稀少なモデルと言われる。ちなみに1938年5月に完成した4台目、シャシーナンバー「57 591」はラルフ・ローレン氏のコレクションに収まっていることでも有名だ。
そして、2台目に作られた「57 453」はエットーレ・ブガッティの子息、ジャン・ブガッティ自身がオーナーであり、彼がこのクルマを常々「ラ ヴォワチュール ノワール」、すなわち“黒いクルマ”と呼んだというのはよく知られたエピソード。様々な雑誌の表紙に登場したり、モーターショーにも展示されたその車両は、一度もオーナー登録が行われず、ごくごく近しい友人、しかもレーシングドライバーのみがそのドライバーズシートに座ることを許されたという。今回のワンオフモデルは、つまりこのクルマへオマージュを捧げた1台なのだ。
ところで、4台のタイプ57 S/SC アトランティーク クーペのうち、現存しているのは3台。ジャン・ブガッティが所有したくだんの車両は、第二次大戦前に跡形も無く姿を消しており、以降、その消息はようとして知れないのである。この“消えたブガッティ”は、自動車業界における最大の謎のひとつとされている。ジャン・ブガッティがレーシングドライバーの友人に譲ったのか、ナチ占領下のフランスでアルザスから移送されたのか・・・。1938年以降、その痕跡はぱたりと途絶えてしまった。
ナチスが接収してしまったという説が有力だが、ひとつだけ明らかなのは、現在までこの黒いアトランティークが見つかっていないということ。専門家は、もし発見された場合、その価格は1億ユーロ(約125億円)を超えると推測している。