目次
世界で最も優れた耐久レーサーのひとり
2022年3月19日、ブガッティの公式テストドライバー、アンディ・ウォレスが米セブリングで殿堂入りを果たした。アンディは世界で最も優れた耐久レーサーのひとりとして、数々のレースで輝かしい戦績を残してきたレジェンドのひとり。
レーシングドライバーとして30年のキャリアを持つウォレスは、ル・マン24時間とデイトナ24時間にそれぞれ21回も出場。ル・マンで1回、デイトナでは3回の勝利を手にしている。また、セブリング12時間には19回参戦し2回の優勝を記録。セブリングのポディウムに上った回数は現時点で最多となっている。
ジャッキー・イクスと共にセブリングの殿堂入り
北米で最も有名な耐久レースの舞台、セブリング インターナショナル レースウェイ。そのセブリングは、2002年にドライバーやオフィシャル、チーム、メーカー、ジャーナリストなど、フロリダのレース界に貢献した人物を讃えるための殿堂を設立した。すでに、マリオ・アンドレッティやデレク・ベル、ブリッグス・カニンガム、フアン・マヌエル・ファンジオ、ダン・ガーニー、フィル・ヒル、ブルース・マクラーレン、スターリング・モス、ポール・ニューマン、キャロル・シェルビーといった錚々たる面々が殿堂入りを果たしている。
そして今回、ブガッティのレジェンドドライバーであるアンディ・ウォレスもそのリストに名を刻んだ。同時に殿堂入りしたのは、ジャッキー・イクス、ステファン・ヨハンソン、デヴィッド・ホッブス、そして米TVニュース界の伝説的アンカーマン、ウォルター・クロンカイト。殿堂入り式典は一年おきに開催されており、今回は2022年3月19日のセブリング12時間レースのスタート前に実施された。
肋骨を折っても挑戦したセブリング12時間
ウォレスは、セブリング12時間に19回出場。そのうち10回は表彰台にあがる結果を残し、2位を5回、そして1992年と1993年には連続で1位を獲得している。今回の栄誉を受けて、彼は次のように語っている。
「私のレース人生のほとんどは、ノンストップで突き進んできました。ですから、セブリングでの表彰台最多記録を私自身が保持しているということも、つい最近知らされたばかりなんですよ。これまで過去に達成したことを顧みることはしてこなかったのですが、いま立ち止まってみれば、1992年と1993年の2つの勝利は非常に誇らしい瞬間として蘇ってきます」
「私は1992年のレースの数週間前、テスト中に肋骨を2本折ってしまったんです。でもどうしてもレースに出たかった。だからそのことを誰にも話しませんでした。セブリングのバンプや高速コーナーはチャレンジでしたが、集中し気持ちを固めました。そしてフアン・マヌエル・ファンジオ2世と私は勝利を手に入れたのです」
そしてウォレスはこう続ける。「私はいつだって、セブリングで戦うのが大好きでした。ここはとても特別なサーキットです。だから、こうして殿堂入りできたことは本当に光栄なのです」と。
レース引退に伴う“心配”が消えた瞬間
ル・マンではジャガーやトムスのワークスドライバーとして活躍し、アメリカン・ル・マン・シリーズではアウディのワークスカーもドライブ。そして、キャリアにピリオドを打とうとしていた2011年に、公式テストドライバーを探していたブガッティがウォレスに接触する。以降、ヴェイロンやシロン、ディーヴォ、チェントディエチを含むスーパー&ハイパースポーツで10万km以上を走破してきた。彼はモルスハイム製ハイパースポーツの性能、ドライブ方法、そしてニュアンスすべてを理解している。ウォレスは語る。
「レースを辞めるときに恐れていたのが、アドレナリンを失ってしまうのではないかということでした。しかしヴェイロンを初めて運転して即座に、レーシングカーのパフォーマンスが放つ生のスリルが、ブガッティには備わっているということを実感したんです。世界最高レベルのエンジニアたちと共に、とりわけ新時代のブガッティに向けて、最先端のパフォーマンスカーを開発できるという特権にも恵まれています」
市販モデルで初めて300mph超えを記録した男
2019年、ウォレスは世界最高速度記録を達成したシロンのドライバーを務め、市販モデルで300mph(約482.803km/h)を超えた初の人類となった。公式記録は、じつに304.773mph(約490.485km/h)に達する。
ブガッティ オートモービルのプレジデント、クリストフ・ピオションもコメントを捧げた。
「ブガッティ車は、決して偶然の巡り合わせで世界最高のクルマになったわけではありません。我々はベストな素材を使い、最も進んだテクノロジーを採用し、最も優秀な人々とともに仕事をしています。輝かしいレースキャリアがあり、生まれながらの運転の才とブガッティへの情熱を持ち合わせたアンディは、その仲間なのです。セブリングの殿堂入りは十分に相応しい栄誉であり、彼の専門スキルから恩恵を享受できることを、私たちは誇りに思っています」