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RML Short Wheelbase
自社開発だからこそ可能な情報公開

美しいダークブルーにペイントされたRML ショートホイールベース「カーゼロ(Car Zero)」は、RMLが構想から3年かけて行った開発・シミュレーション作業を証明するためのテストベッドとして使用される。RMLのエンジニアリングチームは、カーゼロを英国・ベッドフォードシャー州にあるUTACミルブルック試験場へと持ち込み、この分野の自動車ではほとんど行われない、高度なテストプログラムを開始した。
RMLのマイケル・マロックCEOは、ショートホイールベースのテストプログラムについて次のように説明した。
「私たちは長年にわたって、30以上の車両開発・テストプログラムを実施してきましたが、そのほとんどは企業からのオーダーによるもので、機密保持が徹底されていました。今回公開したテストプログラムは通常の開発プロセスと変わらず、ショートホイールベースにも適用されています。唯一の違いは、このクルマには私たちの名前がついているということです」
UTACで行われる様々なテストプログラム

テストプログラムにおける最初の1ヵ月間、RMLの開発チームは、すでに実施されてきた広範なシミュレーションの検証作業に専念。世界中の道路に見られる極端な地形を再現したUTACのテストコースを舞台に、シャシーダイナミクス、パワートレイン、全体的な品質が厳密に評価される。RML ショートホイールベースのプロジェクト・エンジニアリング・リーダーを務めるニック・ラザフォードはこれまでの結果に満足を覚えているようだ。
「まだテストプログラムの初期段階ですが、クルマの予測された挙動と実際の性能の間に強い相関関係があることがわかりました。つまり、素晴らしいパフォーマンスを実際に楽しむことができるということです」
3週間後に走行性能の確認が終わると、次はより過酷な耐久性試験が始まる。6週間に及ぶテストは一般的なドライバーによる3年間の典型的な使用状況を再現。このテストでは、ショートホイールベースに搭載されているシステムが寒暖差のある状況でも正常に動作するか徹底的に試験される。例えばドバイの交通渋滞を想定し、最高気温50度というなかでクルマの動作状況がチェックされるのである。
最初のカスタマー向け車両の製造も開始

UTACでは、より過酷なダイナミックテストも行われる。ハイスピードトラックで予定されている2000kmの連続走行では、長時間にわたって一定の速度で走行した際のデータが取得される。さらにベルギーのパヴェでは、サスペンションが受ける最悪の衝撃を数百kmにわたって再現。低速で激しいドライビングを繰り返すテストや、カーボンコンポジット構造に負荷をかけるボディのねじれテストも実施される予定だ。
すでに、ショートホイールベースの最初のカスタマー向け車両の生産もスタートした。現在のテストプログラムからのフィードバックにより2022年後半に完成する車両には、完全に検証されたコンポーネントとセットアップが採用される。一方、カーゼロはテスト終了後、プレスやカスタマー向けのデモカーとして活用されることになる。