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Bugatti Centodieci
5万kmを超えるテスト走行が完了!
800万ユーロ(約10億8300万円)という規格外のプライスタグを掲げて2019年夏に発表されたブガッティのスペシャルモデル、チェントディエチ。世界10台のみの限定販売というウルトラレアなフレンチハイパーカーは、それでも発表からものの数週間で完売御礼とあいなった。
そのチェントディエチが、およそ3年の期間にわたる開発プログラムをいよいよ完了。プロトタイプは灼熱の砂漠から空気も凍てつく寒冷地まで世界各地を走りに走り、総距離5万kmを超えるテスト走行を敢行した。
イタリア ナルドで最終的なテストを実施
テスト走行に臨んだドライバーは3人。彼らは代わる代わるチェントディエチのコクピットに収まり、あらゆる機能や運動性能を徹底的に検証してきた。テストドライバーには十分な技術的知識はもちろん、高い集中力と鋭敏な感覚が必要とされる。たとえ猛烈なスピードで走っていたとしても、わずかな異音や違和感、おかしな挙動があれば、それをきちんと把握し、的確に記録し、伝えることが彼らの仕事である。
5万kmのテスト走行の締めくくりは、イタリアはナルドのサーキットで行われた。テスト責任者のシュテッフェン・ライヒトは、次のように説明する。
「高速サーキットやハンドリングコースなど、ナルドのテストセンターには、集中的な耐久テストを行うのに最適な条件が揃っています」
1日に1200kmを走行
全長12.6kmのバンク付きオーバルコースは380km/hでチェントディエチを走らせるのにおあつらえ向きであり、6.2kmのハンドリングコースは、高さ方向と横方向にかかる負荷をチェックするのに向いている。さらに、ナルドの70ヘクタール超の敷地内には、様々な舗装・路面状態を再現した70kmに及ぶコースも存在する。
ナルドでは、チェントディエチは1日に1200kmを走行した。テクニカルチェックと給油、ドライバー交替の時間以外は終始走り通しであったという。「1号車の生産が始まる前に、とりわけ機能性や耐久性を重点的にチェックしながら、最後にもう一度車両のすべての要素を改めて評価しました」と、ブガッティでワンオフモデルと少量生産モデルを担当するプロジェクトマネージャー、カール・ヘイレンケッターは語る。
ミッドに1600馬力のW16を搭載するチェントディエチ
ブガッティの創業110周年を記念して、2019年に発表された「Centodieci(チェントディエチ=イタリア語で110を意味する)」。伝説のEB110にオマージュを捧げる特別なモデルで、10台のみを販売する。古典的なフォルムを現代的に再解釈したうえで、先進的なエアロダイナミクスの要件を組み合わせた独特のスタイルを採用。
ミッドに搭載されるのは、7000rpmで最高出力1176kW(1600hp)を発揮する8.0リッターW型16気筒エンジン。0-100km/h加速は2.4秒、0-200km/h加速は6.1秒、0-300km/h加速は13.1秒という、驚異的な加速性能を発揮。最高速度は380km/hで電子リミッターが作動する。
2022年中に10台すべてをデリバリー予定
さらに、チェントディエチは、ベースとなったシロンから20kgの軽量化を実現している。もっとも重量低減に効果的だったのが、軽量ワイパーとカーボンファイバー製スタビライザーの採用だ。この結果、1.13kg/hpという驚異的なパワーウェイトレシオを実現している。
また、W16ユニットを収めるエンジンベイは非常に高温となるため、高度な熱管理が必須。EB110と同じようにエンジンルームが透明なガラスで覆われているチェントディエチは、より効率的に熱を排出すべくエアアウトレットのサイズを拡大している。
ドア後方には5基の円形エアインサートを配したリヤクォーターパネルを設置。それに伴い、ヴェイロンやシロンでは圧倒的な存在感を放っていた特徴的なサイドの「Cライン」に代わって、シャープなウェッジシェイプデザインが採用された。
チェントディエチのプロトタイプは、100年後にも同じドライビング体験をオーナーに提供することを目指し、ブガッティ独自の厳しい開発プログラムを3年かけて完遂した。最終的なチェックが終わり次第、チェントディエチは生産をスタートする。モルスハイムでハンドビルドされる邦貨約10億円の車両は、2022年中にすべてが顧客のもとにデリバリーされるという。