1世紀前にブガッティ タイプ13が活躍した「天空の村」をシロンで再訪

ブガッティの栄光を築いた歴史の舞台を再訪。タイプ13が残したもうひとつの伝説

ブガッティ シロン ピュア スポーツのフロントビュー
かつてブガッティ タイプ13がヒルクライムレースに挑んだフランス ラ テュルビーを再訪したシロン ピュア スポーツ。
ブガッティは、1922年にタイプ13で勝利したヒルクライムレースの舞台を、シロン ピュア スポーツで再訪。100年前のブガッティ車が挑んだ難関の地で、現代の最新フレンチハイパーカーを走らせながら、タイプ13“ブレシア”の物語を振り返った。

地中海を見下ろす天空の村で行われたヒルクライム

ブガッティ タイプ13のフロントビュー
ブガッティが生んだ傑作小型ライトウェイトスポーツ、タイプ13。同車は1910年にフランス モルスハイムでの生産をスタートした。

いまから100年前の1922年3月、ブガッティはフランスの「La Turbie(ラ テュルビー) ヒルクライム レース」に参戦した。モナコ公国の北側に位置し、地中海を見下ろす天空の村。そのエリアを縫うように走る、曲がりくねった勾配をステージにしたヒルクライムで、ブガッティ タイプ13は栄光のゴールへと駆け上がった。

ラ テュルビーで開かれた第8回目となるヒルクライムレースで、タイプ13のステアリングを握ったドライバーはジャン・マビーユ。全長6.3km超のコースにはタイトなコーナーがあいつぐだけでなく、路面には穴や砂、石があちこちに散乱するなど、クルマをスムーズに走らせるだけでも至難の業であった。

それでもジャンはノーミスでタイプ13をゴールまで導き、6分24秒という記録を刻みつけた。その瞬間を目撃したすべての人々と同様に、エットーレ・ブガッティも興奮に身震いしたことだろう。

1897年に始まった伝統のレース

1922年にフランスのラ テュルビーで開催されたヒルクライムに挑むジャン・マビーユ
100年前、フランスのラ テュルビーで開催されたヒルクライムに挑むジャン・マビーユ。砂埃の様子からも、路面状態が決して良好でないことが分かる。

標高約450mからモナコを見下ろすラ テュルビー。その村に、初めてとりどりのマシンが隊列を成してやってきたのは1897年のことである。ニースで行われた第1回“スピードウィーク”では様々な競技が用意されており、そのうちのひとつがニースからラ テュルビーを目指すレースだったのだ。これは、自動車界初のヒルクライムレースと言われている。

いつしか、様々なレーサーやメーカーは、自身のスピードや車両の信頼性を披露するためにこの村へ集うようになっていった。しかし、当時は決してコンマ1秒のラップタイムを競うようなものではなく、ゴールラインを無事に越えることができるかどうかがひとつの大きな挑戦であった。

4気筒16バルブエンジンを搭載したタイプ13

1921年、イタリア ブレシアにおけるブガッティ タイプ13
1921年、イタリア ブレシアにおけるブガッティ タイプ13。ヴォワチュレットクラスのグランプリレースで、タイプ13は1〜4位を独占した。

1904〜1908年、そして第一次世界大戦の間、ラ テュルビーでレースは一切行われていない。多くのレーサーやメーカーがようやく天空の村へ帰ってきたのは1922年のことだ。

エットーレ・ブガッティは、軽量なボディに力強く信頼性に優れたエンジンを組み合わせるというアイデアを1911年の時点で具現していた。それがフランスGPで2位を獲得したタイプ13である。タイプ13は、第一次世界大戦を経た1919年に改めて生産を開始。同車には、1.3リッターの4気筒16バルブエンジンが初めて搭載されていた。すなわち、いち早く4バルブテクノロジーを採用したクルマの1台といえる。また、クランクシャフトの軸受けベアリングにはホワイトメタルを使用し、オイルポンプも採用していた。

100年前に最高速度は150km/hに到達

ブガッティ タイプ13。フロントビュー
数々のレースでその圧倒的な強さを見せつけたブガッティ製の小型ライトウェイトスポーツ、タイプ13。

ル・マンのフランスGPでヴォワチュレット(ライトウェイト レースカー)カテゴリーに出場したタイプ13は、圧倒的な速さを誇った。2位に20分もの差をつけて優勝を勝ち取っている。

1920年には排気量を1.5リッターにアップし、最高出力を50ps向上。車両重量がわずか490kgと軽量だったため、50psのプラス分は大きな効果を発揮。最高速度はいよいよ150km/hに到達した。さらに、品質も見直すことで信頼性を高め、タイヤのパンクやアクスルの故障に気を揉むこともなくなっていった。

“ブレシア”という栄光のシリーズを輩出

ブガッティ シロン ピュア スポーツのリヤビュー
地中海を見下ろす天空の村、ラ テュルビー。ここで100年前、ブガッティ タイプ13はヒルクライムレースを戦った。2022年の今、ブガッティで再訪するなら“究極のハンドリングマシン”を標榜して開発されたシロン ピュア スポーツが最も相応しい存在かもしれない。

1921年のイタリア ブレシアでは、ヴォワチュレット部門のグランプリレースで1〜4位を独占。以降、4バルブエンジンを搭載する同系及び派生マシンには「ブレシア」のニックネームが与えられるようになった。すなわち、1922年にラ テュルビーで勝利を勝ち取ったタイプ13も「タイプ13ブレシア」と呼ぶのが“正式な愛称”である。

タイプ13は、タイプ15、17、22、23といった数々のブレシアシリーズを輩出。タイプ35とともに、ブガッティ史のDNAを形づくった原点として、今もその価値を高く評価されている。

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著者プロフィール

三代やよい 近影

三代やよい

東京生まれ。青山学院女子短期大学英米文学科卒業後、自動車メーカー広報部勤務。編集プロダクション…