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「最高速性能」を重視したシロンの派生モデル
2021年6月にワールドプレミアした「シロン スーパースポーツ」が、いよいよデリバリーをスタートする。
シロン スーパースポーツは、“究極のコーナリングマシン”を標榜したシロン ピュア スポーツのカウンターパートとして誕生した。400km/hを超える最高速性能を重視して開発され、320万ユーロ(約4億3000万円)のプライスタグを掲げる。
ボディに映り込む光をハンドペイントで表現
シロン スーパースポーツの第1号車は、ブガッティが展開するカスタマイゼーションプログラム「シュール・ムジュール(Sur Mesure=フランス語でオーダーメイドの意)」により、世界に1台だけの仕様となっている。
シロン スーパースポーツのボディ曲面へ映り込む光を表現した複雑な塗装パターンは、熟練職人によるハンドペイントにより完成。デザインのテーマはずばり「Vagues de Lumière’(光の波)」。注文主とシュール・ムジュールの専門チームが密に連携し、過去に例を見ない独自のペイントワークを実現した。
W16エンジンは最高出力1600ps/最大トルク1600Nmを発生
シロン スーパースポーツは車両重量を23kg軽量化。搭載するのはお馴染みの8.0リッターW型16気筒エンジンで、大径化したターボチャージャーを4基搭載する。オイルポンプやシリンダーヘッド、バルブトレインにも改良を加え、出力は100psアップの1600psを実現。回転数も300rpm引き上げて7100rpmとしている。1600Nmの最大トルクも、2000〜7000rpmとさらに幅広いレンジで発生する。強化したパワートレインに合わせ、トランスミッションとクラッチも最適化した。
組み合わせるのは7速DCTで、0-200km/h加速5.8秒、0-300km/h加速12.1秒を記録。0-400km/hはシロンに比べて12%速くなったという。ちなみに、走行モードには「EB」「ハンドリング」「アウトバーン」「トップスピード」の4種類を用意している。
足元に履くミシュラン パイロット スポーツ カップ2タイヤは、シロン ピュール スポールではグリップ性重視だったのに対し、こちらは剛性とスムーズさに重きを置いて最適化。500km/hでの安定的な走行を想定して開発されたという。タイヤには一切の不具合が許されないため、出荷前に全数をX線検査に通すという。
リヤを25cm延長した“ロングテール”仕様に
なかでも特徴的なのが、リヤセクションの長さを25cm延長した“ロングテール”。420km/hを超えるスピードで走行するクルマには、十分過ぎるダウンフォースが必要だ。そして同時に、空気抵抗は最小限に抑えなければならない。ブガッティのデザインディレクターのNo.2、フランク・へイルは次のように語っている。
「我々が目指したのは可能な限りの流線形デザイン、そして最高速度での走行時でもニュートラルな姿勢を保つ性能を両立することでした」
440km/h走行時、車体には膨大な揚力が生じる。そのため、シロン スーパースポーツは強力なダウンフォースでこれを押さえ込み、車体にかかる力のバランスを完璧にとる必要がある。
最適な空力性能を実現するため、彼らはシロン スーパースポーツに“ロングテール”を与えた。乱流を防ぎ層流を保持できるように、ベースのシロンに比べてテールの長さをおよそ25cm延長。さらにリヤディフューザーの形状も変更し、下端を持ち上げることでリヤの断面積を44%縮小している。そのため、従来は横一列に並んでいた特徴的なテールパイプもまったく新しい配置とした。
「ディフューザーでダウンフォースを確保できるなら、ウイングなどの必要が無くなります。ですからトップスピードモードであっても、できるだけウイングを格納したままで走行できるようになったのです」とフランク・へイルは言う。
左右のフェンダーに並んだ9つの空気穴はEB110 スーパースポーツへのオマージュなのはもちろん、フロントホイールアーチ内のエアを抜くという重要な役割も与えられている。フロントホイールの前方と後方にも、それぞれ空力を整えるための通気口を設置した。
ブガッティコレクションの“目玉”になる1台
シロン スーパースポーツの第1号出荷を受けて、ブガッティ オートモービルズのプレジデント、クリストフ・ピオションは次のように語っている。
「我々のアトリエで、シロン スーパースポーツのお客様向けの最初のモデルが完成したのを見ることができて大変興奮しています。新しい8.0リッターW16エンジンに火が入る音を最初に聴いたとき、このクルマは間もなく世界中のお客様のコレクションの“目玉”になるのだと私自身は確信しました。シロン スーパースポーツのドライブ体験は、他のどんな自動車とも比較のできないものとなっています。私たちのお客様に、その運転席で何マイルもの忘れられない軌跡を刻んでいただけることを心から楽しみにしています」