ベントレー最速の称号「スピード」を冠するハイパフォーマンスSUV登場!

ベントレー ベンテイガ、二通りのアプローチ。V8とW12のパフォーマンスを吟味する

ベントレー ベンテイガ V8とベンテイガ スピードの走行シーン
ベントレー ベンテイガ V8とベンテイガ スピードの走行シーン
V8のみのラインナップだったベンテイガに、伝家の宝刀であるW型12気筒が加わった。635ps/900Nmで0-100km/h加速3.9秒の速さを誇る、スピードの称号が与えられたこの1台は、従来のV8モデルとどのような個性の違いを放つのだろうか。モータージャーナリストの渡辺敏史が確認する。

Bentley Bentayga V8 × Bentayga Speed

両エンジンの違いは速さではない。選択基準は速さの質の違いだ。

ラグジュアリーブランドが手掛けるSUV、その先駆けとなったベントレー ベンテイガ。昨夏、2015年末のデビュー以来初のビッグマイナーチェンジを受けて、現世代のコンチネンタルGT&フライングスパーとデザインランゲージの統一化が図られた。外観上はクリスタルカット調のテクスチャーが施されたヘッドライトやアーモンドシェイプのテールライトなどに目がいくが、単なるフェイスリフトに非ずパネル類は全面刷新。加えて内装もセンターコンソールやドアトリム、シートなどの大物が変更を受けるなど、フルモデルチェンジに匹敵するほど細かく手が施されている。

日本でのグレード展開はベーシックなV8とそのスポーティネスを高めたS、W12を搭載するスピード、そしてV6+モーターのハイブリッドの4機種となる。うち、ベントレー初のPHVとなるハイブリッドは本国でも受注開始から間もなく、日本への上陸は今年末から来年の初頭になるという。とあらば、現状の関心はV8とスピードには一体どういった差があるのかということになるだろうか。そこでV8に遅れてスピードが日本上陸を果たしたところで、両グレードを路上へと連れ出した。

毎度圧倒されるインテリアの質の高さは健在

ベントレー ベンテイガ スピードのインテリア
ダッシュパネルと専用デザインのシートには“speed”のロゴが入れられる。撮影車はカーボンパネルだがウッドなども選択可能だ。

新しいベンテイガのボディサイズは旧型とほぼ変わらず。5.1m余となる全長やほぼ2mという全幅はレンジローバーよりちょっぴり大きく、狭苦しい街中での取り回しはさすがにスイスイというわけにはいかない。駐車等では高精細化された10.9インチモニターに映し出される俯瞰映像が有り難い時もある。

が、心理的には大きいものを纏っているという圧迫感が小さいのは、それこそスポーティに躾けられているがゆえの応答性の高さからくるのだろう、首都高速くらいの道幅ならばサイズに対する気負いはなくなる。また、そういった場面からは精度を高めたADASのレーントレースアシストが効果を発揮してくれる。

それにしても毎度のことながら圧倒されるのは内装のクオリティだ。乗り込めば鼻をくすぐる鞣し革の匂いに始まり、ドアノブやシフトバドルのひんやりとした感触、張り巡らされるステッチの温かみ、押したり回したりするものすべての動きの滑らかさなど、ディテールの隅々に工芸的な境地が感じられる。贅沢を知ると戻れなくなるとはよく言われるが、そういう意味ではその後に触れるどんなクルマも物足りなく感じさせてしまうベントレーの設えは、知らぬが仏なのかもしれない。

W12を搭載し世界最速のSUVを標榜するベンテイガ スピード

ベントレー ベンテイガ スピードのエンジン
スピードが搭載するW型12気筒はコンチネンタルGTなども搭載するお馴染みのユニット。1500rpmから900Nmのトルクを絞り出し、最高速度は306km/hに達する。

搭載されるエンジンは4.0リッターV8がポルシェが開発を主導し、アウディやランボルギーニなどVWグループ内のプレミアムモデルに広く採用されるものだ。90度のVバンク間に2つのタービンを並列するホットVレイアウトのそれは、当然ながら銘柄やモデルの個性に沿った独自のチューニングが施されており、ベンテイガのそれで550ps/770Nmを発揮。0-100km/h加速4.5秒、最高速度は290km/hをマークする。

そしてもう一方の6.0リッターW12は、偉大なるカーガイ、フェルディナント・ピエヒがVWグループ総帥だった時代に、21世紀をリードする究極のエンジンとして開発を指示したもので、その歴史は四半世紀になろうかとしている。ベンテイガに搭載されるのは18年にフルモデルチェンジを受けたアウディ A8への搭載を機に全面刷新されたもので、ツインターボ化により635ps/900Nmを発揮。0-100km/h加速は3.9秒、最高速度は306km/hをマークする。これは同門ともいえるランボルギーニ ウルスより1km/h速い、すなわちSUVでは世界最速というのがベンテイガ スピードの触れ込みだ。ちなみにトランスミッションは8速AT、駆動システムは基本40対60を軸としてドライブモードや路面状況に応じてリニアに可変する。

数字にするとそれなりの差があるようにみえるV8とW12だが、実際に乗り比べると速さに特筆するほどの差異はないように思う。直線で並んで用意ドンでもすれば、速度の伸びという点でW12の側が勝るだろうか・・・という程度のものだ。すなわち、この両エンジンの選択基準はその速さの質ということになる。

ベンテイガ スピードはカーガイにとって最高の贅沢かもしれない

ベントレー ベンテイガ V8とベンテイガ スピードのリヤスタイル
V8とW12の外観上の違いはほとんどないが、W12のスピードはリヤスポイラーが大型となるほか、マフラー出口がオーバル形状となる。スピードは22インチのタイヤ&ホイールが標準装備となる。スピードにはオプションでカーボンセラミックブレーキを装着することもできる。

いずれも巡航域ではベントレーに相応しい上質なマナーを備えているという前提でいえば、ベントレーらしいスポーティネスを強く感じさせてくれるのはむしろV8の側だと思う。低回転域からのアクセルオンでの応答性は高く、回転が高まるにつれての蹴り出しの力強さ、それに伴うV8らしいザラ味の効いたサウンドは、ミュルザンヌ以前の往年のOHV時代を彷彿とさせる。この元気の良さに30kg近いノーズの軽さも加わってのハンドリングは、W12に対してはっきりと軽快だ。

対してW12の側はいかにもな精緻さを感じさせる始動や吹け上がり時のサウンド、全域に渡る爆発の粒立ちの滑らかさや高回転域へと向かうに連れ湧き出るパワーのしっとりと伸びやかな感触など、V8には醸せない世界がしっかりと現れている。一方でハンドリングの側はさすがにV8と比べればノーズヘビーな印象は否めない。一方で高速クルージングでは自重やエンジンの回転質感も手伝っての豊潤な感触が味わえる。

不世出のカーガイだったフェルディナント・ピエヒが拘り抜いた唯我独尊の12気筒は、今や日本ではベントレーのみのプレミアムユニットでもある。内燃機の機微や荘厳さを片時も無駄にせず味わい尽くせる、そう考えればベンテイガ スピードは、今を生きるクルマ好きが手に入れられる最高の贅沢なのかもしれない。

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)

【SPECIFICATIONS】
ベントレー ベンテイガスピード
ボディサイズ:全長5145 全幅1995 全高1755mm
ホイールベース:2995mm
車両乾燥重量:2520kg
エンジンタイプ:W型12気筒DOHCツインターボ
総排気量:5945cc
最高出力:467kW(635ps)/5000rpm
最大トルク:900Nm(91.8kgm)/1750-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後285/40ZR22
最高速度:306km/h
0-100km/h加速:3.9秒
車両本体価格(税込):3345万円

ベントレー ベンテイガ V8
ボディサイズ:全長5150 全幅1995 全高1755mm
ホイールベース:2995mm
車両乾燥重量:2470kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
最高出力:404kW(550ps)/5750-6000rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/2000-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前後285/45ZR21
最高速度:290km/h
0-100km/h加速:4.5秒
車両本体価格(税込):2269万円

【問い合わせ】
ベントレーコール
TEL 0120-97-7797

【関連リンク】
・ベントレー 公式サイト
http://www.bentleymotors.jp/

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