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Lamborghini Huracan
8年間にわたりV10シリーズの“顔”を務めたウラカン
ランボルギーニ ウラカンは、ガヤルドの後継として2013年に登場、2014年より生産をスタートした。以来、V10シリーズの顔として、8年間にわたり堅調な販売を継続。ガヤルドの記録を大きく上回る好成績を築きあげた。2022年4月時点で、累計販売台数は2万台を突破している。
最初のウラカン(LP 610-4)は、まず2013年12月にオンラインでその姿を初公開し、翌2014年3月のジュネーブショーで実車をお披露目した。610hp/560Nmの5.2リッターV10自然吸気エンジンを搭載した4輪駆動のクーペは0→100km/h加速3.2秒を誇り、最高速度は325km/hを記録。ランボルギーニ独自の走行モード切り替え機構“ANIMA”の採用をはじめ、ジャイロスコープと加速度センサーで車体の挙動を把握する「ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ(LPI=ランボルギーニ慣性プラットフォーム)」、デュアルインジェクションシステムといった先進機能を盛り込んでいた。また、量産スーパースポーツセグメントとしては初めて、すべての灯火類にLEDライトを採用している。
2015年9月のフランクフルトショーでは、スパイダーモデルが登場。0→100km/h加速3.4秒、最高速度323km/hと、クーペとほとんど変わらぬパフォーマンスを実現していた。
操る楽しさを重視した後輪駆動モデルを追加
2015年には、後輪駆動のLP 580-2が誕生した。最高出力を580hp、最大トルクを533Nmに絞りこむとともに、LP 610-4クーペ比で33kg軽い1389kgの車体により、後輪駆動ならではの“操る楽しさ”を追求。最高速度も320km/hと、トップスピードよりもハンドリング重視のマシンとしていた。RWDウラカンのスパイダーバージョンも、2016年11月のLAショーで登場。また、同年には250台の限定仕様として航空機をイメージしたウラカン アヴィオも発売された。
ペルフォルマンテがニュルの量産車最速ラップ記録を更新
もうひとつ、2016年にウラカンは大きなトピックを発信している。それが、640hp/600Nmを発生するウラカン ペルフォルマンテによるニュルブルクリンクでのラップタイムだ。ランボルギーニが特許を取得しているアクティブ・エアロダイナミクスシステム「ALA(エアロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーヴァ)」を採用したペルフォルマンテは、ニュルブルクリンク北コースで量産車最速記録を樹立した。2018年にはウラカン ペルフォルマンテのスパイダーバージョンも追加している。
最先端の制御デバイスを盛り込んだEVOが誕生
2019年1月、ウラカン ペルフォルマンテをベースに、次世代のビークルダイナミクス制御を採り入れたウラカン EVOを投入。初採用の「ランボルギーニ後輪操舵」と、4輪に作用する「トルク・ベクタリング・システム」に加え、「ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ(LDVI)」も初めて搭載された。これは車両の挙動全体を制御する中央処理システムで、ドライバーの次の動きとニーズを予測し、状況に即して完璧なドライビングダイナミクスを提供するというもの。
さらに、従来から採用してきた測定システム「LPI」もバージョン2.0へアップデートして搭載。エアロダイナミクス効率も、第一世代のウラカンと比較して5倍のレベルに引き上げていた。さらに同年3月のジュネーブショーでは、早くもオープンモデルのウラカン EVO スパイダーを発表している。
進化型のEVOにもRWDモデルを投入
続く2020年1月、ウラカン EVOの後輪駆動バージョンとしてウラカン EVO RWDがデビュー。AWDから後輪駆動に変更されたことで、車両重量は1422kgから1389kgへと大幅な軽量化を実現していた。パワーユニットの性能数値は意図的にウラカン AWDよりも抑えられ、最高出力610hp/最大トルク560Nmを発揮(ウラカン AWDは640hp/600Nm)。RWD専用にセッティングされた新開発「パフォーマンス・トラクション・コントロールシステム(P-TCS)」を組み合わせたことで、ドライ路面だけでなく、ウエットやスノー路面でも非常に安定したドライビング性能を実現した。
なお、同年3月にはウラカン EVO スパイダーを追加しているが、その際にユニークな取り組みを披露して話題を呼んだ。当時はまさしく新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機が世界を揺るがしていたタイミングであったが、ランボルギーニはソーシャルディスタンスが徹底される中、AR(拡張現実)を活用したオンライン発表会を敢行。スマホやタブレットを通じて自宅で実車を“仮想体感”できるという、自動車業界では前例のないローンチイベントだった。
公道走行可能なレースカー、STOが登場
2020年11月にはウラカン STOをリリース。STOは「Super Trofeo Omologata」の頭字語で、ウラカン スーパー トロフェオ EVOやウラカン GT3 EVOのロードリーガルバージョンと言っても過言ではないほどのスパルタンな仕様となっている。最高出力640hp/8000rpm、最大トルク565Nm/6500rpmを発生し、7速DCTで後輪を駆動。0→100km/h加速は3秒、最高速度は310km/h。乾燥重量は1330kgで、パワーウェイトレシオは2.09kg/hpを記録している。
エアロダイナミクス面はランボルギーニの研究開発部門をはじめ、スクアドラ・コルセ、チェントロ・スティーレが一丸となって磨き上げた。とくに、スクアドラ・コルセが培ってきたレースカーの空力ノウハウを広範囲に取り込み、空力性能向上のために一体化したボンネットやフロントフェンダー、フロントバンパーは「confango(confano=ボンネット、parafango=フェンダー)」と呼ばれる一体型カウルを採用。これは最近ではセストエレメント、古くはミウラにまで通じる意匠で、軽量化や空力面の利点はもとより、レースシーンではメカ修理の“時短”にも有用である、とランボルギーニは謳う。
なお、広範囲にわたる施策により、ウラカン STOのダウンフォース量はウラカン ペルフォルマンテに比べて53%アップしている。フロントのボンネット下がヘルメット収納用のスペースとしてデザインされているのも、STOのキャラクターならではだろう。
ウラカン テクニカはシリーズの集大成か
そして、2022年4月にウラカン テクニカが登場した。シリーズの最終章と噂される後輪駆動のウラカン テクニカは、フラッグシップグレードのSTOと、EVO RWDの隙間を埋める存在。ウラカン STOと同じ最高出力640hp/最大トルク565Nmを発生する5.2リッターV型10気筒自然吸気エンジンを搭載。乾燥重量は1379kgで、パワーウェイトレシオ2.15kg/cvを実現した。STOがサーキット走行を重視したマシンとして仕上げられているのに対し、テクニカは公道/サーキット両面を楽しめるようなセッティングとなっている。
車両運動総合制御システムLDVIやサスペンションセッティングはテクニカ用に最適化。モータースポーツからインスパイアされた新開発のブレーキ冷却マネジメントも採用し、公道とサーキット両方で優れた制動性能を発揮する。また、全長はウラカン EVO比で61mm延長。エッセンサ SCV12をイメージしたデザインが、独自の存在感を主張している。
ちなみにボンネットは軽量なフルカーボン製で、ウラカン初のエアカーテン搭載バンパーも採用。なお、新形状の垂直リヤガラスにより、STOではいささかの我慢を強いられた後方視界を改善している。さらに軽量ドアデザイン、軽量チタン製リヤアーチ&ホイールボルト、サーキット走行を楽しむ人のための6点式シートベルトなどのオプションを組み合わせることも可能である。
レースフィールドでもポテンシャルを発揮
ウラカンは、そのポテンシャルをモータースポーツの世界でも大いに発揮してきた。スーパー トロフェオやGT3など、スクアドラ コルセが鍛え上げたマシンは2022年までにおよそ500台を出荷。GT3マシンは全世界12シリーズ以上のレースで40を超えるチャンピオンシップタイトルを獲得、117の勝利を収めてきた。ちなみに、ランボルギーニはデイトナ24時間のGTDクラスを3年連続で制した唯一の自動車メーカーである。